『花より男子』新シリーズ『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS・火曜10:00〜)最終回。

何だかんだで馳天馬(中川大志)とのバトルに神楽木ハルト(平野紫耀)が勝利し、江戸川音(杉咲花)とくっつくという、ものすごく予想通りの結末。


それなのに、色々なことが納得いかない「なんじゃこりゃ!」な最終回だった。

とはいえ、面白かったか面白くなかったかでいうと、面白かったんだけど。
「花のち晴れ」なんじゃこの結末は!「花晴」はどうして「花より男子」ブーム再びとはならなかったのか
イラストと文/北村ヂン

どこまでも自分の本心を出さない主人公・音


納得のいかない……というか理解が追いつかない部分は多々あったものの、ラスト以外は全体的にすごくいい雰囲気で進行。

「まあ結局、音とハルトがくっつくんでしょ?」と予想しつつも、最後の最後までどういう結末になるのか分からない展開で、グイッとのめり込んで見てしまった。

ただ、最後までどうなるか分からないドキドキ展開になった理由は、「音の本心がぜーんぜん分からないから」という、最大の納得いかないポイントに直結しているのだが。

とにかく音のセリフが、心の声も含めて嘘ばっかりなのだ。

「天馬くんがピンチの時は、私が必ず助ける!」
「神楽木がこの試合に勝っても、天馬くんのそばにいるよ。天馬くんと一緒に生きていくって決めたから」
「どんな結果であろうと、私はもう(天馬を選ぶと)決まってる」
「この気持ちは曲げない。曲げちゃいけない」

ここまで「天馬に一途」アピールをしておきながら、まさか天馬と結ばれないエンドが待っているなんて思わないでしょ!?

メグリン(飯豊まりえ)から、ハルトと別れたことを報告された時の返答もまたひどかった。

「私は天馬くんと生きるって決めたから」

これを言われちゃったら、メグリンも「私にもまだチャンスがあるのかも!?」と思ってしまうよ。まーたメグリンを傷付けて!

さらに、「誰かを好きになっている自分のことを好きになれるか」というのはこのドラマのテーマのひとつだったわけだが、メグリンから「今の(天馬と付き合っている)自分が宇宙一好き?」と問われた時にも「もちろん!」と即答している。

音がここまで断言している上に、ハルトの方も、

「別にこの勝負に勝ってもお前(音)が手に入るなんて思ってねーよ」

なんて言っていたので、「音とハルトがくっつく」以外の結末もあり得るのかも? と思いながら見ていたのだが。

自ら身を引くメグリンがますます愛おしくなってしまう!


普通のドラマであれば当然、最終回で主人公が好きな男の子(本作でいえばハルト)と結ばれるのを応援したくなるものだが、本作では素直に音&ハルトを応援しにくい要素が多すぎるのも問題だ。

・そもそも、音が本当にハルトのことが好きなのかどうかがよく分からない(本心を語っていないため)。


・ハルトにメチャクチャつくしてきたメグリンがかわいそう。

・音にメチャクチャつくしてきた天馬もかわいそう(音に5000万円もつぎ込んでるし)。

これまでのエピソードの中で、その時その時で盛り上がる要素をドンドン入れ込んでいったせいで、こうなってしまったのかも知れないが、その結果、音とハルトを応援するためのハードルが果てしなく高くなってしまっているのだ。

視聴者が納得する形で音とハルトが結ばれるためには、キレイにメグリン、そして天馬と別れる必要がある。

そういう意味では、メグリンの別れ方はキレイだった(かわいそうではあったが)。

大好きなハルトが天馬との勝負に向けて一生懸命になっている姿を見て、応援したい気持ちはあるものの、「ハルトが勝負に勝つ=音と付き合う」という可能性につながるため、素直に応援ができない。

そんなモヤモヤした気持ちを吹き飛ばすため、メグリンは決断した。

「宣誓。私、西留めぐみは、明日は全力でハルトくんを応援することを誓います。そのために、ハルトくんとお別れします」

あだち充の『タッチ』最終回のようにサワヤカで、なおかつ切ない宣誓!

ハルトから身を引く理由として、それなりに納得がいくし、ますますメグリンのことを愛おしく思ってしまう。ザ・健気!

一方、天馬が音と別れた理由はよく分からなかった。

ハルトとの勝負に負けた結果をストレートに受け入れたからなのか? 近衛仁(嘉島陸)の陰謀を見抜けなかった自分への罰的な意味合いがあったのか? はたまた、勝負の結果に関係なく、最初から音をあきらめると決めていたのか?

「音を変えたのは僕じゃなくて神楽木だった」

というのが理由らしいが、そ……そうかな? 天馬と一緒にいる音も、結構幸せそうだったよ?

結局、音ってなーんにもやってないんじゃない?


そして、最もモヤモヤするのは、主人公である音が、ハルトと付き合うためになーんにもしてこなかったということ。

ハルトは音と付き合うため、天馬との無理めな勝負に挑んだ。


メグリンや天馬も、それぞれ好きな人のためにメチャクチャ健気につくしてきた。

悪役である近衛ですら、崇拝する天馬のために(狂った方法ではあるが)何でもやってきた。

それなのに音は、周りが身を引いていった結果、なんとなーくハルトと付き合うためのレールが敷かれ、それに乗っかっただけに見えてしまうのだ。

特に終盤の音は、とにかく受け身の姿勢でウジウジしているように感じられ、正直、金持ちかつイケメンなハルト&天馬から奪い合われるほどの魅力を感じなかった。

天馬から「行ってこい」と言われ、メッチャ嬉しそうに駆け出した音を見て。「お……お前ぇ〜、今までずーっと『天馬くんと生きていく』とか言っていたのは何だったのだ!?」と小一時間問い詰めたい衝動に駆られてしまったよ。

なんじゃこりゃ!? なエンディング


そして、問題のエンディング。

ハルトは音を待ちながら、音はハルトの待つ恵比寿の時計台広場へ向かいながら、これから交際がスタートし、起こるであろうハッピー日々の妄想を繰り広げる。

唐突にハルトがミュージカル風に歌い出す、シュール過ぎる映像が流れた挙げ句、「それから……」「それから……」「それから……」なんて言い合ったかと思ったら、音が待ち合わせ場所にたどり着く前に終了。

な……なんじゃこりゃ!?

男女が交互にナレーションを読んでいき、時にハモる『君の名は。』感のある演出のおかげで感動的な雰囲気は出ていたものの、ようやく様々な障害がなくなり、素直になれたふたりが出会う前に終わっちゃうというのは、いくらなんでも中途半端すぎる!

それに、ハルトが待っていると分かっている音はともかく、ハルトは音から事前に「天馬くんと一緒に生きていくって決めたから」と言われているのだ。

音が待ち合わせ場所にやって来る可能性がほとんどないのを覚悟の上で待っているはずなのに、あんなにハッピーな妄想を繰り広げられるなんて、なんちゅうポジティブな人なのだ……。

まあ、この中途半端すぎるエンディングは、続編に向けた布石とも考えられるのだが。


実は、原作の方ではハルトVS天馬の勝負が終わっても恋の決着はついていない。

もし映画版やドラマ版の第2期を、原作に沿った形でやる場合、音が待ち合わせ場所にたどり着いてしまうと成立しなくなってしまうのだ。

……であるとしても、あれだけ周囲の人たちを振り回した末に成就した恋。妄想の中だけじゃなくて、ちゃんとしたハッピーエンドを見せてもらいたかった。

「それから……」
「それから……」
「それから……この続きは映画版で!」

みたいな露骨な宣伝エンドじゃなかっただけ、まだマシだけど。

「花晴」はなぜ「花男」になれなかったのか?


『花より男子』の続編として鳴り物入りではじまった『花のち晴れ』。様々なアラは目についたものの、全体としては楽しく見ることができた。

ただ『花男』ブームの時ほどは盛り上がっていなかったというのも正直なところだろう。

なぜ『花晴』は『花男』ブーム再びとならなかったのか? それは、主人公である音の受け身っぷりと、C5の地味さが原因ではないだろうか。

学園を支配するF4の面々を相手にひとりで立ち向かい、気持ちいいくらいガンガン戦っていた牧野つくしと比べると、前述の通り、音はウジウジしすぎで見ていてイライラしてしまう。

また、『花男』では道明寺司と花沢類というF4のメンバー間で主人公・牧野つくしを取り合っていたため、常にF4が話の中心に置かれていたのだが、『花晴』ではC5のハルトと、ライバル校の生徒会長・天馬による音の奪い合いだったため、どうしてもハルト以外のC5メンバーが蚊帳の外状態になっていることが多かった。

ハルトと、見せ場の多かった真矢愛莉(今田美桜)はともかくとして、残りの男子3名に関しては、未だに顔と名前があやふやという状態だ。


とはいえ、原作とは違うドラマ版独自の展開も多く、メグリンや愛莉、紺野さん(木南晴夏)などの女性キャラクターは原作以上に膨らんで感情移入できるものになっており、原作を読んでいても予想のできない展開で、ドキドキ楽しむことができた。

続編があるとしたら、原作ではほぼ存在感がなくなってしまったメグリンや愛莉がハッピーになる展開を期待したい。……スピンオフでもいいよ!
(イラストと文/北村ヂン)

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アマゾンプライム

『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系列)
原作:神尾葉子『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(集英社少年ジャンプ+刊)
脚本:吉田恵里香
音楽:大間々昂、平野義久、鈴木真人、羽深由理
主題歌:King & Prince「シンデレラガール」(Johnnys’Universe)
イメージソング:宇多田ヒカル「初恋」(EPICレコードジャパン)
プロデュース:瀬戸口克陽
協力プロデュース:齊藤彩奈
演出:石井康晴、坪井敏雄、岡本伸吾、松木彩
制作・著作:TBS
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