ワールドカップに臨む歴代の日本代表チームのなかで、今回が一番強いという解釈に異論はない。それだけにもったいない気がする。

選手のレベルに采配が追いついていない。ベンチが足を引っ張っている印象だ。サッカーそのものは決して褒められたものではない。アイスランドとの壮行試合を見てあらためてそう思った。本大会で何か大きなことを成し遂げそうな集団には見えてこないのだ。

 アイスランド代表のFIFAランクは75位。しかしながら来日メンバーに主力級が占める割合は少なく、Bチームに近い陣容だった。実力的にはFIFAランクで100位を下回ってしまうかもしれないチームに対し、日本は後半42分まで0-0。右ウイングバック(WB)菅原由勢のクロスを小川航基が頭で合わせて先制したのは、新ルールの導入にともなって相手が10人になっている最中だった。限りなく格好悪い勝利とはいえ、勝ちは勝ち。試合後、会見に臨んだ森保一監督に反省の色は薄かった。

サッカー日本代表に募る不安 アイスランド戦でも攻撃を能動的に...の画像はこちら >>
 苦戦の原因はわかりやすい。
高くない位置にブロックを作って構えるチームを向こうに回すと、攻撃が停滞する。相手を能動的に、攻撃をビルドアップしながら崩すことができない。森保ジャパンが抱える大きな問題である。

 イングランド、ブラジル、スペイン、ドイツ......など強豪を相手にした場合は、その限りではない。主導権を握られるので、日本はビルドアップではなく、ボールの奪い方が問われることになる。だが、力の接近した相手、格下相手になると、ボールの支配率は必然的に上昇する。攻撃を構築する作業を余儀なくされる。アイスランド戦はそれになる。本番に照らせば、オランダ戦ではなく、チュニジア戦やスウェーデン戦の予行演習に相当する一戦だった。

 だが、日本は相手に「さあ攻めてください」と言われているにもかかわらず、前進できずじまい。気が利いた攻撃ができなかった。月並みな言い方をすれば、引いた相手を崩せなかったということになる。

【そもそもWBが似合う選手がいない】

 相手が引いた場合、鉄則はサイド攻撃になる。しかし、毎度のことながら特に右サイドでミスキャストが露わになった。堂安律(WB)と久保建英(シャドー)と、左利きが2枚並ぶ弊害である。ともに左半身の体勢がきつい、ある意味で古典的なレフティだ。

 彼らにとって難易度が高いプレーは縦抜けだ。とりわけ、右足のキックが得意そうではない堂安は、難易度の低いカットインというプレーに走ろうとする。その1列内側で構える久保も同じような傾向がある。堂安より右足キックができる分だけ縦を突くプレーもあるが、内8、縦2ぐらいの割合だろう。堂安に至ってはそれが限りなく10対0に近い。右サイドを崩し、ライン際からマイナスの折り返しが決まったシーンは、久保が折り返した1回だけ。堂安はゼロだった。

 久保を右シャドーで使うなら右WBは右利き。バランス的にはそれが正解になる。

カットイン役は久保で事足りる。大外で構える選手がまず目指すべきは縦突破。それが堂安にはできない。大外で構えているにもかかわらず、縦が狙えない。この問題は、いまに始まったものではない。ずっと放置されてきた。日本ベンチにそれが悪手だという概念はない様子だ。

 久保を使うなら大外は右利きの選手。攻撃的にいくなら伊東純也、守備的にいくなら菅原なのだが、そもそも日本人選手にWBという特殊なポジションが似合う選手はいない。十種競技の選手のような総合的な身体能力が何より求められるポジションである。左利きの小兵は、およそ適役とは言えないのだ。

 伊東はこの試合、左のシャドーとして先発した。

三笘薫が招集外になったことで陥る左の選択肢不足を解消しようとして試したのだが、それはいまやるべきことだろうか。伊東の適性は右サイドだ。右ウイングこそがベストポジションとなるが、3-4-2-1ベースの森保サッカーに、純然たるウイングは存在しない。

【代表戦でこれまで見たことがない配置】

 これもそもそも論になるが、なぜオーソドックスな4バックではなく、5バックになりやすい3-4-2-1を頑なに用いるのか。森保監督の口から明確な説明はこの8年間、一度もなかった。森保サッカーの弱みはここにある。「3バックも、4バックも両方できるようにしておきたい」と言いながら、4バックは追求されていない。

 5バックと紙一重の3バックは、カウンターサッカーと言われる。4バックに比べ守備的だと言われる。強豪相手にはハマるかもしれないが、同格及び格下にはハマらない。対応の幅の狭い、間口の狭いサッカーなのだ。

 つまり、日本は典型的な弱者のサッカーでワールドカップに臨もうとしている。

そんなサッカーでワールドカップを制するチームはない。

 もったいない気がしてならない。前回のカタール大会終了後に開かれた森保監督続投会見で、傍らに座る当時の反町康治技術委員長は、次の4年は「より攻撃的に」と注文をつけていた。あれはどこにいってしまったのか。技術委員長が代わればナシになるのだとすれば、サッカー協会として問題である。

 アイスランド戦に話を戻せば、先発は右が堂安(WB)、久保(シャドー)、左は中村敬斗(WB)、伊東(シャドー)だった。4バックならウイングを務めるサイドアタッカー系の4人がスタメンを飾った。自ずとワントップの上田綺世は孤立した。

 上田はポストプレーを得意とするFWではない。オランダリーグで得点王になったが、ポストプレーなど得点以外でのチームへの寄与がなければ、さらに上のステージで活躍するのは難しい。力的にはロシアワールドカップ時の大迫勇也に劣るだろう。そのため、ボールが高い位置に収まらないことも、ビルドアップがうまくいかない原因である。

サッカーの教科書に載っていそうな、わかりきった現象であるはずだが、これも森保ジャパンでは放置されたまま。悪手であるという認識がない。

 終盤にかけて、日本は枠いっぱいの11人を交代させた。すると瀬古歩夢が守備的MFでプレーするなど、代表戦でこれまで見たことのない配置となった。

 壮行試合と言えば本来はゲネプロだ。国内のファンに向けて披露する最終的なリハーサルである。本番に向けて"いけそうな感じ"をアピールする舞台であるにもかかわらず、新監督就任直後のような目新しいサッカーを披露した。この後の試合予定はU-19代表とのスパーリングだけだという。

 攻撃を能動的に構築できない、守備的で、対応の幅の狭い、完成度の低いサッカー。森保サッカーを悪く言えばそうなる。そこにケガから復帰途上にある選手も多くいる。悔いの残る4年間だったというのが筆者の率直な感想だ。

 国立競技場を埋めた6万2212人の観衆から、このサッカーにブーイングが出なかったのも残念である。「鎌田大地が入ってくれば......」との声も聞くが、だったら守田英正も選ぶべきではなかったのか。いずれにしても、今回の本大会は不安な目で見つめることになりそうである。
  

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