働き方改革が話題になり、人と仕事との関わり方が見直されている中、企業はそれぞれに試行錯誤をしながら、新しい時代の働き方を様々な方法で模索しています。そこで今回は、売り上げなどの数字ではなく、人間力の評価で給料が決まるという独特の評価制度を持つ、gCストーリー株式会社に伺い、執行役員の安部孝之さんにお話を聞いてきました。


数字ではなく「人間力」で給料が決まる 「gCストーリー」の独特な評価制度


『貢献の広さと深さ』で評価が決まる評価制度


――どんな事業をやっている会社ですか?

「事業としては大きく3つあります。ひとつは全国の施工職人ネットワークを活用し、独自のプロジェクトマネジメント手法で大手のチェーン本部様やメーカー様、販促系代理店様向けにビジネスを行う施工事業。ふたつ目は介護事業で、介護に携わる家族向けのWEBポータル『mamoria』を運営している他、デイサービス形態の介護事業所をひとつ運営しています。3つ目は、企業向けに食を中心とした健康経営をサポートしているヘルスサポート事業があります」

――数字ではないもので評価が決まる、独特の評価制度があると伺いました。

「360度全人格多面評価という制度です。360度多面評価をベースとしていますので、役職や仕事上の関係性を問わず、数人が自分のことを評価します。その際の評価基準が、例えば売り上げや営業成績のように定量化できる数値ではなく、『貢献の広さと深さ』と我々は呼んでいるんですが、そのひとがいかに自分自身の人間力を伸ばしたかだけで評価する、という評価制度です」

――「貢献の広さと深さ」とはどういうことでしょう?

「gCストーリーという社名の『gC』は『growth for Contribution』の略で、貢献のために成長していこうという考え方を大切にしています。
簡単に言うと、人の役に立ちましょう、そのために自分の強みを活かして成長しましょうということです。とはいえ自己犠牲的な貢献では、周囲に幸せを広げていくには難しさがあります。我々としてはまず自分たちが幸せであること、そしてその幸せを徐々に周囲に広げていくというのが『貢献の広さ』。自分の幸せと人の幸せを追求していく、これが『貢献の深さ』を表しています。このふたつが中心となって評価につながっています」

数字ではなく「人間力」で給料が決まる 「gCストーリー」の独特な評価制度



定量的な競争という概念を一旦外して生きる


――評価制度をはじめ、非常に独特というか、先進的な企業文化を持っているように感じます。先進的なだけに、そこに合う人、合わない人がはっきり別れるのではないかとも思うのですが、いかがですか?

「数値で評価をしないということは、定量的な競争という概念を一旦外して、定性的な概念で生きていくことです。そのベースとしてお互いの、表面的ではなく深層的な信頼関係を培うことをすごく大切にしています。
例えば自分のことを過去から現在まですべて共有できる状態にするとか。そういう部分に合う、合わないというのはもちろんあるかなと思います。
あとは徐々に減っていく傾向にはありますが、自主的に行動するよりも、誰かに指示されることで自分を発揮できるタイプのひともいるにはいます。当社として目指すべきは、『誰が入社したとしても幸せにすることができる会社』ではあるのですが、現時点での会社のキャパシティで受け容れられるのは、そういった部分に共感してくれる人たちです」

――現代はブラック企業や長時間労働などが問題視され、人と仕事の距離感が見直されている時代なのかなと感じます。このような世の中の動きに対してはどのように見られていますか?

「人と仕事との距離感でいうと、大きくふたつあって、ひとつは当事者意識、特に内発的動機ですね。ひとりひとりが当事者意識を持って独創性のある仕事をするためには、外部から動機づけされるのではなく、自分の中から内発的動機が湧き上がるようにする必要があります。
それを促進できる仕組みや体制を構築しているところです。
もうひとつが生産性です。10年くらい前まではまだまだ、仕事に多くの時間をかけることが価値だとみなされてきた気がします。しかし、既に時代はより付加価値の高い成果を生み出すことが価値だという考え方に変化しています。
その変化に企業もそこで働く人も追従していく必要があります。例えば『今やっている仕事ってそんなに時間かける必要があるのか』とか『今やってる仕事って本当に自分じゃなきゃだめなんだろうか』などと問い直して、生産性自体を上げていかなければいけない。
当事者意識と生産性。このふたつが保てるように、組織全体としても、個人個人の働き方としても移行していこうねというのが、今やっていることですね」

数字ではなく「人間力」で給料が決まる 「gCストーリー」の独特な評価制度



貢献のために成長する。そのためにはまず自分が幸せに


――今の社会では仕事をする立場になった時に、『お客様のため』『企業のため』『社会のため』という部分が先にあって、『自分が幸せになりたい』と口にだすことがあまり歓迎されない風潮があるように思います。そんな中にあって、『貢献するためにはまず自分たちが幸せであること』というgCストーリーの文化は非常に印象的です。

「高度経済成長の頃からずっと続いてきた日本のやり方は、少しぐらい苦しくても、乗り越えた先には幸せな未来がきっと待っているので、そこに向かって死に物狂いで頑張ろうという、修行のような考え方が強くありました。
けれど時代が変わって、リーマンショックや震災などが起こる中で、未来に対する不確実性が強くなりました。大手企業に入れば将来の安定が保証されるわけでもないし、日本という国がこれまで通り成長を続けるとも限らない。頑張った先に幸せな未来が待っていてくれる保証がなくなってしまったんです。待っていてくれないなら、それを自分たちで作っていかなければいけない。そんな時代の中で貢献のために成長していくには、まずは自分たちの幸せを考えようというところに立ってスタートする必要があります」


(辺川 銀)