綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』日高はかつて「東朔也」と名乗っていた 「朔」は新月を表す…
イラスト/おうか

※本文にはネタバレがあります

ますます予想のつかない展開に『天国と地獄』6話

第4の殺人が迫りくる、日曜劇場『天国と地獄〜サイコな2人〜』(TBS系 毎週日曜よる9時〜)の第6話。またしても日高がinした望月(綾瀬はるか)が猟奇的な殺人を――と思ったら、意外にも殺さない展開で日曜の夜がざわついた。

【前話レビュー】『天国と地獄』入れ替わりのギミックをフックにしながら、人間の心の内に切り込む

日高(高橋一生)の子供時代に関わりがあったらしき“歩道橋の少女”の謎に、さらに“東朔也”という新たなキーマンも現れ、どこに向かっているのかますます予想がつかない展開に。


日高と望月の心とカラダが入れ替わっている荒唐無稽な設定なため、どこかシリアスにはなりきれない。これまで名前に数字のついた人が殺されてきた。今回は“9”。……という深刻な話の前に、望月がinした日高が、秘書・五木(中村ゆり)と妹・優菜(岸井ゆきの)に「私、男じゃないから」などと言ってしまいややこしいことになるという場面がある。じゃじゃじゃじゃーん♪の運命がそこにかかり、猟奇的殺人が身近で起こっているとは思えないのんきさが漂う。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』日高はかつて「東朔也」と名乗っていた 「朔」は新月を表す…
(C)TBS

にもかかわらず、現実的なコロナ禍ネタも登場するから頭が混乱してしまう。
「濃厚接触」「自宅待機」までストーリーに取り入れ、日高と望月のみならず、現実と非現実まで入れ替わっているようなトリッキーなストーリー。そこがこのドラマの魅力でもあるし、このノリも続けて見ていると慣れるものである。

望月は、陸(柄本佑)八巻(溝端淳平)の助力を得て(かなり人使いが荒い)、事件に真相に近づいていく。八巻が仕入れた情報は、新月の晩には、殺人が起こるということ。九十九(中尾明慶)が過去の殺人がすべて新月の晩に起こったと言い、八巻が調べたら本当にそうだった。

5話のレビューで、思わせぶりに映った月が新月に限りなく近い三日月になっていたこことから、新月にも何があるのでは……と書いたら、やっぱり新月にも関わりがあった。


綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』日高はかつて「東朔也」と名乗っていた 「朔」は新月を表す…
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日高が待っていた人物とは

陸は、日高が持っていた漫画原稿を読んで、ミスターXという人物が、数字を暗号にして殺人を依頼しているのではないかと推理した。

新月の晩、歩道橋に数字を書いてあると日高に指令が送られている。歩道橋には9の落書き。日高のリストには、久米という人物がいた。

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望月は久米の家に向かう。望月は、殺人を阻止するのではなく、殺人した日高を捕まえ、自らも犠牲に「刺し違える」べく腹をくくる。望月の刑事魂……。


9のつく警備会社社長・久米家を張っている望月と八巻のカットと、日高が久米家に忍び込んで老夫婦の息の根をとめているカットが交互に映る。綿密に準備して中に入り込んだことが描かれたので、てっきり望月たちが張っている間に殺人が起こってしまったと思わせて……そうではなかったことがあとでわかる。

じつは、日高が殺人を犯したあとのように思えるアップのカットで、久米正彦のいびきの音がかすかに聞こえているのだ。つまり死んでいなくて、殺人のカットは想像なのだった。細かい。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』日高はかつて「東朔也」と名乗っていた 「朔」は新月を表す…
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朝になって久米家からそっと出てきて逃げていく日高を追いかける望月。
綾瀬はるかの細くて長い脚がしなやかに駆けていくカットは眼福。まんまと逃げ去った日高は歩道橋で9の文字を見ながら、「来なかった。何かあった。何が?」と呆然と立ち尽くす。

夜、望月たちが張っていることに気づいて、踵を返した人物がいた。「来なかった」のはその人物か。
それとも、日高のなかのもうひとりの人格(殺人鬼的な)があって、それが来なかったのか。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』日高はかつて「東朔也」と名乗っていた 「朔」は新月を表す…
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怪しい人物まとめ

謎の人物Φことクウシュウゴウこと十和田元(田口浩正)を、河原(北村一輝)が追うとすでに死んでいた。死体検案書には死亡推定は「2018年11月下旬」とあった。コロナ禍の描写があるから2020年か21年だとして、2〜3年前。ちょうど3年前の一ノ瀬正蔵さん殺人事件のときと重なる。検案書には「双極性障害」と書いてあったので、躁鬱の気があったというのも、気になるポイントである。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』日高はかつて「東朔也」と名乗っていた 「朔」は新月を表す…
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十和田元は死んでいたが、クウシュウゴウはまだ存在していて(銀行口座が亡くなっても解約されてないのは届け出がないからか)、陸に歩道橋の数字の落書きを消す依頼をしている。
もしかしてこの人も誰かと入れ替わっているのだろうか。

さらに登場してきたのは、東朔也。6話の序盤、入れ替わりの秘密が隠されていそうな奄美大島には謎の男が逆光バリバリでやって来て、この人、何者?と思わせて、この人自身は情報をもたらす役割だけのよう。奄美大島に来たときの日高は東朔也と名乗っていたという。東朔也の朔は新月の意味でもある。

十和田元の部屋の清掃をした業者で、漫画を持って帰った人物は「東」。あきらかにすべての秘密を握っていそう。

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最後に、怪しい人を整理しておく。

クウシュウゴウ Φ:謎 十和田元死後、誰がクウシュウゴウと名乗っているのか

池袋の四十代くらいのおっさん:謎 クウシュウゴウと同一人物か

歩道橋の少女:謎

東朔也:謎

九十九:九の文字がついているが、殺しの標的になっていない。日高とは何か因縁がありそうだが……

師匠・湯浅(迫田孝也):余命わずか、父との確執など意味深だが、ミスリード要員?

:あまりに有能、あまりに都合よく動くので、怪しい気もするが……

八巻:数字がつくので殺されるのではないかといつもハラハラする。自ら名前に数字が付く人が殺されていると気づいていながら、自分のことは不安視しないのん気な人

落書きを頼まれた人:演じているのが上杉柊平なので、これだけで出番が終わりじゃないような気もしないでない

日高:誰かを守るため? 共犯がいる? 犯人ですらない? 

望月:家族関係皆無なところが謎

ミスターX:漫画の登場人物。主人公に「法では裁けない人物」を殺させている。法では裁けない人物を殺しているところがポイントか

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※第7話のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします

番組情報

TBS系
『天国と地獄〜サイコな2人〜』
毎週日曜よる9時〜

出演:綾瀬はるか(プロフィール) 高橋一生(プロフィール)
柄本佑(プロフィール) 溝端淳平(プロフィール) 中村ゆり(プロフィール)
迫田孝也(プロフィール) 林 泰文(プロフィール) 野間口徹(プロフィール) 吉見一豊(プロフィール) 馬場 徹(プロフィール) 谷 恭輔(プロフィール)
岸井ゆきの(プロフィール) 木場勝己(プロフィール)
北村一輝(プロフィール)

脚本:森下佳子
編成・プロデュース:渡瀬暁彦
プロデュース:中島啓介
演出:平川雄一朗、青山貴洋、松木彩
音楽:高見優

製作著作:TBS
(C)TBS

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/tengokutojigoku_tbs/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami