『おちょやん』第20週「何でうちやあれへんの?」
第97回〈4月20日(火)放送 作:八津弘幸、演出:盆子原誠〉

「道頓堀の灯を消したらあかんで」
はあ? はあ? はあ? はあ? はあ?はあ? はあ? はあ? はあ? はあ?
千代(杉咲花)の「はあ?」の連打ではじまったことで、夫(一平)の浮気も笑って「明日も晴れやな」と解決するのかと思った。
【前話レビュー】一平が灯子と男女の仲に!? 一平のモデル・渋谷天外は若い女優と不倫して離婚
天晴「一回だけか」
一平「当たり前や」
千代「回数の問題やあらへんねん阿呆」
寛治「信じられない。僕、なんのために殴られたんや」(第96回で一平と灯子の仲を勘ぐった万歳と喧嘩した)
このへんの会話がおもしろ要素なので、夫の浮気コントで済んだらいいなあと思ったが、そうではなく、話はどんどん重たくなっていく。
若手劇団員・灯子(小西はな)と浮気して平謝りの一平。だが「魔さすいうこともあるやろ」と一言多く、千代は激怒。家を出て岡福を頼る。当然、皆、千代の味方。とりわけ、みつえ(東野綾香)やシズ(篠原涼子)は一平をどやしに行くと立ち上がる。シズはこのままでは「女が廃る」と目が座っていた。
千代は『お家はんと直どん』の稽古には参加するも私情を抑えることができず、「この大嘘つき」「このあかんたれ」と刺々しい演技を披露。これまでも日常の体験を演技に活かしてきただけはある。
一平や劇団員(男性たち)は困惑。ただひとり香里(松本妃代)だけが女の気持ちを共有し、千代の味方になる。昔は千代と一平を取り合った仲であったことがなつかしい。この稽古時の一平の稽古着の浴衣がやけにさっぱり白く、彼のしでかした行為とのギャップを感じさせた。
プンスカする千代が稽古を終えて岡福の手伝いをしていると、大山(中村雁治郎)が訪ねて来る。すっかり老いて、以前のギラギラがなくなっている大山。病にかかっているらしい。いつでも画面狭しとドアップだった顔のアップも小さめになった。
男はちょっとなにかあると女や酒に逃げると千代。一平は新作が書けず苦しんでいたから灯子に逃げたと千代は理解し、芝居はちゃんとやると大山に約束する。店の外にいた一平(どうやら千代に謝りに日参しているらしい)に「道頓堀の灯、消したらあかんで。頼むで、二代目」と言って去っていく大山。この人もこれで退場のようだ。少しずつ役者が退場していく。クライマックスが近づいていることを感じる。
「さっさと消えて」
千代は一平を連れて灯子に会いに行く。「3人でちゃんと会うて、思てること全部言うて、ほんで あんたなにかおもしろいこと言い」
「ほんで3人で大笑いしますね。
いやがる子供をお医者さんにつれていく母のようにも見える千代は、ある意味自信満々である。一平の妻である自信。一平の愛は紛れもなく自分にある自信。一平のことはいちばん自分がわかっている自信。千代の一平への怒りはすべてその自信の上に成り立っている。
千代は、灯子を犠牲者と思っている。灯子に会いに行く前に、彼女が一平を許すなら、一平とこれまでどおりでいいとみつえに話すのも、一平と千代の関係は揺るぎないと信じているからだろう。実際、一平は千代に平謝りなのだから、そう感じても無理はない。千代が一平に「捨てないで」と泣いてすがっているわけではない。妻としても、俳優としても劇団で欠かせない存在としての自信にあふれ、謝る一平を簡単には許さない、いささか鬼嫁みたいな千代のことを、みつえは一平のことがそれだけ好きなのだと理解する。要するに、千代の好きとは、一平を自分のものと考えていることであろう。
千代の絶対的な自信はあっけなく崩れる。
シーンと静まり返った世界。家に戻った千代はこれまでになくきつく一平をどやしつける。
「さっさと消えて」
大山の最後の言葉「道頓堀の灯を消したらあかんで」。これまで何度も繰り返し語られてきた「道頓堀の灯」の「灯」は灯子の「灯」である。なんとも皮肉な名前なのであった。
さあ、ご一緒に<笑顔をあきらめたくないよ〜♪>
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■杉咲花(天海千代役)プロフィール・出演作品・ニュース
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番組情報
連続テレビ小説『おちょやん』<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
作:八津弘幸
演出:梛川善郎
音楽:サキタハヂメ
主演: 杉咲花
語り・黒衣: 桂 吉弥
主題歌:秦 基博「泣き笑いのエピソード」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami