『おかえりモネ』第5週「勉強はじめました」

第22回〈6月15日(火)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏〉

『おかえりモネ』『ブラック・ジャック』で医者を目指した中村先生 気象予報士に関する漫画はある?
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

登米に戻って来た百音(清原果耶)。気象予報士を目指したいけれど森林組合の仕事もある。林業が衰退している今、盛り返す必要がある。


【関連レビュー】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第22回掲載中)

百音はサヤカ(夏木マリ)から広葉樹を使った商品開発を考える課題を与えられる。やるべきことが見つからず悩んでいた時期を終えて、主人公・百音が動き始め、ドラマに活気が出て来た。

新キャラ・中村先生

森林組合に併設されたよねま診療所は菅波(坂口健太郎)が東京から通いで来ているだけではなく、上司の中村(平山祐介)がいて、ふたりが交代でやっていた。中村は菅波とは正反対の陽キャで、身体も鍛え上げあげられていて、医者としての能力も高い。菅波とは医療方針も違うようだ。中村は訪問診療がしたいと言うが、菅波は治す医療にこだわりたいと拒む。

交代制なので菅波がいる時は当然、中村はいない。だからこれまで中村が登場しなかったのも当然である。再び登米が舞台になった時に新しいキャラクターとして中村が出てくるのは構成上、正解であろう。新鮮な人物がひとりいるだけで印象も変わるものだ。中村先生みたいなしっかりした大人の人物がいると締まる。登米が舞台だった第1、2週は、朝岡(西島秀俊)がやって来ていて、彼がしっかり者の立場にいた。

水と空気はただじゃねえんだ

百音は母・亜哉子(鈴木京香)から手渡されたカキを、サヤカをはじめとした森林組合や診療所、カフェの人たちに振る舞う。

百音の持ってきたカキが3年ものであることにサヤカは気づき、「あれからちゃんと育ってよかった」と微笑む。
百音はただ「はい」とだけ言うが、そこには深い思いがある。それをちらと見ている菅波。3年前の震災で被害を受けながら立て直した証しのカキだから、格別である。

ちょっとした宴会みたいになって、すっかり酒に酔った川久保(でんでん)は林業の衰退を嘆く。40年育てた木が一本1600円で買い叩かれたことが悔しい。「水と空気はただじゃねえんだ」と叫ぶ。

山に木が植わっているから、良い水と空気ができる。人間が手をかけて育てているから、良い木が育つ。間引くことで太陽光を適切に浴びることができる話は、第7回の林間学校で、翔洋(浜野謙太)が子どもたちに話していた。それがたった1600円。

それに比べて、百音の実家のカキは一個300円。その差は、百音の家が水産業をしっかり経営しているから。
海が頑張っているのだから、山も頑張ろうとサヤカたちは発奮する。

こうして百音は余った広葉樹を使って新事業ができるアイデアを考えることになった。後日、木材センターでの木の売買に百音がついていくと、売れずに砕かれてしまう広葉樹のナラの前で川久保が寂しそうにしている。背中にやりきれなさを滲ませるでんでん。

第20回のレビューで、人の声が入った劇伴について書いたが、この回も声入り劇伴が流れた。なんだかやっぱり山や海の命の声のような気がする。「ここにいるよー」「一緒に生きてるよー」と言っているような。空気も水も生きていて、それが音になって聞こえてくるような気がする。

『おかえりモネ』『ブラック・ジャック』で医者を目指した中村先生 気象予報士に関する漫画はある?
写真提供/NHK


『おかえりモネ』『ブラック・ジャック』で医者を目指した中村先生 気象予報士に関する漫画はある?
写真提供/NHK

ちょうどその頃、林間学校に来た生徒たちの小学校から組手什(くでじゅう)の注文があって、学校に向かった百音。壊れた机を見て名案を思いつく。林間学校に参加した福本圭輔(阿久津慶人)も再登場した。

漫画や絵本で学ぶとしたら

毒舌の菅波は百音の気象に対する興味や知識が幼いことから、まず絵本や漫画で学ぶといいと助言した。

医者の場合はバイブルの漫画に『ブラック・ジャック』がある。
中村先生は本当に『ブラック・ジャック』を読んで医者を目指したとか……。無免許ながら天才的な腕をもつ外科医が法外な報酬で治療を請け負うという荒唐無稽な内容ながら作者の手塚治虫は医師免許も持っていたため、医療や命に対する知識や哲学が作品に籠もっている。

では気象予報士に関する漫画といえば――『お天気お姉さん』があった。もしこれを百音が読んだら全然違うドラマになってしまいそうである(97年に実写ドラマ化もされている)。
(木俣冬)

【Kindle版】『ブラック・ジャック 手塚治虫文庫全集』全12巻
【Kindle版】『お天気お姉さん』全8巻



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番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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