『おかえりモネ』第5週「勉強はじめました」

第24回〈6月17日(木)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏〉

『おかえりモネ』第24回 百音をあたたかく受け入れている森林組合の人たちをおさらい
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

百音(清原果耶)、山の仕事も天気の勉強も順調に進み始めた。勉強には菅波(坂口健太郎)という頼もしい男子も漏れなくついてきて、誕生日プレゼントというサプライズまでもらう。百音の人生がちょっとずつ動き出していく。


【関連レビュー】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第24回掲載中)

仕事も勉強も繋がっている

小学校の学童机に登米の広葉樹を使ってもらおうと試作品を作ることになった。山番頭のクマさんこと熊谷(山本亨)たちが伐採した木をまず乾燥させる。この乾燥に時間がかかるのだと森林組合の木村(アベラヒデノブ)が百音に説明する。

昼は森林組合の仕事、夜は天気の勉強。勉強中、雲ができる仕組みに「蒸発」と「沸騰」の概念が出てきた時、百音は木の乾燥のことを思い出す。海も山も空もすべては繋がっているとはいえ、森林組合の仕事と天気の仕事が混ざるのは考えもの。それをきちっと切り分けさせようとする菅波。
物事を感覚で捉え、話が逸れがちな百音と、合理的で理屈っぽい菅波の性格の違いが出ている。どちらにも良さがあり、お互い欠点を補い合って良いコンビに見える。

「そうやって安くて早いもんばっかり使うようになったから〜」

木が乾燥されて、いよいよ試作品づくりがはじまる。「幅はぎ」「サンダー」と専門用語が並び、「凹凸がないよう、そこはこだわっていきましょう」と木村。

きれいな机ができたが、重かった。足だけスチールにして軽量化して、良いサンプルが完成した。が、仕事のことでもはや頭がキャパオーバーで、天気の勉強のほうは進まない百音。
そして改良された机も好評ながら、来年の3月までに4200セット納品してほしいと言われる。手作りだと月30台が限度で、納期まであと半年しかない。

「公共事業は予算と納期が絶対なんで」と言われぐうの音も出ない翔洋(浜野謙太)たち。年内に納品できるという東京のメーカーには勝ち目がありそうになかった。

「そうやって安くて早いもんばっかり使うようになったから、今のようなありさまになってるのにな」「だから鉄やコンクリートに負けできたんだ」と川久保(でんでん)は嘆く。時代の変化に苦しんできた悲哀が滲む。


哀しいこと、嬉しいこと

うまくいくかと思ったことがうまくいかず、落ち込む百音。勉強にも身が入らない。

「ものごとがうまくいかなくて落ち込むとき、僕はなにかしら新しい知識を身につけるようにしています」と菅波は励ます。百音は「だから先生はいつも勉強してるんですね」と皮肉を言う。百音もなかなか言うよねえ〜である。

そんな百音に菅波は、誕生日プレゼントとして理科の本を贈る。百音が超大型台風の日に生まれたことと満月には出産が多いという雑談をしたことから誕生日を割り出したのだ。


「このタイミングで出すのは我ながらあざとさを感じていやなんですが」と恥ずかしそうにプレゼント(本屋の袋)を差し出す菅波だが、誕生日を割り出すほうがツッコミどころだと思うぞ。でもそんな菅波の魅力が急速に上昇中である。

「知識は武器です。持っているだけではなんの意味もないし、使い方も難しい。ですが持っているに越したことはありません」と語る菅波。ここ、重要。
天気の知識を武器として持つことの必要性を『おかえりモネ』は描いているのである。いつ来るかわからない天災に備えるのもよし、ものすごく身近な洗濯ものの干し方に活用するもよし。百音は洗濯ものを干しながら何か思いついて――。

『おかえりモネ』第24回 百音をあたたかく受け入れている森林組合の人たちをおさらい
写真提供/NHK


『おかえりモネ』第24回 百音をあたたかく受け入れている森林組合の人たちをおさらい
写真提供/NHK

森林組合の人をおさらい

百音をあたたかく受け入れている森林組合の人たち。山と木を愛する川久保博史は、森林組合の参事。演じているでんでんはNHKドラマ・ガイド『おかえりモネ』のインタビューページでは『あまちゃん』では漁業の組合長だったから「海から山へ移ったような感じですね(笑)」と発言している。そう、川久保にはちょっと『あまちゃん』を思い出す。
地元に根付いた落ち着いた生活者感があるのだ。

森林組合のムードメーカー的存在・佐々木翔洋は課長。登米能を愛し、参加している設定(第5話)を生かし、演じる浜野謙太は23話でも扇子を使った動きをしていた。

机作りに熱意を向ける木村慎一は現場担当職員。素朴で誠実な雰囲気がよく出ているので宮城枠かと思ったら、大阪府出身。生まれはアメリカだった。俳優のみならず映画監督もやっている才人。テレビドラマの演出ではNHKの「歩くひと」も担当している。

優しく百音に接する山崎有香(佐藤真弓)は森林組合事務職員。佐藤真弓は大河ドラマ『いだてん』で足袋屋の店主・黒坂の妻を演じていた。一時期、賛否両論、注目された小説のドラマ化『東京女子図鑑』の主題歌「トウキョウコンプリート」も歌っていて(東京リリー&ローズ名義)キュートな声も魅力的。
(木俣冬)



※『おかえりモネ』第25回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします

番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami