『おかえりモネ』第20週「気象予報士に何ができる?」

第96回〈9月27日(月)放送 作:安達奈緒子、演出:一木正恵〉

『おかえりモネ』第96回 朝岡、百音に「またすぐ一緒に」「同じ空の下ですから」カッコいいこと言う
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

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百音(清原果耶)は実家に手紙を書く。いつもスマホで通話ないしメールして頻繁にやりとりしているのにあえての手紙。強い決意と地元や実家への思慕を“手紙”形式で伝えることで特別感が増した。


【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第96回掲載中)

「もうやめて、しみじみするの」

百音が帰ってくると知った耕治(内野聖陽)が百音の部屋の掃除をしようとすると龍己(藤竜也)が「ほごり立てんなって」とたしなめる。

耕治はなにかとあたふたする性格だからいてもたってもいられない気持ちを行動に表してしまうのはわかる。龍己の「埃立てるな」は額面通りの意味かもしれないし、騒いで大事にすることなくごく当たり前に迎えようという意味かもしれない。龍己はいつだって冷静で、ことを荒立てない。

百音が家を出たことは永浦家の中で震災に次ぐ最大心配事項であろう。とはいえ、お正月などには戻って来ているし、やりとりはあるので完全に切れている関係ではない。だが、表層的に穏やかながら触れることのできない何かがある。


龍己は耕治に酒をすすめる。息子の気持ちを鎮めようと思ってのことであろう。背後のキャビネットにはあの日大盤振る舞いした高級ブランデーの瓶がまた飾ってある。

耕治は「東京のいげ好かねえ医者とうまぐやってんだろぐらいに思ってだのになあ?」と悪ぶる。本当はすごく嬉しくてたまらないのがよくわかる。まったく嘘のつけない人物である。
それにしても「いげ好かねえ」とは菅波先生(坂口健太郎)をそんなふうに言うなんて可哀相に……と気の毒に視聴者が思ったであろう途端、未知(蒔田彩珠)が代弁するように見事にツッコミを入れた。

その未知と百音に何かあるとわかっている耕治と亜哉子(鈴木京香)と龍己。未知が姉の帰りを許可していることを知ってホッとする。「もうやめて、しみじみするの」と照れる未知。家族4人の不在だった長女の帰還を歓迎することで、一瞬ひとつに通い合ったいいシーンであった。「そんな歌(しみじみ)あったな」と龍己が言うのは八代亜紀の「舟歌」。
思い出を肴にしみじみ飲む歌である。

『おかえりモネ』第96回 朝岡、百音に「またすぐ一緒に」「同じ空の下ですから」カッコいいこと言う
写真提供/NHK

百音の門出

最終出勤の日、百音はお団子ヘアで大人になった感じ。同じ日、莉子(今田美桜)が仙台中央放送局で報道キャスターとして帯番組を担当することが発表される。沢渡(玉置玲央)が花束をどちらに渡すか迷って百音に。

莉子はまだ任期があって(来年の1月から仙台)、この日辞めるのは百音。なんでこんなふうにややこしい挨拶の仕方を高村(高岡早紀)がしたのかはよくわからない。番組の中で「今日で最後です」と視聴者たちにも挨拶するシーンも見たかったが、百音にとっては地元に戻るほうにプライオリティを置いているようである。


百音におつかれさまでしたと頭を下げた時の高村が目線を決して落とさず、カメラを意識しているところがプロっぽかった。朝岡(西島秀俊)は百音に「またすぐ一緒に仕事するでしょう」「同じ空の下ですから」とカッコいいことを言う。

帰宅した百音は明日美(恒松祐里)と語り合う。「私は今好きな人のそばにいる。それがいちばん大切なことだって本気で思っているからさ」と言う明日美は内田(清水尋也)とうまくいっている。



『おかえりモネ』第96回 朝岡、百音に「またすぐ一緒に」「同じ空の下ですから」カッコいいこと言う
写真提供/NHK

本気でそう思っているけれど、大変なことがあった地元でがんばろうとする人たちがいるなかで自分だけ帰らない選択をすることに引け目もある。
「薄情かな」と気にする彼女に百音は「そんなこと思わなくていいんだよ」と言い含める。このときの百音の言葉には実が籠もっていた。

『モネ』では地元復興に尽力することが第一であるから帰らない明日美はどうしても不利な立ち位置である。その不利なところをいつだって明るく跳ね返してきた明日美。この曇りない明るさが彼女の選択を応援したい気持ちにさせる。現実にだってきっと地元に戻らない選択した方々もいるはずで、明日美はその代表という重責をたったひとりで担っていて立派である。


ビールを飲んですっかり酔って寝てしまった百音と明日美。夜中に宇田川さんの風呂掃除の音が聞こえて目を覚ます。その音はまるで百音を送るようにも聞こえた。

雅代おばあちゃん

百音が窓辺から取り出した鉢植えにはあの笛も植わっていた。つまり3年前、小さな芽がこんなに大きくなったということである。笛になってから何年も経過したところから生えた芽がこんなに大きくなるとは驚き。
(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪








番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami