朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第6週「1948」

第26回〈12月6日(月)放送 作:藤本有紀、演出:二見大輔〉

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第26回 本当の幸せとは? 安子、きぬと再会してようやく笑顔に
写真提供/NHK

※本文にネタバレを含みます

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おかえり、るい

珍しくサブタイトルが年またぎせず「1948」のみ。

【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜26回掲載中)

腕を負傷した安子(上白石萌音)が額を怪我したるい(中野翠咲)を連れて浮かない顔で岡山に戻ると(例のメランコリックな劇伴ではなかった)、美都里(YOU)が玄関にどーんっと座って待っていて、安子は土間にひれ伏す。姑が何を言うかとどきどきすれば、「帰ってきてくれてありがとう」だった。
それから「おかえり、るい」。よっぽど孫が大事なのだろう。

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第26回 本当の幸せとは? 安子、きぬと再会してようやく笑顔に
写真提供/NHK

このまま嫁姑問題は雪解けするのか。果たして……。まだ予断は許せないが、次なる刺客(?)候補がいた。若い女中・雪衣(岡田結実)である。なかなか気が利く働き者のようだが、いちいち、勇(村上虹郎)をちら見している感じが気にかかる。単純に勇が好きなのかな〜と想像するし、さらには好きな勇に言われたことは忠実にやっているという印象。よく見せたいという一心という感じである。単純にそう感じただけであるが。

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第26回 本当の幸せとは? 安子、きぬと再会してようやく笑顔に
写真提供/NHK

勇がるいと安子と仲良くやっているのを離れて意識している様子が思わせぶり。いかにも厄介事を持ち込んできそうな雰囲気を漂わせる。
勇と安子は幼馴染でいろんなことを乗り越えてきた気のおけない関係なのだからぽっと出の雪衣が入り込めるわけはないのであるが。

雪衣役の岡田結実は大阪府出身の21歳ながら、一歳から子役モデルをやってるため、芸歴はすでに20年? NHK Eテレ『天才てれびくんMAX』のレギュラーで活躍。主演ドラマも金曜ナイトドラマ『私のおじさん〜WATAOJI〜』『女子高生の無駄づかい』、日本テレビ『江戸モアゼル』など多数あり、バラエティからドラマまで器用に活躍している。

しあわせのかたち

安子はなつかしい実家のあった商店街を訪れる。すると橘家のあった土地は見知らぬ人の営む不動産屋になっていた。戦後のごたごたで土地が他人のものになることはあったのだろう。安子が金太の建てた掘っ立て小屋に居座っていればとられることもなかったかもしれない。

雉真家を出て実家の土地で菓子屋を再興できればよかったけれど、同じ岡山では千吉(段田安則)に見つかってしまうだろうし。うまくいかないものである。土地を奪ったのが不動産屋であるところもなんとも現実的である。

豆腐屋はそのまま残っていて、きぬちゃん(小野花梨)と再会を喜ぶ。彼女は力(小林よしひさ)という夫がいた。やたらと明るい舞台演技のような人物。
演じているのは舞台俳優ではなく、たいそうのおにいさん出身の小林よしひさだった。舞台演技ではなく、たいそう番組のときの元気の良いムードの名残であろう。

とにかく明るい力。彼のような「あほうな人」が戦後の復興期には必要だときぬは明るさの必要性を説く。



朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第26回 本当の幸せとは? 安子、きぬと再会してようやく笑顔に
写真提供/NHK

体が弱っているとはいえ家族もいて(全然栄養失調に見えなかったけど)、店も残っていて、夫もいるきぬと比べて、安子のいまの状況は……。血のつながった家族はいなく(算太は行方不明、るいのみ)、腕を怪我して日常生活も不自由、実家は人手に渡り帰る場所はない、夫は戦死……。でも安子は全然、きぬに嫉妬する様子はない。そこが、妙に安子を意識して見える雪衣とは違う。

安子は率直にきぬに「わたし、これからどねんしよう」と悩み相談する。雉真家では姑問題は解決し、立派な家で、女中もいて、食事も美味しい。でも大阪で苦労しながらるいとおはぎを作っていた生活が安子にはなつかしかった。本当の幸福とは物質的に豊かであるとは限らない。


「岡山でも歌うて、笑うて、おはぎ作って暮らすことはできるじゃろ」ときぬに言われて少し考えを改める安子。ようやく笑顔になった。どこにいても好きなことをやればいい。

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第26回 本当の幸せとは? 安子、きぬと再会してようやく笑顔に
写真提供/NHK

安子には、きぬや勇という絶対的に信頼できる友人がいて、幸せだと思う。幼いときの利害関係のない友人関係こそ最高というのは『スカーレット』を思い出す。

今週の気になるポイントは、勇と安子と雪衣の関係だろうか。一生消えないと言われたるいの額の怪我が治る可能性があるのかも気になる。
(木俣冬)

『カムカムエヴリバディ』をさらに楽しむために♪




【前回の朝ドラ】『おかえりモネ』の全レビューを見る

番組情報

連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ

2021年11月1日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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