パルファン・クリスチャン・ディオールは、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭のサテライトイベント「KG+」において、日本人アーティスト・中川ももの個展「Clonal Images」をサポートしています。会期は2026年4月18日から5月17日まで、京都市内のHOSOO GALLERYにて開催されています。


ディオールが支援する若手作家・中川もも、京都で提示する“増殖...の画像はこちら >>
photo by ©FASHION HEADLINE

本展は、ディオールが継続的に支援する若手アーティストの発表の場として位置づけられています。中川氏は、2025年にフランス・アルルで開催された「ディオール ヤング フォトグラフィー&ビジュアル アーツ アワード」において、写真シリーズ「Inside my Pantropy」でファイナリストに選出されました。

写真の拡張としてのインスタレーション 中川氏の作品は、写真、彫刻、インスタレーションの交差点に位置しています。本展で提示される「Clonal Images」は、サイエンスフィクションにおける概念“パントロピー”──環境に適応するために身体を変異させるという発想──を起点に構想されています。さらに、クローン植物の生物学的構造に着想を得ることで、個体が独立するのではなく、断片から増殖し、相互に接続された生態系として存在するイメージを描き出しています。

ディオールが支援する若手作家・中川もも、京都で提示する“増殖するイメージ”──KG+で開催「Clonal Images」
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空間には、巨大なクローナルイメージが壁面に展開され、その周囲には膜のような質感を持つ要素が配置されます。有機と無機、植物と人工といった異なる領域が曖昧に交差し、作品は固定された形ではなく、変化し続ける存在として立ち現れます。

ベーカー・ミラー・ピンクという選択 今回の展示において印象的なのが、空間全体を包み込む淡いピンクの色調です。中川氏によれば、この色は「ベーカー・ミラー・ピンク」と呼ばれるもので、心理的に怒りや攻撃性を抑制する効果を持つとされる色です。スイスやドイツ、アメリカの矯正施設では、壁や衣服にこの色を用いることで、暴力性の抑制が試みられてきました。癒しや安心感をもたらす一方で、強い制御のニュアンスも内包するこの色は、本作における身体や環境との関係性を静かに示唆しています。

ディオールが支援する若手作家・中川もも、京都で提示する“増殖するイメージ”──KG+で開催「Clonal Images」
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手による“増殖” 作品の中核をなすのは、細く長く裁断された写真紙のストリップです。
“リボン”のように垂れ下がるそれらは、複雑に絡み合いながら空間に立体性を与えています。一見すると機械的にも見えるこの構造は、すべて手作業によって切り出されているといいます。増殖や複製というテーマに対して、人の手による反復が介在している点は、本作に独特の緊張感をもたらしています。

ディオールが支援する若手作家・中川もも、京都で提示する“増殖するイメージ”──KG+で開催「Clonal Images」
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視点によって変化する空間 展示空間は決して広くはありません。しかし、壁面の曲面やミラーを用いた構成によって、視覚体験は大きく拡張されています。立った状態で見る像、しゃがんだときにミラーの歪みを通して現れる像──。視点の変化によって、同じ作品が異なる印象を持って立ち上がります。床に貼られた模様や垂れ下がるストリップもまた、空間の奥行きを増幅させ、鑑賞者の身体感覚を巻き込んでいきます。

ディオールが支援する若手作家・中川もも、京都で提示する“増殖するイメージ”──KG+で開催「Clonal Images」
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京都という文脈の中で 「KG+」は、公募によって選ばれた多様なアーティストが京都市内各所で展示を行うプラットフォームです。古都の建築や街並みと呼応しながら、都市そのものが展覧会のように立ち上がるこのイベントにおいて、中川氏の作品は一つの重要なレイヤーを形成しています。

ディオールの支援のもと、南アフリカ出身の写真家レボハン・ハンイェが本展のキュレーションを手がけている点も見逃せません。外部の視点が加わることで、中川氏が一貫して取り組んできたテーマに新たな解釈が与えられています。


変化し続けるイメージ 「Clonal Images」は、固定された作品ではありません。それは、空間の中で増殖し、視点によって変化し続ける“生きたイメージ”として存在しています。写真というメディアを起点にしながらも、その枠を拡張し続ける中川氏の試みは、現代における視覚表現の新たな可能性を示していると言えるでしょう。

INFORMATION
KG+(KYOTOGRAPHIE Satellite Event)
会期:2026年4月18日(土)~5月17日(日)

中川もも「Clonal Images」
会場:HOSOO GALLERY
住所:京都府京都市中京区柿本町412
時間:10:30-18:30
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