レビュー

自分の勤め先は、果たして人権侵害と無縁といえるだろうか。
「人権」という言葉はどこか抽象的で掴みどころがない。

とても大切なものであるはずだという理解はなんとなく共有されているが、「人権とは何か」と改めて聞かれて、即答できる人はそういないだろう。しかも本書は「ビジネス」と「人権」についての本だ。どこか遠い響きのある「ビジネスと人権」だが、実は仕事をする人にとっては関係の深い概念であるというのが本書の指摘だ。
企業の社会に果たす役割が大きくなるにつれ、企業が人権を侵害するリスクもまた増大している。国内に目を向ければ、ハラスメントが労働者の人権を侵害する例が多数あるし、実際にその被害にあった人も少なくない。だが、そうしたハラスメントの実例さえなければ、人権侵害とは無縁というわけではない。たとえばある会社が扱っている商品。その販売、製造、部品の調達、原材料を生み出す労働者。この中で、どこにも人権侵害がないと言い切れるだろうか。
アップデートされつつあるビジネスと人権の関わりの中では、サプライチェーン上で繋がりのある企業における人権侵害についても、企業は責任を持って対処することが求められる。何から手をつけていいか迷ってしまうこの大きな問題に取り組む際に、最初に勧めたいのが本書である。タイトル通り「ゼロから学べる」よう平易な表現で「ビジネスと人権」を解説している。
人権についての本質的な知識はもちろん、人権リスクに対する具体的な取り組みや考え方、評価方法が理解できるはずだ。

本書の要点

・人権がなければ私たちの「当たり前」の生活は維持できない。国連指導原則の文脈において「ビジネスと人権」とは、事業活動全体を通じ、人権を尊重することを意味する。
・人権DDの対象は広範囲に及ぶ。理想はそのすべてに目を行き届かせることだが、実際は「リスクが重大な事業領域」を特定し、対応を進めていかなくてはならない。
・人権DDは継続的な取り組みであり、内容と方法は改善していかなくてはならない。取組の際には追跡評価と呼ばれ、優先順位をつけて情報収集の対象を選定していく必要がある。



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