日本の看護医療の先駆けで、明治のナイチンゲールと呼ばれる2人をモデルにしたNHK連続テレビ小説「風、薫る」に、いまひとつ勢いがない。視聴率は低調、SNSでも「展開が速すぎて入り込めない」「ダブルヒロインで話がとっ散らかってる」と散々だ。


 そんなに凡作か? いやいやどうして、ヒロインの波瀾万丈、克己奮闘、そして自分らしい生き方を探すという現代に通じるテーマと、朝ドラファンが期待するポイントをしっかり押さえていて、むしろこれからヒットしそうな予感がする。


■男前の直美と泣き虫吉江牧師の推しファン急増中


 まず、ヒロインのひとり、大家直美(上坂樹里)がすてきだ。生まれてすぐ親に捨てられ、教会に拾われて育ち、マッチ箱工場でこき使われ、街を歩けば「みなしご」と蔑まれる。世の中の不正義と不運をすべて背負ってしまったような生い立ちなのだが、そんな世間に臆することなく、また媚びることもなく、凜々しく毅然としている。


「勉強中の英語で、1銭でも搾取しようとするマッチ箱工場の工場長や詐欺師を『ふざけるな』と罵ったり、『これが私の生き方よ』と胸を張る場面は、実に男前でした。時には悲しい涙も流す。それをきりっとした上坂がやるので、カッコいいと推しファンが急増中です」(テレビ情報誌編集デスク)


 日本で最初の女性弁護士を描いた「虎に翼」では、ヒロインの猪爪寅子(伊藤沙莉)は、女だからという理由で当たり前のことが阻まれると、「はて?」と首をかしげる決めゼリフで静かに抗議して共感を呼んだ。理不尽なことへの直美の英語の啖呵も、そんな痛快さでドラマの人気を押し上げているのだ。


 もうひとりの人気者は泣き虫。吉江善作牧師(原田泰造)は直美への心ない仕打ちに泣き、もうひとりのヒロイン一ノ瀬りん(見上愛)に働き口が見つかるとうれしくて泣き、宣教師がインドに赴任するお別れでも泣く。


「こわもての原田が何かというとすぐ涙を流すエピソードは、ユーモラスで人間味があってホッとさせます。見上は表情豊かでコミカルな芝居もうまいし、坂東彌十郎の謎の老人も魅力的です。

そこで描かれる笑いと涙と健気……。ヒットする朝ドラの要素がてんこ盛りですよ」と、朝ドラウオッチャーは太鼓判を押す。


 第5週からは看護婦養成所の個性的な同級生たちも揃って、さらに賑やかになる。


 ところで、新しい登場人物があると、そよ風や疾風などさまざまな風が吹いて、その後の展開を暗示するのにお気づきだろうか。


(コラムニスト・海原かみな)


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