【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#289


 大林素子さん


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 バレーボール界のアイドルとして草分け的存在の大林素子さん。初めてお会いしたのは落語家の桂南光さんの楽屋に大林さんがご挨拶に来られた時でした。


 南光さんは常々「ファンとかいう軽いもんやなしにもっと“神聖”な存在ですわ。春高バレーで見た時にこの人(理想の女性)や! と思て、実際に会うたら、まぁええ人! あんな人おまへんで!」と絶賛されていました。またお笑いが好きで若手芸人たちをよく食事に連れて行ってくださっているという話を聞いていたので、とても近しいように感じていました。


 南光さんが「(本多)先生のことは知ったはりまんのん?」と聞かれた時に「お笑い好きで本多先生のこと知らなかったらモグリですよ! いつも若手のみなさんからお話伺ってます!」と“世界の大林”さんから最大級のお褒めの言葉をいただき「若い子たちがいつもお世話になっております」と頭を下げると「いえいえ私の方が遊んでもらってるだけなんです。あの一生懸命さ、ひたむきさには心打たれますね」と終始こぼれるような笑顔。本当に「あんなええ人おまへんで!」という南光さんの言葉に納得しました。


 以降、M-1の予選会場など審査員席に座っていると後ろから「今日は楽しみですね~!」と「〇〇がやってくれるといいんですけど~」「〇〇はあのネタですかね」と、相当ディープなお笑い好きでないとわからない話がポンポンと出てくる。お笑いに対する見方はプロそのもの。「あそこの間ですよね~」とか「いい言葉使ってますよね~!」とか感想の一言が的を射ていました。


 2006年にチュートリアル、05年にブラックマヨネーズがM-1で優勝した際にも、ブラマヨの小杉君は「僕らが決勝進出した時、全国的に全く無名でしたが、ベースよしもとで共演したりライブを見てくれてたりしたので誰も印をつけない中、大林さんは僕たちに印をつけてくれていました!」と当時のことを教えてくれました。


 ネタを見たり、お笑い談議になるとスイッチが入り、急に眼光鋭く、世界で戦ってきた“勝負師”の表情に。いつも笑顔の大林さんとのギャップがとても印象的でした。


 ある時、都内でラジオの録音スタジオを出ると「本多せんせ~」と大林さんの声が。満面の笑みで駆け寄り、「こんな所でお会いできるなんて、今日はいいことありそうですね~!」とハグをし、別れ際に見えなくなるまで手を振って見送ってくださいました。凛とした勝負師と少女のような無邪気さが同居して、「あんなええ人おまへんで!」と思えるすてきな方でした。


(本多正識/漫才作家)


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