メガバンクが史上空前の好決算に沸いている。とりわけ三菱UFJ銀行は純利益が2兆円を突破、3年連続の最高益を更新中だ。
都内に住む板橋常夫さん(仮名79歳)は、自宅を追われようとしている。35年前、三菱銀行から借りた1億3300万円が、いまや2億5000万円に膨れ上がった。返済を迫る銀行側は、問答無用で居住中の自宅を競売に掛けた。すでに入札が始まり開札は6月3日。執行されれば板橋さん一家はホームレスになる。
「変額保険が危ないものだという説明はなく『相続税対策になる』と強引に勧めておきながら、返済が滞れば身ぐるみを剥ぐ。あまりにも酷い仕打ちです」と板橋さんは憤る。
変額保険はバブル末期、銀行が生保会社とタイアップして売りまくった。形は生命保険だが中身は株式など運用する投資信託と同じだ。銀行融資の金利だけ払っていれば、借金の元本が節税対策になる、という触れ込みで三菱銀行は大きく融資を伸ばした。板橋さんは、1990年12月、三菱銀行から1億3300万円の融資を受け、同額の変額保険を買った。
「代位弁済」の恩恵は銀行に
カードローンの危うさに気づいた板橋さんは、自前の返済に切り替えた。病院の勤務医だったが開業医の応援診療を増やした。常勤以外に月40万円のアルバイトは重く、ストレスと過労で「うつ病」を発症した。
板橋さんは、信用保証会社に保証料(年25万円)を払い続けていた。返済不能になっても保証料を払っていたら、代わりに返済してくれる(代位弁済)、という話を銀行から聞かされていた。ところが「代位弁済」の恩恵を受けるのは板橋さんではなく銀行だった。
回収は困難と見た三菱銀行は、担保の自宅を系列のダイヤモンド信用保証会社に引き取らせ、融資を回収した。板橋さんの借金は消えず、ダイヤモンド信用保証が新たな債権者となり、返済を迫る。保証会社は、系列のエム・ユー・フロンティア債権回収会社に委ね、行き着いた先が自宅の強制競売である。
「貸したカネは返せ」と銀行はいう。返せない責任は顧客だけにあるのだろうか。必要もない融資を勧められ借金地獄に落ち、心身とも消耗した顧客は、板橋さんだけではないだろう。
バブルにまみれた過剰融資がおびただしい銀行被害者を発生させ社会問題になり、その反省から金融庁は、銀行に「顧客への説明責任」を求めるようになった。監督指針では「顧客との取引関係の見直しを行う時」は「顧客の理解と納得を得ること」と定めている。現実はどうか。
居住中の自宅を系列会社に引き取らせ、顧客の了解もないまま競売にかける。銀行は、すでに回収を終え、汚れ仕事は系列会社がやる。金融界の頂点に立つ銀行のやることだろうか。
(山田厚史/ジャーナリスト)

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