【桧山珠美 あれもこれも言わせて】


 25日放送「鶴瓶の家族に乾杯」(NHK)のゲストは劇団ひとり。大の「男はつらいよ」ファンというひとり。

中でもお気に入りがシリーズ第17作「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」で、そのロケ地を巡った。


 スタジオでは進行役の小野文恵アナがひとりを紹介、「私も大好きなんです。今日は楽しみにお待ちしていました」と言い、「夕焼け小焼け」は「名作だと思います」と小野。寅さん談議に花が咲き、鶴瓶だけが蚊帳の外だった。


 半世紀も前の映画をこれほどの熱量の高さで語り合えるとは。さすが国民的映画。


「夕焼け小焼け」の舞台は兵庫県たつの市。ここで「ん?」と思った人も多いのでは。最近ニュースでよく聞く地名だ。そう、あの痛ましい「母娘殺害事件」で有名になった、たつのが舞台。


 SNSでは一部「タイミングが悪過ぎる」「今は放送すべきではない」という意見もあるが、偶然だから仕方がない。


 番組が映し出すたつの市は50年前の面影を残す穏やかな街並み。

古い建物もそのまま、そこに暮らす人も温かい。


 映画のままの風景を前に興奮するひとりを見ているこちらもロケ地を巡っているような気分になる。



■最高傑作ともいわれるシリーズ第17作

 映画にも登場した「梅玉旅館」のおかみさんの撮影秘話を聞いては興奮し、第1稿の台本のタイトルが「柴又の伊達男」だったのを見つけては大喜び。本当にファンなんだなあとわかる。こうして現地に足を運び、人から直接、話を聞くことでしか、出合えないことがある。生の情報はやはり特別なもの。生成AIに聞いたとて、出てこないことはまだまだあるのだ。


 途中、「私はたつのの寅さんです」と名乗る男性が登場。毎年柴又で開催される「寅さんサミット」で各ロケ地代表の寅さんが集合する中、「たつの市の寅さん」として参加しているという。この男性、自宅に戻って寅さんの衣装に着替えて再登場した。


「夕焼け小焼け」は「寅さんの要素がきゅっと詰まった最高傑作」とひとり。宇野重吉と息子の寺尾聰の共演や、戦前ソ連に亡命し、恋の逃避行といわれた女優岡田嘉子が戦後、日本に戻って初めて出演した作品でも知られている。

なんといってもマドンナの太地喜和子がチャーミングだ。


「寅さん」映画の魅力を聞かれ、「人間じゃないですかね。人間と人間のつながり、寅さん見た後、昔の仲間にすごく連絡をとりたくなるし、仕事で忙しくてつい忘れがちないちばん大切なものが全部詰まっている」とひとり。


 人間関係がどこかギスギスしがちな時代だからこそ「寅さん」が描き続けた人情やおかしさが染みるのかもしれない。


 番組は6月1日の後編へと続く。


(桧山珠美/コラムニスト)


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