6月19日に公開される、舘ひろし主演の「免許返納!?」。彼の役が、約30年前に演じたコメディー映画「免許がない!」と同名のアクションスターの南条弘であるため、その続編と思われがちだが、これが舘ひろしと日本映画愛にあふれた、笑いだけでなく感動も誘うアナザーストーリー作品になっている。
物語は「老人家族」という作品で映画主演賞を総ナメにした“演技派名優”南条弘が主人公。御年70歳。しかし彼はアクション映画がやりたくて仕方がない。そんなとき、彼の俳優仲間で同年代の尾崎誠が、バイク事故を起こし、入院。南条が尾崎の事故に対して語ったコメントが誤解を生み、世間は南条が運転免許を返納すると思い込む。追いつめられた南条は、免許を返納する前にやることがあると、尾崎や亡き愛妻との思い出の地、福島へと向かう。
南条がなぜ福島へ向かうのかが物語のポイントになるが、彼の旅を彩る出演陣が豪華。互いをけなし合いながらも深い友情で結ばれた尾崎誠に宇崎竜童、南条を厳しく管理するマネジャーの川奈に西野七瀬、事務所社長に吉田鋼太郎。尾崎の最初の妻に大地真央、2度目の妻に真矢ミキ、3度目の妻にMEGUMI、彼女の息子に「国宝」で注目を浴び、現在は舘ひろしの事務所に所属する黒川想矢。そのほか南野陽子や八嶋智人など、芸達者な俳優たちが顔を揃えている。
河合勇人監督による作品全体から漂うのが、南条弘=舘ひろしをリスペクトする思い。南条弘のフィルモグラフィーには舘が実際に主演した作品も含まれていて、南条と舘は一体化したキャラクターになっている。
アクション俳優がリスペクトされる映画というのは、ジョン・ウェインが最後の戦いに挑むガンマンを演じた「ラスト・シューティスト」(1976年)で、彼のガンマンとしての伝説を説明するために、冒頭で「赤い河」や「リオ・ブラボー」といった主演作の映像が使われたり、バート・レイノルズが老齢になったかつてのアクション俳優を演じた「ラスト・ムービースター」(2017年)では、彼の主演作「トランザム7000」や「脱出」が劇中で、代表作として映画祭で上映される場面が出てきたことがある。だが、日本では現実とフィクションの垣根を越えて扱われた俳優はほぼ例がない。こういう描き方ができるのは、今もダンディーなアクションスター・舘ひろしだから可能なわけで、存在感が唯一無二であることを再認識させられる。
ジョン・ウェインやバート・レイノルズは、“老い”が劇中のキャラクターと重なる描かれ方をしていたが、本作での舘ひろしはアクションスターとして現役。またコメディー演技の軽さも持ち合わせていて、新たな代表作が生まれた感がある。まだまだあぶなくも色っぽい、舘ひろしの魅力を、ぜひ見届けてほしい。
(金澤誠/映画ライター)

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