【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#65


 アルバム『ラバー・ソウル』(1965年12月3日発売)⑥


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■『ノルウェーの森(ノーウェジアン・ウッド)』


 日本語の正式タイトルは邦題と原題の併用らしい。結果、原題に付いていたサブタイトル「ジス・バード・ハズ・フロウン」がどこかに飛んでいった。

バードだけに。


 ジョンによる新機軸の音楽。ジョージがインドの楽器=シタールを弾いている。これに影響されたローリング・ストーンズが翌年の『黒くぬれ!』でシタールを導入。音楽シーンに、ちょっとしたインドブームが訪れることとなる。


 さてここでは言葉の話をしたい。


 有名なのは邦題「ノルウェーの森」が誤訳だという話。原題が「ウッド」だが、森だと複数形「ウッズ」にならないといけない。


 原題の正しい訳は「ノルウェー産の木材製(の家具)」。主人公がしけこんだ女の部屋にあった、いい感じの家具を指している。でも、これじゃ邦題にならないから「~森」でよかったのかも。


 そして歌詞のラストの方にある「ソー・アイ・リット・ア・ファイア」。

高校時代に買ったLPでは「暖炉に火をつけた」となっていたが、これも誤訳。


 実は主人公、ふられた腹いせに、ノルウェー産木材製の家具に放火してしまうのだ。嘘ではない、ポールがそう語っている。何と物騒な歌だろう。


 もしかしたら逮捕された主人公はノルウェー産の木材ではなく、スウェーデン産の鉄格子の中に入れられたかも。


■『ガール』


 こちらもジョンの曲。こちらも歌詞の話をする。


 タイトルが「ガール」で「0:20」からのサビ「♪アー・ガール」の後に何というか、よだれを吸い上げるような音が入っている(この部分を、やたらとエロく表現するモト冬樹のネタが忘れられない)。


 さらに「1:00」からの大サビのバックコーラス「♪tit tit~」は乳房のことだというから、私はずっと、単なる「ロリコンのエロソング」と思っていた。


 しかしよく聴けば「誰かぼくの話を聞いてくれ」から始まる、自らがストーリーテラーとなる歌詞の設定が新機軸だし、かつ物の本によれば、キリスト教への疑念が込められているというから、実は深い歌詞だったのだ。低く見積もってごめんよ、ジョン。


 そのジョンが「僕らは今やイエス(キリスト)より有名だ」と発言し、大炎上騒ぎを起こすのは、翌年のこと。


 でも私は、ビートルズのことをキリストの何百倍も考えて生きてきた。ビートルズの歌を賛美歌の何百倍も聴いて生きてきたのだ。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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