フィリピンのテレビ局GMAニュースは2026年4月24日の放送で、国際刑事裁判所(ICC)の予審裁判部が、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領に対し、大統領在任中および市長時代に主導した「麻薬戦争」をめぐる「人道に対する罪」で公判を開始する決定を下したと報じた。

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 同部はドゥテルテ氏を、国家や組織の力を利用した広範かつ系統的な殺害の「間接的正犯(首謀者)」と認定。
市長時代から大統領任期に至るまで続いた私刑の実態が、国際法廷の場で明らかにされることになる。

 氷山の一角「49件の惨劇」

 ICCが今回認定したのは、49件の殺人および殺人未遂事件。被害者は計78人に上り、うち76人が死亡した。ただし、これは「非限定的なリスト」に過ぎず、ダバオ市やフィリピン全土で数千人が犠牲になったとされる巨大な犯罪群の中から、組織的性格を立証するための「象徴的事例」として抽出されたものだ。少なくとも3人の未成年者が含まれており、その残虐性が際立っている。

 三つの訴因:殺害の「共通計画」

 起訴内容は、ドゥテルテ氏の政治キャリアに沿って三つの時期に分けられている。

ダバオ市長時代(2013~2016年)
警察の一部やヒットマンで構成される暗殺団「ダバオ・デス・スクワッド(DDS)」を組織・指揮。犯罪容疑者を組織的に抹殺する「モデル」を構築した。

大統領就任後・高価値標的の抹殺(2016~2017年)
麻薬製造業者やシンジケート幹部を記した「PRRDリスト」を作成。特筆すべきは「報酬制度」で、標的に応じて5万~100万ペソ(約13万~260万円)が警察官や殺し屋に秘密裏に支払われていたとされる。
2016年11月、収監中に射殺されたロランド・エスピノーサ氏の事件では、警察は「抵抗した」と主張したが、国家捜査局(NBI)の証人は「独房に押し入り、一方的に銃撃した」と証言している。

オプラン・トッカン(2016~2018年)
低所得者層を標的とした地域掃討作戦。
2017年、17歳の学生キアン・デロス・サントス君が「銃を抜いた」として射殺された事件では、防犯カメラ映像により、警察官が彼を連行し、無抵抗のまま射殺する様子が発覚。国民の強い憤りを呼んだ。

 「国家政策」としての殺人

 ICC予審裁判部は、ドゥテルテ氏が共犯者らと「共通の計画」を策定・遂行したと結論づけた。警察を殺害の実行部隊として設計・配置し、武器などの兵站を提供。殺害を推進する官僚を重用し、金銭的インセンティブを与えることで組織を統制していた。

 検察側は今後、これがドゥテルテ氏個人の「組織方針」から、大統領就任後には「国家政策」へと拡大・昇華されたことを立証する構えだ。

 公判開始の決定を受け、犠牲者遺族からは「司法が前進した」と安堵の声が上がっている。ドゥテルテ氏は一貫してICCの管轄権を否定しているが、国際刑事司法の包囲網は、かつての最高権力者を逃げ場のない法廷へと引きずり出されつつある。
【編集:af】
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