ほぼ同期で年齢も近く30年来の付き合いのキャイ~ン(天野ひろゆきさん・ウド鈴木さん)、ずん(飯尾和樹さん・やすさん)。4人は所属事務所(浅井企画)も同じでデビュー当時から苦楽を共にして来ました。
そんな仲よしな4人がエッセイ集『キャイ~ン ずん 作文集 ほぼ同じで、ぜんぜん違う』(徳間書店)を刊行。下積み時代の思い出の地巡りや、4人での旅行の模様、ボケとツッコミが飛び交う座談会、4人それぞれの思いが書かれた作文集など盛りだくさんな内容となっています。
今回のインタビューでは4人それぞれが初めて会ったときのお互いの印象や仲良くなったきっかけなどを、これまた4人とほぼ同期で年齢も近いインタビューマン山下が聞きました(前後編の前編)。
■高倉健さんを意識していたウド鈴木
――事務所に所属した順番はウドさん、飯尾さん、天野さん、やすさんですが、それぞれ初めて会ったときのことを覚えていますか?
飯尾和樹(以下・飯尾):覚えてます。ウドが所属した半年後に僕が入って。その頃にルー大柴さんがやる喜劇の舞台に入れてもらって、その顔合わせをした事務所の応接室でウドと初めて会いました。
――ウドさんが飯尾さんに初めてあったときの印象は?
ウド鈴木(以下・ウド):当時の専務に、「すごい人が来た」というのは聞いてたんですよ。何がすごいのかというのはわからなかったんですけど会ってわかりました。すごい顔のデカい人(笑)。ホントに自分が(飯尾さんの顔で)日陰になるような…獅子舞いのようなすごい迫力で。
やす:今は歯並びがいいけど、あのころは違うもんな。ジャイアントコーン見たいな歯で。
天野ひろゆき(以下・天野):赤塚不二夫タッチの。
ウド:飯尾さんにすごい丁寧にあいさつしてもらって。礼儀が正しくて、いい人だと思いました。
飯尾:いや、僕もそっくり同じ感想でしたね。ウドはガスコンロのとろ火みたいな顔してね。それで今みたいに「どうも!ウドです! あーー!」とかじゃなくて「どうも鈴木任紀です」って、渋いんですよ。
ウド:当時はそういうキャラだったんです。
飯尾:ガスコンロのとろ火見たいな顔で「どうも」って言われても笑いをこらえるのに大変で。「芸能界ってこういう人が来るんだ」って思って俺も衝撃でした。
でもね。そこから2ヶ月後にウドのアパートの部屋に行ったんですよ。なんで渋くやってんだろうと思ったら高倉健さんのポスターがドーンて貼ってあって。
――ウドさんは当時、高倉健さんを意識してたんですね。
ウド:健さんに憧れてこの世界に入りまして。
飯尾:じゃあ浅井企画じゃないだろ!
――結果、全然違うキャラクターになりましたね(笑)。
天野:不器用なところは一緒だけど(笑)。
飯尾:健さんは役だから。
■次に会ったときは『ウド鈴木』になっていた
――高倉健さんの路線からどう変わって行ったんですか?
飯尾:次に会ったときはもう『ウド鈴木』でした(笑)
――早いですね。
ウド:関根(勤)さんが「ウドは中身が健さんだからなぁ!」と。
天野:ウドちゃんは生き方とかベースが二枚目なの。
飯尾:関根さんが「ウド、タバコ吸ってるときの顔。渋くてかっこいいな」って言ったら次の日から1日1箱のタバコが2箱になって。ウドはあと20回渋い顔を見せたくて。
――ナルシストな部分もあるんですね。
天野:後は自意識過剰な部分があるかも。「天野君、こないだドラマで女優さんと共演してたけど、あの女優さん俺のことなんか言ってた?」って。言うわけねぇだろ(笑)。
――ウドさんは自分のことがめちゃくちゃ好きなのかもしれませんね。
天野:そう。ウドちゃんは「天野く~ん、天野く~ん」って言ってるけど自分のことしか興味ないから。
ウド:そんなことないよ!天野く~ん!(笑)
■キャイ~ン衝撃の出会い「7時間遅れてパンチパーマのウドが」
――ウドさんと飯尾さんが天野さんと初めて会ったのはいつですか?
飯尾:俺とウドが出会って1年後ぐらいに事務所がお笑いライブを開くことになって。
天野:それで稽古場に飯尾っちとか俺とか事務所の若手芸人がみんな集まる決起集会みたいな日があったんです。
飯尾:そのときに天野と初めて会ってちょっとだけ話したね。「まだ学生ですか?」とか。
天野:そう。
ウド:そのころ深夜のアルバイトを掛け持ちしてて寝過ごして。それで一応行ってみたら皆さんまだいて「遅れました。すいません」って言ったら、みんなが「そういうことで、これからよろしくお願いします」って〆の挨拶をしてて。
天野:そのときのウドちゃんの格好がペイズリー柄のシャンバーに白のスラックスにエナメルの靴を履いてパンチパーマ。「やべぇな。芸能界ってまだ怖いのかな。関わりたくないな」と思って俺はすぐに稽古場から出ていったの。
ウド:そのときに飯尾さんとかは「7時間も遅れたら普通来ないぞ」っていじってくれてたんですよ。でも天野君と当時の相方さんだけスーッと、僕に興味を示さずに出て行ったんです。「なんだあの人!…しかし後に相方となる」
天野:わかるか!
(後編へ続く)