エッセイ『虚弱に生きる』を出版した文筆家の絶対に終電を逃さない女さんと、『愚かで悪いか』を出版したイラストレーター・漫画家のoyumiさんが「体の虚弱・心の虚弱」をテーマに対談。学生時代の出来事が健康・メンタルに及ぼした影響や、大勢の人が集まる場に行くときの心理などについて語りました(この記事は2月25日に高円寺・蟹ブックスで行われたトークイベントの内容を再編集したものです)。
「虚弱」にもいろんな種類がある
oyumiさん(以下oyumi): 私はメンタルが弱くて「心が虚弱」だと思っているんですが、体もあんまり丈夫だと思ったことがなかったので、虚弱側のつもりで『虚弱に生きる』を読んだんです。そしたら、自分が見聞きしてきたのとは違う虚弱が書かれていたことにびっくりしました。私は胃が弱いことが主なんですけど、終電さんは膝の痛みやイボなどについて書かれていて。膝の不調で生活に支障をきたすって聞いたことがなかったので、虚弱って一口に言ってもいろいろあるんだなと驚いたんです。
絶対に終電を逃さない女さん(以下終電):私はoyumiさんと逆に、虚弱だけど胃は強いほうですね。
oyumi:『虚弱に生きる』では、不眠や蕁麻疹などいろんな不調があるけど、病名がはっきりつかなくて大変な様子が描かれていました。私も小学6年生ぐらいから中学校の頃、謎の胃痛に悩まされた時期があって。授業中に胃が痛くなって、横になると治るから、毎回保健室に行くんです。それでも治らないときは、もう早退するしかない。生理不順もすごくて、出血の量が多すぎて貧血で。
終電:毎朝とは、すごいですね。
oyumi:半年とか3か月とか、そんな長期間じゃなかったですけど、その原因も結局わからないままでした。あと子どもの頃、無駄によく吐いてたんですよ。過食嘔吐とかじゃなくて、ちょっと風邪引くとすぐ吐いちゃうとか。大人になってからそういうのはなくなったんですけど、そういう成長痛みたいな不具合のことを、この本を読んで思い出しました。
心理的ストレスが体調不良の原因に
終電:私は子どもの頃から関節が痛いとか、ちょっとお腹が痛いとかもありましたけど、その頃はまだ体が弱いという自認はなくて。それが、21歳からいきなり老化みたいにガクッときて、おばあちゃんみたいになって、どんどん衰えていくみたいな感覚なんです。ちなみにoyumiさんは、学校は苦手でしたか?oyumi:あまり治安のいい学校じゃなくて、悪目立ちするとハブられるから、ちょっとしんどかったですね。特に小学6年生のとき、1人の女子を男子全員がいじめるっていうえげつないいじめがあって。先生もお手上げで、学級崩壊みたいなレベルになって授業もできない、くらいの。人がいじめられているところを見てトラウマになりましたし、いじめの対象が自分になるかもという恐怖もすごかったです。明日は我が身みたいな。
終電:暴力を目にするだけでトラウマになりますよね。うちは親がめちゃくちゃ夫婦喧嘩していて、子どもの自分はすごく我慢をしていて。それが今の虚弱に影響しているかもしれないと思います。断定はできないですけど。oyumiさんももしかしたら、体調不良の原因にそういう心理的ストレスがあったかもしれないですね。
oyumi:そうですね。当時は不登校なんて選択肢になくて、当たり前に通ってはいたけど、今思うとストレスが無自覚に溜まっていたかもしれません。終電さんは学校はつらかったですか?
終電:常につらかったです。友達もいなかったし、ずっとクラスで浮いていました。場面緘黙症という障害があって、家では喋れるのに学校では喋れなかったので、言いたいことがあっても言えないし、授業とか掃除の時間とかにクラスの子に伝えなきゃいけないこととかも言えなくて、常にストレスでした。でも私も不登校になるという選択肢がなかったので、絶対に通わなきゃいけないって思い込んで、頑張って通っていましたね。
メンタルを保つことが第一だから、我慢し続けられない
終電:oyumiさんの『愚かで悪いか』は、イラストと文章で赤裸々でリアルな気持ちが描かれていますよね。ファッションとかおしゃれなものへの関心の高さを表現しつつ、そういうおしゃれな界隈へのなじめなさとか、メンタルの不調とかも隠さずに同時に描くっていうのが珍しいな、面白いなと思いました。すごくわかるなと思ったのが、「美術館に行っても、半分くらい見ると膝の裏が疲れて帰りたくなる。でもかっこつけて我慢して絵の前で5分ぐらい立ったり、わざと二度見したりする」というくだりです。私も美術館に結構行くんですけど、やっぱり展示の半分ぐらいで疲れてしまう。夏とか足がつるんですよね。
終電:帰宅ラッシュが過ぎてから帰るという選択肢はないですか。
oyumi:私、夜の電車がちょっと怖くて、パニック障害が出そうになってしまうんです。
終電:長時間だと単純に座れなくて疲れてしまいますけど、意外と人混みは大丈夫です。集団は苦手なんですけど、集団を形成してない単なる人混みは平気です。苦手なのは輪ですね。目的をもって集まる人の輪に入るのがしんどいです。
oyumi:私も輪は苦手です。輪に入れなかったとき、居場所の確保ができないことでつらくなるんですよね。人が大勢集まる飲み会とかパーティーに誘われて行くと、どうしたらいいかわからなくて孤立する。学生時代の、浮いててハブられているときの自分に戻ってしまいます。それに耐えきれなくなって途中離脱することもよくあります。
ストレスを感じないことが最優先
oyumi:私はメンタルが不安定なので、とにかく自分のメンタルを保つことが今は一番大事で、我慢し続けられないんです。これまでメンタルが崩れて重症化した人を何人も見てきたので、とにかくストレスを感じないことを一番にして行動して、仕事もその基準で選ぶしかない。今いる友達と対等に接してたいんですよ。でも重くなると対等に接するのが難しくなっちゃうんで、そうならないように必死で心を守ってる感じです。集まりに呼ばれたら、興味自体は持つんです。行って後悔して帰ることもよくあるんですけど、家でじっとして楽しいも悲しいもないくらいだったら、外に出てつらい思いをしたほうが、まだメリハリがあっていいかなと。
終電:確かに私も、そういう場には修行だと思って行ってます。パーティーとか花見とか。花見ってお金がほとんどかからないじゃないですか。飲み物や食べ物をちょっと持ち寄るくらいで済むから、お金のかからない修行です。
oyumi:そうやって前向きに考えるのはいいですね、年に1回の修行。
終電:ただ、レジャーシートに座り続けるので、虚弱的には腰と膝に悪いという面もあります。去年は花見をきっかけに痔も再発してしまって…。そういう意味でも花見は本当に修行ですね(笑)。
<文/女子SPA!編集部>
絶対に終電を逃さない女
1995年生まれ。 大学卒業後、体力がないせいで就職できず、専業の文筆家となる。 様々なWebメディアや雑誌などで、エッセイ、小説、短歌を執筆。 単著に『シティガール未満』(2023年、柏書房)、『虚弱に生きる』(2025年、扶桑社)、共著に『つくって食べる日々の話』(2025年、Pヴァイン)がある。
oyumi
静岡県出身、平成生まれ。2018年よりイラストレーター・漫画家として活動。2025年、初の作品集『愚かで悪いか』(Type Slowly)を刊行。TBS Podcast「東京トホホ」パーソナリティ。
Instagram @oyumijp
【女子SPA!編集部】
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa
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