自身も壮絶な離婚経験を経て、3人の子どもを育てながらひとり親、貧困家庭に特化した子ども支援を継続しているNPO法人・子育て応援レストランの代表・若林優子さん。

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 コロナ禍を経て、現在の物価高により、若林さんの行う支援に集う世帯は年々増加しており、現在では3000世帯が登録。
2017年から始めた支援は今年で10年目を迎える。

※本記事は後編です

子ども支援・子育て支援は継続が難しい現実も

 NPO法人・子育て応援レストランでは、月1で食材などの物資を配るイベントや、お弁当の無料配布、そして定期的に親子で楽しめるイベントの実施、ひとり親の孤立対策や子育ての悩みをシェアする会などを、幅広く行っているそうだ。

 子ども食堂など、子ども支援や子育て支援を行う組織は全国にも多くあるが、収支が折り合わず、継続が困難になるケースが少なくない。熱量はあってもなかなか現実的に維持していくのが難しいという実態は、昨今の支援現場の課題として議題に上がることも多いが、若林さんはどのように継続をしてきたのか?

「支援物資をどう確保していくのか?が課題ですね。継続的に支援協力をしてくださる方たちや、支援物資を届けてくださる企業さんたちとの連携を組むことが重要だと思っています。

こういう活動をしていると、勝手に支援物資が届くと勘違いされている方も多いのですが、実際はそんな簡単なものではありません。社会貢献しているから自然と支持が集まり協力してもらえるということではなく、支援者である私たちの気持ちや熱意に共感してもらい、共にやっていくものだと私は思っています。

また、子ども食堂している人は、行政の補助金をもらって始めるケースが多いですが、補助金内で成立させようとすると、支援の輪を広げることに対して自ら図らずも制限をかけてしまうことにも繋がりかねません。それにより、例えば赤字になってくると、自分の腹を痛めたくないからやめますとなるケースも周りで多く見てきました」(若林さん・以下同)

支援物資を配るだけではなく「親子の時間」を届けたい

「今でも悔やんでいます」彼氏を選び、我が子を児相に預けた母親も…支援者が現場で見たシングルマザー・貧困家庭のリアルとは
クリスマスイベントの様子
 若林さんの活動はひとり親と、貧困家庭に特化しているため、補助金が取れないという現状があるそうだ。補助金が制限される理由として、現在の公的助成制度では「広く一般に開かれた公益性」や「多くの住民への波及効果」が重視される傾向があり、支援対象を絞った活動ほど採択されにくいという制度上の課題も指摘されている。

 だからこそ、補助金に頼らない運営モデルを考えていく必要があると考え、地域の企業や団体と思いを通じて連携する運営モデルを考えてきたという。

「参加者もよく知っている支援場所に行くほうが安心だと思うので、この場を無くせないという気持ちが強いです。とにかく無理のない範囲で、継続して支援できるようにということを最重要視しています。継続して支援できるのは月150人で、クリスマスやハロウィンの大型イベントだと500~700人になります。
参加者だけでなく、毎月支援の場を楽しみにしているボランティアや企業さんもいるので、そういう場を無くさないようにしています」

 また子育て支援において、若林さんが大切にしているのは、親子の時間を提供することだ。

「共働きなどで、親子の時間を持てない人が多い中で、単に支援物資を配るだけでなく、音楽のライブやお菓子まきなど、イベントとして楽しいものを提供しています。自発的にイベントに参加する余裕がないご家庭も多い中で、支援されること自体を親子のイベントとして提供することで、物質面だけではない、精神面での支援にもつながるのではないか?と考えています」

 だがそこに参加している親の中でも2つのパターンに分かれるという。

「ここにくるときくらいは我が子との時間を楽しみたいなと積極的に子どもと触れ合いながら参加する親と、支援物資だけもらえればよいと考えている親です。もちろん後者の気持ちもわかるんです。私も心に余裕がない時は、とにかく周りの家族がみんな幸せそうで妬ましい気持ちがあって、人の好意を受け取ることができなかった。

でも、羨ましい妬ましいをひっくり返すほど自分で磨いて頑張るのか? そこから抜け出すのは自分しかできないので、自立して楽しくやってる姿をみんなに見せて、ひとり親でも自立したら楽しい未来が待ってるよっていうのを見せたいなと思っています」

「親に育てられていないから育て方がわからない」というお母さんも

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支援活動の様子
 ひとり親は、どうしても精神的にも孤立する傾向にあり、そういった視点での支援も行っているそうだ。そんな中で、寄り添うことの難しさを実感することも多いという。

「支援に来ている方で、『児童養護施設で育ち、親に育てられたことがないからどのように子育てをしたら良いかわからない』と言っているママさんがいました。その後、旦那さんと別れて、次のパートナーと再婚して、また子どもができるけど、結局愛情の与え方がわからないと。施設で育っているために、誰かに気に入られないと生きていけなくて、愛情をもらうとはまた別の感覚で生きてきたんです。

結局そのママは、次のパートナーとも別れて、子どもを家に置いて夜飲みにでていたり。別のケースでは、子どもと2人で支援にきていた親子がしばらくして来なくなり、しばらく経ってからまたきた時に、『彼氏と一緒になって子どもは児童相談所に預けました』と報告を受けたことがあります。
その時はショックでした。自分だけの幸せのために子どもを捨てたんだと。

もちろん母親本人も幼少期から抱えていた苦しみを乗り越えようと必死だったのだとは思います。だからこそ、もっとどうにかできなかったのかな、あの子は今どうしているのだろうかと、いまだに悔やむ気持ちがあります」

 もちろん支援の範疇では、各家庭に深く介入はできない。でも深掘りはできなくても、その人たちと仲良くなり、自分自身もシングルマザーとして苦労してきた当事者目線を生かして、悩む母たちの心を開示してもらうことはできる。

 そうして心理カウンセラーなどの専門家と連携をとり、相談窓口に繋げる支援も行っているという。

「今の子たちは特に、知らない人に自分の心を開くハードルが高いと感じます。その中で、子育て世帯の悩みはさまざまで、役所に相談に行っても、どこの課に行っていいのか分からず、たらい回しにされて心が折れたというケースもよく耳にします。

また、行政の政策、子育て支援に対する情報を得る手段が行き届いていないと実感もしますし、同じ人に信頼して安心して相談できるサービスなどもまだまだ充実していないように思います。淡々とした解決じゃなくて、ただ寄り添って欲しい人も多いので、少しでもそういう存在になれたらと思っています」

自立に大切なのは「余計なものを背負わないこと」

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支援活動の様子
 若林さんの活動を通して、最初はどん底からスタートしたものの、少しずつ自立の道を経て、今度は自分が助ける側に回ろうと、支援のボランティア側に回るケースもあるという。

「苦しい状況というのは結局、支援物資やお金では解決できないと思うんです。いかに視点を切り替えて、人を大切にすることで、自分にそれが全部帰ってくるということに気づけるか? だと思います。


私も離婚するまでの依存していた時の幸せと、自立できた今の幸せは比べものにならないですし、自立するまでには5年はかかりました。最初はクリアしなければいけない課題が膨大な数ありますが、それを一気にクリアしようじゃなくて、一つずつ時間をかけて継続して、解決していくしかない。

自立は、まず自分の中に何が無駄か? を見直すところからスタートして、余計なものは背負わない。そこから見直し始めることが第一歩だと思いますし、最初はシングルであることに引け目を感じたりするかもしれませんが、自分の頑張り次第で、いくらでも後々巻き返せることはできますから」

 ひとり親や、経済的に余裕がないと、どうしても子どもを幸せにできないかもとプレッシャーに感じる人もいるかもしれない。だが若林さんは、「親が幸せじゃないと、子どもは幸せになれない」と強く語ってくれた。

 幸せとは物質的なものではなく、親子が互いに笑顔でいれる心の余裕なのだ。自分だけでなく、誰かを幸せにできる優しさや温かさは、意外と身近にある。その尊さを、若林さんはこれからも活動を通して伝えていってくれるだろう。

<取材・文/SALLiA>

【SALLiA】
歌手・音楽家・仏像オタクニスト・ライター。「イデア」でUSEN1位を獲得。初著『生きるのが苦しいなら』(キラジェンヌ株式)は紀伊國屋総合ランキング3位を獲得。日刊ゲンダイ、日刊SPA!などで執筆も行い、自身もタレントとして幅広く活動している
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