鳥たちにとって子育ての時期は、大きな試練の時期でもある。巣は常に捕食者に狙われているし、嵐が来れば吹き飛ばされてしまうこともある。
アメリカのペンシルベニア州で、別々に保護されたアメリカワシミミズクの母鳥と巣から落ちたヒナが、新たにひとつの家族となった。
さらにその後2羽の孤児となったヒナが保護されたが、この母鳥はその子たちも我が子同様にすんなりと受け入れた。
子を失った母鳥と、親を失ったヒナたち。たとえ血は繋がっていなくても、彼らの間には強い絆が結ばれることになったのだ。
保護されたミミズクは子育て中の母鳥だった
2026年4月1日、ペンシルベニア州ワシントン・ボロにある野生動物の保護施設、レイブンリッジ野生動物センター[https://ravenridgewildlifecenter.org/]は、一羽のアメリカワシミミズクを保護した。
このミミズクは、鶏小屋を囲っていた電気柵に絡まっていたという。救助するまでか時間がかかってしまい、その間ずっと電気ショックを受け続けていた。
幸いなことに、大きなケガなどはしておらず、擦り傷や羽の乱れがある程度で、元気になればすぐに野生に戻すことができる状態だった。
だが一点、心配なことがあった。このミミズクの腹部には、抱卵班がみられたのだ。抱卵班とは、卵やヒナに直接触れて温めていた跡である。
このミミズクは保護された当時、自分の巣の中に卵か、孵化したばかりのヒナを残していた可能性が高いのだ。
餌を運び、守ってくれる母親を失ったヒナたちが生き延びるのは難しい。
親とはぐれたヒナを地下室で保護
その2日後、ペンシルベニア州コロンビアに住む男性の家で、アメリカワシミミズクのヒナが保護された。
男性が地下室へ降りようとしたところ、冷たいコンクリートの階段に、小さくてふわふわした生き物が座っているのを見つけたという。
ヒナは痩せ細っており、周囲に親らしき姿はなかった。本来ならまだ巣の中にいるべき大きさのヒナが、身を隠せる場所もない階段で震えていたのだ。
この子が助けを必要としていると悟った男性は、ヒナを保護し、レイブンリッジ野生動物センターに運び込んだ。
すぐに救急スタッフが鳥を診察し、痩せ細って脱水症状を起こしていたヒナの命を救うための輸液を行った。幸いなことに、ヒナは間もなく元気を取り戻した。
人間への刷り込みを防ぐため、メスにヒナを託すことに
同センターでは、幼いフクロウのヒナが保護された場合、人間への「刷り込み」を起こさせないよう、細心の注意を払っている。
刷り込みが起こって、一度人間を親だと認識してしまうと、野生に帰すのが難しくなってしまうからだ。
だがヒナには傍にいて面倒を見、野生で生きる術を教えてくれる親鳥が必要だ。そこで可能な限り、センターにいる成鳥と一緒にするようにしているという。
同センターの創設者であるトレイシー・ヤングさんは、今回も親代わりに育ててくれる「里親」を探したいと考えた。
そこで白羽の矢が立ったのが、2日前に電気フェンスから保護されたばかりのメスのアメリカワシミミズクだった。
トレイシーさんは、ヒナをこのメスの横に置けば再び母性本能が目覚め、世話をしたいと思うようになることを期待したのだ。
このメスのアメリカワシミミズクは、まだ巣作りや子育ての最中だったと思われる母鳥でした。
そしてヒナのほうは、母親を失ってひとりぼっちでした。それで私たちは思い切って、2羽を一緒にすることにしました。
この判断にはリスクもありましたが、彼女に母親としてヒナを育ててくれれば、「刷り込み」を起こすのを防ぎ、同じ種から学べるようになると考えたのです
母鳥はヒナをり受け入れ我が子同然に育てる
スタッフたちは祈りを込めて、ヒナをメスのケージに入れた。するとこの母フクロウは、あっという間に小さな孤児を我が子として受け入れたのだ。
赤ちゃんはすぐにメスのところへ行き、彼女の後ろにぴったりと身を寄せたんです。そして彼女も、ヒナを守ろうとしていました
母鳥の方はヒナに対し、非常に強い保護本能を示したという。2羽の鳥は瞬く間に強い絆で結ばれ、数分後には片時も離れなくなった。
さらに2羽のヒナが保護され、母鳥は3羽の育ての親に
その後数週間のうちに、レイブンリッジにはさらに2羽のアメリカワシミミズクの赤ちゃんがやってきた。
母鳥が最初のヒナの世話にすぐに慣れたことから、トレイシーさんは、きっと新しい2羽の赤ちゃんも同じように温かく迎え入れてくれるだろうと考えた。
彼女の予想は的中し、母鳥は、どの子も同様に受け入れ、愛情をたっぷりと注いだのだ。
現在、トレイシーさんはこの「ファミリー」を屋外の囲いに入れ、自然環境に慣れさせようとしている。
母鳥の助けを借りて、ヒナたちは人間が決して教えることのできない、「フクロウとしての生き方」を既に学び始めているそうだ。
少し大きくなったヒナたちが、小さな丸太の上にとまるようになりました。とても可愛いですよ。お母さんの真似をしようとしているみたいですね
センターには子育てベテランの「父親」も
今回はたまたまタイミングよく、子育てモードに入っていた母鳥が同時に保護されていたが、そうでない場合、誰がヒナたちの親代わりになるのだろうか。
実はこのセンターには「ファラオ」と名付けられたオスのアメリカワシミミズクがいて、ヒナたちの親代わりを務めているのだそうだ。
ファラオは翼のケガが原因で飛行に制限があり、野生に帰すことができない。そこでセンターでは、ヒナが保護されて来た場合、ファラオに「里親」として面倒を見てもらっているのだという。
ファラオが今までに面倒を見たヒナの数はなんと100羽以上というから、彼は超ベテランの「パパ」なのだ。センターのスタッフたちも、「彼がいてくれて本当に幸運」だと語っている。
4月24日付の同センターのSNSへの投稿でも、新たに巣から落ちたヒナが2羽保護されてきて、ファラオが面倒を見ているとのこと。
ヒナたちは既に自力でネズミを丸ごと1匹食べるようになっており、今後はファラオの監督と指導のもと、狩りの仕方など野生で生き延びる術を身につけていくことだろう。
ヒナと母鳥はいっしょに野生に帰る予定
保護されたヒナたちと里親たちのストーリーは、SNSやメディアを通じて、多くの人の感動を呼んでいる。
- この子が、野生に戻るときに支えてくれる家族を持てて本当によかった
- 小さなヒナにとって、本当にありがたい出来事だね
- 大切な野生動物を守ってくれているすべての人に感謝します
- すばらしい写真だね。本当に立派なお母さんだね
- 心が温かくなる話だ。
この美しい鳥たちにとって、みんなうまくいっている- この子を見つけてくれた人、そして世話をしてくれているみなさん(ファラオも含めて)ありがとう
- 里親のお父さんってすごいよね。フィラデルフィア・メトロにも素晴らしい個体がいるよ。私がここに来て17年になるけど、その前からずっといる。今年はその子も2羽育ててるんだ
- 最初に見つけたときよりずっと元気そうだ。この子たちのために尽くしてくれて本当にありがとう
- 嫌なことの多い世の中だけど、こういう投稿を見ると少し希望を感じるよ。みんなの活動に感謝だよ
- ああ、いいニュースだね。世の中ってお互いに助け合うためにあるんだなって思うよ
なおセンターでは、母鳥とヒナ3羽は一緒に放鳥する予定だという。そうすることで、母鳥はヒナたちに狩りの方法など、生きる上で重要なスキルを教え続けることができるはずだ。
自分の子を失った母鳥と親を失ったヒナたち。血は繋がっていないけれど、彼らは今立派な家族になった。野生に帰るその日まで、元気で仲良く過ごしてほしい。











