小惑星の軌道データから火星への近道を発見。往復・滞在の総日数が5分の1になる可能性
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 小惑星の軌道データから、火星への近道となるルートが見つかった。

 ブラジルの北リオデジャネイロ州立大学の研究者が、地球に接近する小惑星の軌道を分析する中で、惑星間移動に応用できる経路を発見したのだ。

 従来の方法では現在約2年かかる地球・火星間の往復日数が、わずか123日にまで短縮できる可能性があるという。

 この研究成果は『Acta Astronautica[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0094576526002456]』誌(2026年4月17日付)に掲載された。

小惑星の監視のデータは宇宙開発にも役立つ可能性

 地球には、宇宙のあちこちから小惑星が接近している。

 映画「アルマゲドン」(1998年公開、ブルース・ウィリス主演)のように、巨大な小惑星が地球に迫るシナリオは、映画の中だけの話ではなく、NASAをはじめとする世界の宇宙機関が、地球近傍天体(NEO)と呼ばれる地球の軌道に近づく小惑星や彗星を数十年にわたって監視し続けている。

 現時点でNASAが確認している小惑星はすべて、少なくとも今後100年間は地球に衝突しない。

 では、この膨大な観測データは惑星防衛以外に何の役に立つのか。ブラジルの研究者がその意外な答えを見つけた。

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小惑星2001 CA21の軌道が示した意外な可能性

 2001年に発見された地球近傍小惑星「2001 CA21[https://www.spacereference.org/asteroid/2001-ca21]」は、地球の軌道付近を通過するだけでなく、火星の軌道とも交差する珍しい経路をたどることが初期観測で明らかになった。

 小惑星が最初に発見された直後は、軌道の計算に大きな不確かさが伴う。観測を重ねるごとに精度が上がり、最終的な軌道が確定する仕組みだ。

 カラパイアでも以前紹介した小惑星2024 YR4が、当初地球衝突確率3.1%と報じられながらその後ほぼゼロに修正された例が記憶に新しい。

 北リオデジャネイロ州立大学のマルセロ・デ・オリベイラ・ソウザ氏は、この「確定前の初期軌道データ」に着目した。

 精緻化される前の2001 CA21の軌道は、地球と火星の両方の公転軌道と交差する特殊な形状を持っていた。

 ソウザ氏はこの形状に着目し、小惑星の軌道面の傾きから5度以内に収まる火星への経路を探索した。

 この角度の範囲内に収めることで、宇宙船がより直線に近い経路をとれるからだ。

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2031年に火星往復最短ルートが開ける

 ソウザ氏は、地球と火星が約26ヶ月ごとに最も近づく「衝(しょう)」と呼ばれるタイミングに合わせ、2027年・2029年・2031年の3回の衝のうち、どれがより短い往復・滞在の総日数を実現できるか、その条件を探った。

 衝とは、太陽・地球・火星がこの順に一直線に並ぶ瞬間で、両惑星間の距離が最も縮まる好機だ。

 3回の衝を調べた結果、エネルギー効率と軌道の条件を同時に満たすのは2031年の衝だけだとわかった。

 そして2031年の衝に合わせた経路の中に、2つの往復ルートが存在することが明らかになった。

 1つ目は地球から火星まで33日、火星から地球まで90日、往復の飛行時間123日の高速移動ルートだ。

 2つ目は地球から火星まで56日、火星から地球まで135日、往復の飛行時間191日の実現可能の移動ルートとなる。

 火星滞在期間を加えた総ミッション日数は、高速ルートで153日(行き33日・滞在30日・帰り90日)、実現可能ルートで226日(行き56日・滞在35日・帰り135日)となる。

 現在の技術で想定される総ミッション日数は約2年(約730日)、NASAが検討する有人ミッション案でも最短400日以上かかるとされている。

 今回のルートがいかに速いかがわかるだろう。

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小惑星監視データが宇宙探査の道標に

 ソウザ氏の研究が示した最大の成果は、小惑星の初期軌道データという、これまで惑星防衛の文脈でしか活用されてこなかった情報が、宇宙探査ミッションにも応用できるという新たな可能性だ。

 地球と火星はともに太陽の周りを公転しており、両者の位置関係は常に変化している。

 そのため火星への飛行は、現在地から目的地へ直線で向かうのではなく、惑星の動きを先読みしながら最適な曲線を描くように軌道を設計しなければならない。

 これは、将来の火星ミッションが必ずこの小惑星の軌道に従うべきだという意味ではない。

 この研究が示したのは、従来の手法では見落とされがちな高速飛行経路を、小惑星の初期軌道データから効率よく発見できるという新しい考え方そのものだ。

 世界中で蓄積されてきた膨大な小惑星観測データは、未来の宇宙探査ルートを導き出すヒントになる可能性を秘めているのだ。

References: Sciencedirect[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0094576526002456] / An interplanetary shortcut can speed up trips to Mars[https://phys.org/news/2026-04-interplanetary-shortcut-mars.html] / Astronomer Tracking Near-Earth Asteroid 2001 CA21 Finds Potential Shortcut To Mars[https://www.iflscience.com/astronomer-tracking-near-earth-asteroid-2001-ca21-finds-potential-shortcut-to-mars-83332]

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