沈みゆくメキシコシティ。地盤沈下の進行の速さをNASAの新型衛星が観測
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 メキシコの首都、メキシコシティの地盤が、一般的な地盤沈下の数十倍にあたるペースで現在も沈み続けていることをNASAの新型衛星が観測した。

 この事実は、NASAとインド宇宙研究機関が共同開発した地球観測衛星NISARが2025年末から2026年初頭に取得したデータで確認されたものだ。

 約2000万人が暮らすこの都市では1800年代後半から続く地盤沈下によって、地下鉄や建物への深刻な被害が100年以上にわたって積み重なっている。

メキシコシティが世界最速級で沈み続ける理由

 メキシコシティが抱える地盤沈下の問題は、この都市が誕生した歴史そのものに原因がある。

 かつてこの地には、南北65kmにも及ぶ巨大なテスココ湖が広がっていた。

 13世紀末にアステカ人がこの湖を干拓して都市を築き、16世紀にはスペイン人がそれをさらに発展させた。

 こうして生まれたメキシコシティの地下には、湖底に積み重なった柔らかい粘土と砂の層、いわゆる堆積層が今もそのまま残っている。

 問題はこの地層の性質にある。

 粘土層の粒子は水を多く含むと互いに浮いた状態になるが、水が失われると粒子同士がぎゅっと固まり、体積が小さくなる。

 約2000万人が暮らす巨大都市の生活と産業を支えるために地下水を大量に汲み上げてきた結果、地下の粘土層は長年にわたって圧縮され続けてきた。

 さらに、密集した建物や道路の重みが地盤をさらに押し下げている。

 地盤沈下の問題が記録され始めたのは1800年代後半で、1925年に当時の科学者が初めて公式に文書化した。

 1990~2000年代には一部地域で年間最大35cmという速度に達し、地下鉄や建物への被害が深刻化した。

 現在もNISARの観測によれば月2cm以上、年換算で25cm以上のペースで沈下が続いている地域があり、100年以上たった今も状況は改善していない。

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12日ごとに地球全体を監視する新型衛星NISARの仕組み

 2025年7月30日、インド南東部のサティシュ・ダワン宇宙センターから地球観測衛星NISARが打ち上げられた。

 NASAとインド宇宙研究機関が共同開発したこの衛星は、地球表面の変化をcm単位の精度でリアルタイムに追跡することを目的としている。

 NISARには、世界初の試みとなる2種類の合成開口レーダーが搭載されている。

 合成開口レーダーとは、衛星が軌道上を移動しながらレーダー電波を地表に向けて照射し、その反射波を解析することで地表の微細な動きを捉える技術だ。

 雲や雨、夜間でも観測できるため、光学カメラでは難しい悪天候時の観測も問題なくこなせる。

 NASAが製造したLバンドレーダーは1~2GHzの周波数帯を使い、岩盤や土壌、氷の動きに敏感だ。

 インド宇宙研究機関が製造したSバンドレーダーは2~4GHzの周波数帯を用い、植生の変化を捉えるのに優れている。今回のメキシコシティの地盤観測には、Lバンドレーダーが使われた。

 反射波を受信するのは直径12mの太鼓型アンテナリフレクターで、NASAがこれまで宇宙へ送り出した中で最大のレーダーアンテナだ。12日ごとに地球全体をくまなくカバーする。

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衛星画像が映し出した地盤沈下の実態

 NISARが2025年10月から2026年1月にかけてのメキシコシティの乾季に撮影した画像には、地盤沈下の実態が色で示されている。

 濃い青色で表された地域は、この約3か月の間に2cm以上沈下した場所だ。黄色や緑の領域は観測ノイズで、衛星が同じ地点を繰り返し通過するほど精度が上がり、ノイズは減っていく。

 メキシコシティ中心部のパセオ・デ・ラ・レフォルマ通り沿いに立つ独立記念碑(独立の天使像)は、地盤沈下の深刻さを象徴する存在だ。

 メキシコ独立100周年を記念して1910年に建てられた高さ36mの記念碑は、周囲の地盤が沈み続けているため、建設以来14段もの階段が基部に増設されてきた。

 記念碑自体は動かないが、周囲の地面だけが少しずつ下がっていくため、入口が地上から相対的に高くなり、階段を足さなければ入口まで辿り着けなくなってしまう。

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 メキシコシティの地下鉄網をはじめとするインフラは、場所によって異なる速度で沈下が進むため、レールや構造物がゆがみ、維持管理のコストが増し続けている。

 水道管の破損や建物の傾きも各地で報告されており、市民の日常生活に直接影響が出ている。

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世界各地の地盤監視を開始予定

 メキシコシティはNISARにとって最初の観測対象の一つだ。

 今後は沿岸地域や密林地帯など、これまで衛星観測が難しかった場所へと対象が広がっていく。

 NASAのNISAR副プロジェクトマネージャーのクレイグ・ファーガソン氏は「NISARの長波長Lバンドレーダーは、地盤沈下と海面上昇の両方の影響を受けやすい沿岸地域など、植生が密で観測が難しい環境でも地盤変動の検出と追跡ができる」と述べている。

 フランドル技術研究所のデイビッド・ベカーツ氏も「メキシコシティは地盤沈下において世界的に有名な場所であり、今回のような画像はNISARにとってまだ始まりに過ぎない。NISARのユニークな観測能力と一貫したグローバルカバレッジにより、世界中から新たな発見が続々ともたらされるだろう」と期待を語った。

 地盤沈下を根本的に止めるには、地下水の過剰な汲み上げをやめるしかない。

 下水を飲料水としてリサイクルする技術や、緑地を増やして雨水を地下の帯水層に戻すインフラ整備といった対策が模索されているが、いずれも長期的な取り組みが必要だ。

 気候変動による干ばつが増えれば地下水の自然な回復量が減り、汲み上げへの依存がさらに高まる。

 一度圧縮された地層は元に戻らない。

手を打てる時間は限られている。

 NISARが積み重ねるデータは、どの地域でどれほどの速さで沈下が進んでいるかを正確に示し、対策の優先順位を決める判断材料となるだろう。

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References: US-Indian Space Mission Maps Extreme Subsidence in Mexico City[https://www.nasa.gov/missions/nisar/us-indian-space-mission-maps-extreme-subsidence-in-mexico-city/]

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