スーパー戦隊シリーズ第41作目『宇宙戦隊キュウレンジャー』のヘビツカイシルバー/ナーガ・レイ役や映画・ドラマ「明治東亰恋伽」の川上音二郎役などで人気の俳優・山崎大輝。2018年にアーティスト・Taikiとしてマチゲリータのプロデュースによる1stシングル「Imagenerations」でデビューを果たした彼が、2020年5月、6月と2ヵ月連続で配信シングルをリリース。
第一弾の「現実逃避」はマチゲリータと、さらに第二弾となる「vivid sky」ではゆよゆっぺとタッグを組み、才能豊かなクリエイターによってさらなる開花を見せるTaikiだが、今回は作詞、そして作曲にも挑戦している。そんな渾身の新曲についてTaikiを直撃した。

――まずはご自身の音楽歴を教えてください。初めて音楽に衝撃を受けたきっかけや好きなアーティスト、楽曲などはありますか?

Taiki 僕が音楽に対してちゃんと興味を持ち始めたのが小学校5年生くらいだったんです。当時観ていた音楽番組で、L’Arc~en~Cielさんが楽曲を披露していたのを観て衝撃を受けました。音楽というのは、単に「音」を「楽しむ」だけではないんだ、という音楽の授業の先を知ったというか。ラルクさんの鳴らす音が届いたことで、これまでとは別の感情が湧いてきたんです。その当時は理解していなかったのですが、今、改めて思うとあの瞬間に「音楽はエンターテイメントである」ということを知ったんだと思うんです。「音」を通して聴く人を「楽しませる」という“エンターテイメント”を初めて知ることになったのがあの日の衝撃だったんだと思います。

――L’Arc~en~Cielの音楽を好きになったことで広がるものがあった?

Taiki そうですね。僕自身、当時ライブに行くことはできなかったんですが、あの日に衝撃を受けたことはすごく強く印象に残っていて。音楽番組で楽しむだけだったんですが、それから大人になって、芸能界のお仕事を始めてからはライブにも足を運ぶようになりましたし、ラルクさんの影響もあって自分自身としてもいつか歌いたい、という想いが生まれました。


――そんなTaikiさんは俳優・山崎大輝としてミュージカルで歌う機会も多いかと思います。お仕事で音楽に触れるようになったことで、子供時代から持っていた音楽観に対しての変化はありましたか?

Taiki ミュージカルで歌うというのも特殊な環境だと思うんです。たとえば自分が未知だったようなジャンルの楽曲に出会うことだってあります。それは自分が培ってきた音楽観だけでは表現しきれないようなジャンルやテイストの楽曲もあったりするんですね。お仕事として歌うときに、それを表現するためには様々なタイプの音楽を研究したり聴いたり学んだりして自分の中に落とし込んでいくことをしていました。それまでは特定のアーティストさんの楽曲を「好き」と聴いていたんですが、お仕事で音楽に触れるようになってからは「音楽」を好きになったように思います。

――そしてTaikiさんのデビューが決まりました。そのときのご心境を教えてください。

Taiki 俳優として活動しているなかでアーティストデビューのお話が来たんですが、ちょうどその頃は実は自分の中では「歌の仕事のチャンスはまだ来ないのかもしれない」と漠然と思っていたときだったんです。今はきっとお芝居に集中する時期なのかもしれない、と諦めかけていた時期でもあったんですね。そんなときにお話をいただいたので、半ば断念していた「音楽をやりたい」という想いが一気に膨れ上がりました。率直に言えば、嬉しかったです。


――このデビューに至るまでに音楽活動に挑戦はされていたんですか?

Taiki 元々趣味で宅録をしていたんです。ミックスも含め自分で作っていたんですね。機材も自宅には揃っていて。そうして宅録で音楽を作ってはいたんですが、積極的に自分からアプローチをしていたわけではなく、ファンの方に向けたイベントなどで聴いてもらうような感じではありました。

――ただ今回は俳優・山崎大輝としてではなく、ひとりのアーティスト・Taikiとして歌う。ご自身としての歌についてはどのような表現を目指されたのでしょうか。

Taiki 僕が思うに俳優としての歌は、ストーリー上の人物を僕が演じているので、芝居としての歌なんですね。でもアーティストとしての歌は、僕自身の気持ちを乗せたいという想いがあります。アーティストとしての歌は「僕」を表現する唯一の手段かなと思っていますね。僕自身、しゃべりで器用に自分の想いを伝えられるほうではないんです。むしろ不器用なほうで。でも歌では、音と共にじっくり考えたうえで乗せる歌詞と歌声とで自分自身を表現できるなと思いますし、そこが俳優とアーティストとしての歌のもっとも大きな違いだと思っています。


――5、6月で新曲を連続配信リリースされますが、いずれも歌詞を書かれています。それはこれまでの宅録活動などもあったからこそ?

Taiki そもそも音楽活動をしたい、と思った時点から楽曲も歌詞も自分の手でやりたいという気持ちがあったんです。いつ挑戦するか、というだけではあったので、準備はしてきていましたし、遅かれ早かれ音楽活動をするつもりでいたので、デビューが決まったときに「自分で歌詞を書きたいです」ということはお話しました。デビューシングルの「Imagenerations」はマチゲリータさんにすべてお願いしましたが、今回の2曲については自分でやらせていただけて、すごく嬉しいです。

――デジタル配信シングル、第一弾の「現実逃避」はマチゲリータさんと再びタッグを組まれた1曲。作曲がマチゲリータさんで編曲は橘 亮祐さんという作品になります。どのようなお話をしながら制作を進めていかれたんですか?

Taiki 最初は「どんな曲がいいか」という話から始まって、僕の抱いていた理想やイメージをお伝えしていたんですが、どういう構成が多くの人に求められているかであったり、どんな音色にすることで楽曲の世界観が広がるかであったり、ということもいろいろと教えていただきました。「Imagenerations」のときには歌詞については芯の部分についてだけお話をして、マチゲリータさんにお任せして僕が歌ったんですが、「現実逃避」では楽曲から僕が感じるものやインスピレーションを形にしていきましたね。

――Taikiさんの作詞というのはどのように進めていかれるんですか?

Taiki 作詞については本格的にはまだ始めたばかりなんです。

――よく「言葉が降って来る」という人と「言葉を掘っていく」という人がいますが……。

Taiki 大きくその2パターンに分けるとすれば、僕は「掘っていく」んだと思います。日常から「あ!」と思うとその感情や浮かんだ言葉を書き留めるようにしていて、歌詞を書こうと思ったときにはそのメモから引っぱろうと思っているんです。
でも「現実逃避」のときにはどんな感じの楽曲を歌いたいか、という方向性が決まっていたこともあって、テーマはメモを見なくても決まってはいたんです。

――そのテーマとは?

Taiki 「現実逃避」というタイトルに通じるんですが、すべてを忘れられるような曲を作りたかったんです。ライブでみんなに寄り添えるような曲を作りたいなって考えていたこともあって、楽曲の雰囲気やテイストを先にオーダーさせていただいたんですね。その楽曲を聴きながら僕が歌詞をつけていく、という作業だったので、最初からどういうことを歌いたいかというインスピレーションから生まれた楽曲ではあったんです。僕自身は元々、前衛的な歌詞を書くタイプではなかったこともあって、今まで書き溜めていた歌詞のフォルダーからはこの曲からのイメージとそもそものテーマに沿った言葉が出ることはほとんどなかったと思います。元来の僕の作詞手法については、自分の中で歌いたいというテーマから言葉やメッセージを掘っていくタイプだと思っています。

――「現実逃避」の歌詞はご自身の中でもこれまでになく前衛的だったんですね。

Taiki そうなんです。この曲に関しては「自分のこと」というよりも、この曲を聴いてくれる一人ひとりの存在に向けて書いているようなところがあって。皆さんからお手紙をいただいたりしていくなかで、日常的に受け取る皆さんの毎日のことが自然と蓄積されていって。そんな皆さんに向けて楽曲で僕の想いを伝えたい、という思いで作詞をしました。

――ご自身で歌詞を書いた楽曲をレコーディングする、というのはいかがでしたか?

Taiki 不思議な感覚でした。
歌詞を書いているときにはデジタル機器で書いているんですね。その歌詞がレコーディングのときには譜面台に置いてあって、自分の書いた歌詞にペンで書き込みをしていくんです。それを俯瞰で見たときに「あれ?これ、俺の歌詞だ」と現実に戻されるような感覚がありました。

――「現実逃避」なのに(笑)。

Taiki ですね(笑)。とにかく不思議でしたね。ディレクションをしてくださるスタッフさんはいらっしゃるんですが、自分の歌詞なので「こう歌う」みたいな感覚は作詞をしながらもありましたし、楽曲の見え方も変わるんだな、と思いました。

――そんな「現実逃避」に続いて、連続リリース第二弾シングル「vivid sky」は作曲もご自身です。この曲はどのように制作を進めていかれたのでしょうか。

Taiki 実は「現実逃避」と共にこの曲は昨年7月末のライブで披露をしたんですね。僕、期限的に余裕を感じてしまうと、つい行動にも余裕が出てしまって、レッドゾーンになると急に動き出すようなところがあって(笑)。「vivid sky」はそのライブの直前に作った1曲で、編曲をしてくださったゆよゆっぺさんにも急にお願いした曲だったんです(笑)。
だから昨年の夏を思い出すと、この曲を作っていた記憶があります。

――その「vivid sky」はどんなイメージで作っていかれたんですか?

Taiki どんなふうに作るかはなんとなく頭の中にあったんですけど、パソコンに向かってそれを形にするまでにちょっと時間がかかってしまって。この曲は自分のことを歌っているように感じるんですが、楽曲を作っている最中は、どんどん核心が見えなくなってしまっていたので、書き上げてレコーディングをしたときに「これは自分のことだな」と、点と点が繋がって線になっていることに気が付いたようなところはありました。

――楽曲もご自身で作っているだけに歌詞は乗せやすかったのではないでしょうか。

Taiki それはありました。「現実逃避」はマチゲリータさんの曲が先にあって、そこに歌詞を乗せていったんですが、メロに言葉をはめていくのは難しかったんです。たとえば日本語のイントネーションとメロの譜割が合っていたほうがいいので、そういったところでとても考えましたし、悩みもしました。でも「vivid sky」ではメロも言葉も自分で決められたので、悩む時間が減って思うままに出来ました。どちらが正解というのはもちろんないですし、どちらの手法も面白かったです。

――編曲はゆよゆっぺさんです。ゆっぺさんのアレンジはいかがでしたか?

Taiki 僕は頭に描いている編曲を具現化することができないですし、作曲したけれどそれがどうアレンジされるかが想像できなかったんです。だからこれは一度、アレンジをしてもらったほうがいいな、と思って。僕の作ったものには、歌とメロ、それにコードとリズムは入っていたんですね。そのデモを「とにかく曲として成立させてください」とお願いしました。

――実際にご自身が作った楽曲をレコーディングして、いかがでしたか?

Taiki 早く聴きたいな、と思いました。いい意味で僕が想像していた以上のアレンジの楽曲になったこともあって、最初にトラックを聴いたときに「あの曲がこんなふうになるんだ!」という驚きがあったんですね。そこに歌が乗ることでさらにどんなふうに化学変化が起きるのかが僕自身楽しみになってしまって。レコーディングで歌ったときの充実感もあって、「早く完成させたい!」と思いました。これを完成させることで、自分がまたひとつ、次のステージに上がれるような、そんな感覚がありました。

――実際に曲が完成したときにはどのようなことを感じたのでしょうか。

Taiki 「楽曲として成立させていただけたんだ!」と感動しましたし、めちゃくちゃ達成感がありました。ライブで歌うよりも実際に音源化されたものを自分で聴いたときのほうが達成感はありましたね。

――Taikiのカラーが出た1曲になりましたね。

Taiki カラーが出せるのは本当に「ここから」だと思います。まだはじめの一歩。やってみないとわからない部分がすごくありましたし、「Imagenerations」から「現実逃避」、そしてこの「vivid sky」と補助輪をつけていたような感じで。ここからやっとだな、と感じます。

――この曲が完成して「次のステージ」へ。そこではどんなご自身を見せていきたいですか?

Taiki ひとりのアーティスト・Taikiとしては枠を作らずに様々なジャンルの楽曲に挑戦をしていきたいと思っているんです。幅を決めずに、自分がそのときにやりたいと思ったものを形にしていきたいです。なにぶん、楽曲を作ることにしても歌詞を書くにしてもまだまだ経験不足なので、やりたいと思ったとしてもまだスキル不足で出来ないこともあるんですね。なので作品を重ねながらスキルアップをしていって、真に自分が求めているものを表現できるようになれたらいいなぁと思っています。

――現在、世界はとても困難な時期に突入しています。ご自身の時間を持つこともできているかと思いますが、音楽的にはどのようにそういった時間を使っていらっしゃいますか?

Taiki 自分自身の表現のひとつとして音楽があるんですが、昨今、表現の場所が限られてしまっているので、今は浮かんでくるアイディアを書き溜めています。辞書を引いて言葉を探求したり、アーティストさんのインタビューを読んで「こんなふうに考えているのか」とか「こんな言葉で表現できるのか」と聞き馴染みのない表現を知ることもできたり。そういった意味では言葉を吸収しているような気がします。ほかにもネットで感慨深い記事を読んだり、誰かのポエムを読んだり。今の時期にこうして溜めている言葉がいつか僕の歌詞として皆さんの元に届けられるといいなと思います。

――では最後に読者へメッセージをお願いします。

Taiki 「現実逃避」については意図せず、でもまさに今の時期に合致してしまうタイトルだな、と自分でも驚いているんですが、僕が「現実逃避」でイメージしていたのはライブ会場だったんですね。コール&レスポンスもあって、普段の日常から離れてライブで一緒に発散したい、という気持ちを込めたんですよね。「vivid sky」も疾走感があって熱い想いのある1曲。今の不安な気持ちやモヤモヤを、この2曲を聴いて、歌って晴らしてもらえたら嬉しいです。音楽ってどんな状況でも聴いてくださる方に寄り添えると思っているんです。今後もこの2曲のように皆さんの傍で掻き鳴らす音楽を作っていきたいと思っていますので、「現実逃避」と「vivid sky」を聴きながら、今後のTaikiのことも楽しみにしていてもらいたいです。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち





●リリース情報
Taiki(山崎大輝)
「現実逃避」
作詞:Taiki/作曲:マチゲリータ/編曲:橘亮祐

配信中

「vivid sky」
作詞・作曲:Taiki/編曲:ゆよゆっぺ

6月23日配信開始

音楽配信サイトmoraハイレゾ音源ダウンロード特典
音楽配信サイトmoraにて6月23日より配信「vivid sky」のハイレゾ音源をダウンロードいただきますと、「スペシャルボイス」をダウンロードしていただけます。
※「スペシャルボイス」は2020年10月31日までの期間限定特典となります。
※「現実逃避」「vivid sky」それぞれでスペシャルボイス内容が異なります

<Taiki(山崎大輝) Profile>
1995年10月3日生まれ、静岡県出身。第23回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにて審査員特別賞受賞。2011年より俳優としての活動をスタートし、2017年には『宇宙戦隊キュウレンジャー』にヘビツカイシルバー/ナーガ・レイ役で出演。最近の主な出演作は舞台『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ~Memory of Marionette~』『黄色い叫び』『メサイア-黎明乃刻-』『モマの火星探検記』、映画・ドラマ『明治東亰恋伽』など。俳優業の他に「らいと」名義でYouTubeにゲーム実況動画を投稿中。2018年「Taiki」名義で1st.シングル『Imagenerations』をリリース。

●ライブ情報
『Taiki LIVE 2020』
2021年1月19日(火)東京恵比寿THE GARDEN HALL
2021年1月25日(月)大阪BIG CAT

関連リンク
Taiki(山崎大輝)Music オフィシャルサイト
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