【エッセイ連載】「伊藤美来のmoi!」第24回目:お祝いご飯...の画像はこちら >>

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声優アーティスト・伊藤美来が日常で感じたことを切り取り、私らしく文章にしていくエッセイ連載「伊藤美来のmoi!」。

「初めましての方や応援してくれている方にも、表面的な私だけではなく自分の頭の中を見てもらう気持ちで書いていきたい。

“伊藤美来”がどんな人間か知ってほしい」。
そんなオモイを込めて言葉を綴っていきます。

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伊藤家のお祝いの日ご飯といえば、寿司か焼肉だ。お祝いご飯は家庭ごとに色が出るものだろう。宅配のピザやステーキ、お母さんの作ったカレーなんてお家もあるかもしれない。誕生日、入学式や卒業式、試験に受かった日など、とにかく何かにつけてお祝いご飯をするのが伊藤家。うちのお祝いご飯は決まったお店での外食なのだ。車で行く回転寿司か近所の焼肉店。この2つのお店を交互に訪ねている。

伊藤家がお祝いで行く回転寿司は、回転寿司でも100円寿司ではない。ネタそれぞれで値段が変わる、いわゆる少しお高めのチェーンの回転寿司だ。人気店のため週末の夜はだいたい10組ほど並んでいる。

ただこの並んでいる時間がたまらない。店内に漂う酢飯の香りに何度も来店してるのに期待が高まる。何を食べようかな。私が幼い頃毎回食べていたのはサーモン。わかりやすい子供だ。まぐろよりサーモン派の私は、女子力が高いんだと謎に思い込んでいた。回転寿司屋にはいつもいる女将さんがいて、伊藤家が初めて来店した時から働いていた気がする。私が小学生のときより前だから……何年経っているのだろう。女将さんはいつも元気ハツラツで声が通る。女将さんの「いらっしゃいませー」が聞こえると、板前さんたちも追いかけてお寿司を握りながら「いらっしゃいませー!」と追いかける。チェーンといいながら、江戸前感を味わえる。先日お昼の時間に家族で行った際には、女将さんの声のあとにかわいらしい「いらっしゃいませー!」が聞こえてきて、振り向くと若い女性がお寿司を握っていた。
私より年下だろう。女性の板前さんか……かっこいいな。「いい時代になったね」なんて知ったかぶって言ったら隣にいた母に笑われた。この店はお誕生日が近いとデザートが無料になるので、誕生日で来た日は必ずもらう。うちの母はいつもプリンを頼んでいる。ここのプリンはイタリアンプリンのように程よい硬さがあって美味しい。母がこのプリンが好きすぎて、母の誕生日ご飯が順番的に焼肉屋だったとき、プリンだけ回転寿司屋に買いに行ったことがあった。それくらい母にとって特別な日のプリンなのだ。

交互に食べに行く焼肉屋も、私が中学生くらいから通っているお店だ。お父さんが車を運転するとご飯屋さんでビールが飲めないのが嫌だから、歩いて行けるお祝いご飯を見つけたい!とのことで、運よく見つかった近所の焼肉屋。レトロなビルの2階にあり、こぢんまりとしていてテーブル席が6つほどしかない。お値段の割に良いお肉が食べられて、個人経営で地域密着っぽい雰囲気も気に入っている。

昔から変わらず、タン塩とハラミとミノが美味しい。ここで食べたミノが美味しすぎて、焼肉屋では必ずミノを頼む女へと成長した。子供たちがそれぞれ成長すると、夜ご飯は大学の友達と食べるだの、仕事が遅いだの、家族揃った外食は恥ずかしいだの、いつからか姉弟のうち誰かが欠けることが増えていったが、それでもこの焼肉屋でのお祝いご飯には5人揃うことがほとんどだ。こちらにも笑うと目が線になるような笑顔が素敵な女将さんがいる。女将さんはいつも「今日は5人お揃いなんですねー」とか「今日はお兄ちゃんいないのねー」とか、伊藤家のことを覚えてくれて、毎度声をかけてくれる。行きつけ感があってなんだかニヤつく。ある日、いつも家族で行くこの焼肉屋に、友達夫婦と行くことになった。私はむず痒い気持ちで勝手に緊張していた。きっと言われるであろう「今日はお友達となんですねー」の返事を真剣に考えながらお店に着いた。結局何も言われず、私が伊藤家のお姉ちゃんであることには気づいてもらえなかったのだが。まあ、そんなもんそんなもん。急に友達と来るとは思わないだろう。
うん、そうに違いない。
伊藤家のルール。この店は1人前でお皿にお肉が6枚乗っているのがデフォルトなので、大体色んな部位のお肉を1人前ずつ頼み、1人1枚食べたあと、ジャンケンをして勝った人が最後の1枚を食べられることになっている。これは思春期だろうが反抗期だろうが関係なく毎回行われてきた勝負。誕生日だろうがその日の主役だろうが食べたければ強制参加。もちろん迷惑のかからない声量で。来るたびにじゃんけん大会をするので、たまに父が「お腹いっぱいだから」と譲ってくれてジャンケンをぜずにいると、女将さんに「あら、今日はジャンケンないんですね、寂しいわぁ」と言われたことがあった。今までの戦いを聞かれてたと知ったとき、家族みんなおんなじ顔で俯いた。
つい最近も、弟の就職祝いに家族揃っていつもの焼肉店を訪れたのだが、なんとお肉が1枚減って1皿5枚に変わっていた。昨今、食材の高騰で売り上げを保つのが難しいのだろう。これはしょうがない。むしろ変わらずこだわりの美味しいお肉をお安く提供してくれて、本当にありがたいことだ。
弟がぼそっと「もうジャンケンする必要ないね」と呟いた。私は「平和でいいね」と言いながら込み上げる寂しさを、ハラミと共に白米で流し込んだ。

これは懐かしの寿司。
回転寿司もいいけどもちろん回らないお寿司も好き。

関連リンク

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