寡婦年金制度とは?条件や遺族年金との違いをわかりやすく解説の画像はこちら >>


寡婦年金制度とは、夫を亡くした妻に対して年金を支給する制度です。ただし、受け取るには亡くなった夫が国民年金の第1号被保険者として一定期間保険料を納付していることや、亡くなった夫と継続して一定期間婚姻関係にあるなどの要件を満たさなければなりません。



配偶者を亡くしたあとに、生活に関する不安を抱えることがあるのではないでしょうか。今後の生活を支えていくために、「自分が寡婦年金制度の対象となるのか」「他の年金制度と何が異なるのか」などを理解しておくことが大切です。

本記事では、寡婦年金制度とはどのような制度なのかを説明したうえで、注意点についても詳しく解説します。

寡婦年金制度とは

寡婦年金制度とは、個人で事業を営む夫などが亡くなった場合に、妻が受け取れる可能性がある年金制度のことです。ここから、寡婦年金制度の支給額や支給期間について、詳しく解説します。

支給額

寡婦年金の支給額は、夫が受け取る予定であった老齢基礎年金額の4分の3です。例えば、夫が受け取る予定であった老齢基礎年金額が84万円の場合、夫を亡くした妻は63万円の寡婦年金を受け取れる可能性があります(84万円 × 3/4)。

なお、老齢基礎年金とは、納付期間の条件を満たしている場合に生涯受け取れる年金のことです。1956年4月2日以降生まれの場合、以下の計算式を使って老齢基礎年金を計算します(2026年4月1日時点)。

・老齢基礎年金額 = 847,300円 × (保険料納付済月数 + 全額免除月数 × 4/8 + 4分の1納付月数 × 5/8 + 半額納付月数 × 6/8 + 4分の3納付月数 × 7/8) ÷ (40年 × 12月)

支給期間

寡婦年金の支給期間は、夫の死亡日の翌月(対象者が60歳未満の場合は60歳の誕生日前日の翌月)から、65歳になるまでです。自身の老齢基礎年金について受給権が発生するため、対象者の妻が65歳になった時点(65歳の誕生日を迎える前日の翌月)から寡婦年金の支給は受けられなくなります。

また、夫が亡くなった段階で妻の年齢が60歳未満の場合は、申請しても60歳になるまでは寡婦年金を受け取れません。

寡婦年金の受給要件

寡婦年金の受給要件は、以下の通りです。

・夫との婚姻期間が10年以上ある
・夫が第1号被保険者として10年以上保険料を納付している
・今まで夫が生計を維持していた

各要件について、解説します。



夫との婚姻期間が10年以上ある

亡くなった夫と10年以上継続して婚姻関係にあることが、寡婦年金を受給するための要件のひとつです。婚姻届は提出していなくても夫婦と同様の生活を営むなど、事実上の婚姻関係にある場合も「婚姻関係」としてみなされます。

一方、夫は寡婦年金支給の対象外です。亡くなった妻との婚姻期間が10年以上ある場合でも、「夫」は寡婦年金を受給できません。

夫が第1号被保険者として10年以上保険料を納付している

夫が国民年金の第1号被保険者として保険料を納付した期間や保険料免除期間が、10年以上あることも受給要件のひとつです。

第1号被保険者とは、国民年金加入者のうち20歳以上60歳未満の自営業者や農業者、学生などを指します。70歳未満の会社員や公務員などの厚生年金加入者は第2号被保険者、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収条件あり)は第3号被保険者のため、第1号被保険者には該当しません。

なお、保険料免除期間とは、学生で前年所得が一定以下で、在学期間中の保険料納付が猶予されている「学生納付特例期間」などのことです。例えば、夫が国民年金の第1号被保険者として保険料を納付した期間が8年間でも、別途学生納付特例期間が2年間ある場合は、寡婦年金を受給できる可能性があります。

今まで夫が生計を維持していた

夫の死亡当時に、夫によって生計が維持されていることも、寡婦年金を受け取るための要件です。原則として、以下のいずれも満たす場合に、「生計維持」に該当すると判断されます。

・生計を同じくしている(同居している)
・妻の前年収入が850万円未満(もしくは所得が655万円5,000円未満)

なお、別居している場合でも夫から妻に仕送りをしているケースなどでは、「生計を同じくしている」と判断されます。

寡婦年金制度と他の年金制度の違い

寡婦年金制度以外にも、家族が亡くなった際に一定額が支給される制度が存在します。混同しないように、ここで寡婦年金と遺族年金や死亡一時金の違いを押さえておきましょう。



遺族年金との違い

寡婦年金と遺族年金では、支給金額や期間、対象者などが異なります。

遺族年金とは、国民年金や厚生年金保険の被保険者が亡くなった際に、その被保険者によって生計を維持されていた遺族の所得を保障するための年金のことです。遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。

それぞれの概要を押さえておきましょう。

遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、亡くなった人に生計を維持されていた、「子のある配偶者」や「子ども」に支給する年金です。原則として、以下いずれかに該当する場合に支給されます。

・国民年金の被保険者が亡くなった
・国民年金の被保険者であった人が、日本国内に住所があるときの60歳以上65歳未満の期間に亡くなった
・老齢基礎年金の受給権者が亡くなった
・保険料納付済期間・保険料免除期間の合計期間が25年以上である人が亡くなった

遺族基礎年金の年金額は、「子のある配偶者」と「子ども」で異なります。それぞれの金額は、以下の通りです。

【子のある配偶者の場合】
1956年4月2日以降生まれ:847,300円 + 子どもの加算額(※)
1956年4月1日以前生まれ:844,900円 + 子どもの加算額(※)

【子どもの場合】
1人あたりの金額:(847,300円+2人目以降の加算額(※))/子どもの数

※1人目もしくは2人目の子どもの加算額:各243,800円、3人目以降の子の加算額:各81,300円

遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者(主に会社員・公務員)が亡くなった場合に、その遺族に対して支給する年金です。以下、いずれかに該当する場合に支給されます。

・厚生年金保険の被保険者が亡くなった
・初診日が厚生年金の被保険者期間中である病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなった
・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている人が亡くなった
・老齢厚生年金の受給権者であった人が亡くなった
・老齢厚生年金の受給資格を満たした人が亡くなった

寡婦年金は国民年金の第1号被保険者として10年以上保険料を納付している人の妻が対象であるのに対し、遺族厚生年金は厚生年金保険の被保険者の遺族が対象です。

死亡一時金との違い

死亡一時金は、支給対象者などで寡婦年金と異なります。

死亡一時金とは、保険料の掛け捨てを防ぐ目的で設けられている制度です。老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった人(※)と生計を同じくしていた遺族に対して、12~32万円が支給されます。



寡婦年金は妻のみが対象であるのに対し、死亡一時金は夫・子ども・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹も支給対象となる可能性がある点がポイントです。

※死亡月の前月までにおいて、第1号被保険者として保険料を納めた月数が36カ月以上あることが要件

寡婦年金申請の流れ

寡婦年金を申請する際の一般的な流れは、以下の通りです。

1. 死亡者の住民票の除票・受取先金融機関の通帳・戸籍謄本(※)・世帯全員の住民票の写し(※)・請求書の収入を確認できる書類(※)などを用意する
2. 年金請求書を取得する
3. 年金請求書に亡くなった人や申請者の情報、年金の受取口座などを記載する
4. 居住する市町村役場や年金事務所などに請求書と必要書類を提出する(電子申請も可能)

なお、年金請求書は日本年金機構のホームページや、市町村役場や年金事務所などで取得できます。

※マイナンバーを記入することで添付省略可能

寡婦年金を受ける際の注意点

「夫との婚姻期間が10年以上ある」などの要件を満たしている場合でも、以下いずれかに該当する場合は寡婦年金を受け取れない点に注意しましょう。

・亡くなった夫が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがある
・妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けている

また、年金を受ける権利は原則として権利が発生してから5年経過すると時効で消滅します。寡婦年金を受ける権利がある場合は、申請を失念しないようにしましょう。

寡婦年金の受給には様々な要件が設けられている

寡婦年金制度とは、夫を亡くした妻に対して年金を支給する制度です。ただし、妻が寡婦年金を受けるには、「夫との婚姻期間が10年以上ある」「夫が第1号被保険者として10年以上保険料を納付している」「今まで夫が生計を維持していた」などの要件を満たさなければなりません。

年金は日々の生活を支える重要な制度のため、要件などをあらかじめ押さえておきましょう。

参考:日本年金機構「寡婦年金」
参考:厚生労働省「[年金制度の仕組みと考え方] 第13 遺族年金」
参考:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。

2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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