起業家、ガストロノミスト(食の専門家)、サーキュラーエコノミー啓発者、シングルマザー。私には時々でさまざまな肩書が与えられてきた。
しかし、そのどれもが断片的で、私の本質を表しているとは思えず、違和感が残る。
 今年で半世紀を生きる。数えきれない経験と出会いで今の私が形づくられてきたが、立ち止まると、本来の感性や才能の一部を、知らぬ間に手放してきたのではないかと感じる。環境に適応する中で、自分の一部を静かに削ってきたのかもしれない。折り返し地点に立ち、何を成し、何を伝え、何に貢献し、どう生き切るのかと問う。ビジネスだけでなく、地域、人、家族、自然、神との関係、その全てを丁寧に生きたい。しかし、時間も知恵も体力も足りないと痛感している。
 コロナ禍で1歳の娘を抱え、「生きるため」に始めた事業は、今や10人規模へと育った。道のりは平たんではなかった。つまずき、傷つき、疑われ、裏切られ、賛美もされた。残金が4千円を切ったこともある。それでも、植物由来の新素材レザーの開発事業は未来に必要とされるという確信だけが、私を前へ押し続けた。

 投資家や前進を共にしたチーム、支えてくれた全ての方々が、今の私を成り立たせている。夢を共に実現してくれる人に出会うことは、砂浜で針を探すようなものだ。それでも、その存在に必ず出会えると、私はこの歩みの中で知った。
 この4月、取締役社長から取締役ファウンダーへ。母鳥がひなの巣立ちを見守るような心境だ。企業は生きもの。支えられ、試され、ぶつかりながら成長していく。私の役割は、創業者として沖縄から新しい素材と循環の価値を届け、子どもたちへ手渡すこと。沖縄は自然と共に暮らしを再編する場所へと変わる。
 これは、いわばPartnership for Tomorrow Alliance。未来のために人と人がつながり、共に育み、共に創る関係性だ。立場を越えて輪をつなぎ、うるま島のククルを愛と共に次の世代へ手渡したい。

(アナンティア取締役ファウンダー)
次回は古謝雄基氏(LANDO代表取締役CEO)です。
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