※本稿は、橘玲、大橋弘祐『難しいことはわかりませんが、1億円貯める方法を教えてください!』(文響社)の一部を再編集したものです。
■サラリーマンの収入の半分は税金
【橘】なぜ、会社員が若いうちにお金持ちになるのが難しいかというと、サラリーマンには税金と社会保険料の負担が大きいからです。
【大橋】それって毎月給料から引かれているやつですよね……。就職して、最初の給与明細を見たときは、「そんなに引かれるのか……」とびっくりしました。
翌年からは住民税も引かれて、「まだあったのかい!」とさらにびっくりしました。
【橘】日本の会社員の税負担はとても重く、お金持ちになるためには税金の負担を減らすことがポイントになります。
そのため、税金について理解を深めておく必要があります。
【大橋】でも、先生。税金なんて知ったところで何か意味があるんですか? できることは限られてるんじゃないですか。
【橘】たしかに会社員としてはそうです。
ですが、わたしが黄金の羽根と表現している方法を活用して、税制をハックするためには、税金のしくみを理解することが前提となります。
とはいえ、所得税など税制は、政治家や業界の利権が絡み合い、奇々怪々な制度ですので、細かい部分はおいておき全体像を理解しておけばよいと思います。
【大橋】わかりました。
■生涯で数千万円にのぼる「負担」の正体
【橘】まず、大橋さんはどんな税金を払ってますか?
【大橋】えーっと、所得税と住民税と、あと消費税とかですかね。
【橘】その他にも健康保険料や厚生年金など社会保険料があります。
会社員にかかる主な税金と社会保険料
税金と社会保険料は、まずこの4つを覚えよう!
■税金
・所得税 5%~45%(収入が多いほど税率が増える)
・住民税 10%
■社会保険料
・健康保険 10%(会社が半分負担)
・厚生年金 18.3%(会社が半分負担)
※すべておおよその額です
【大橋】健康保険や厚生年金って税金なんですか?
【橘】社会保険料は「税金ではない」という批判をよく受けますが、わたしは社会保険料も税金として扱うべきだと考えています。
実際、北欧の国などでは社会保障は税金で賄われています。日本の自治体の中にも、住民の納付意識を高めるために、「保険料」ではなく「保険税」という言葉を使っているところがたくさんあります。
そしてこの社会保険料が非常に高く、生涯で数千万円にものぼります。
■社会保険料「会社負担」のカラクリ
【大橋】でも社会保険料って、たしか、半分は会社が払ってくれてるんですよね?
だったら、そこまで悪いものではないんじゃないですか。一応、年金は払った分以上に戻ってくるという話を聞きますよ。
【橘】それにはカラクリがあります。
まず、会社が社会保険料を半分払ってくれていると言いますが、会社側はそれを人件費として扱っています。
つまり、大橋さんを雇うとき、大橋さんに払う給料と、会社負担分の社会保険料を含めて人件費を計算しています。
仮に大橋さんの年収が500万円だとすると、自分で払う社会保険料、会社負担の社会保険料がそれぞれ約70万円となります。
その場合、会社は「大橋さんには570万円の人件費が必要になる」と計算しているのです(図表1)。
【大橋】それって、会社が僕を雇うときは、「あいつに支払う給料は500万だけど、雇うには570万が必要だな」と考えているということでしょうか?
■厚生年金に隠された「不都合な真実」
【橘】はい。
ですから、会社は大橋さんに570万円、さらにはパソコンやデスク、交通費などの経費を加えた金額以上の利益を上げることを求めるはずです。一般に、「人件費のコストは給与の2倍」と言われています。
【大橋】え、働いた分の半分しかもらえてないんですか……。
【橘】話はこれだけでは終わりません。
社会保険料のうち、厚生年金には「不都合な真実」があります。
【大橋】厚生年金って、給料から毎月引かれている分が老後に「年金」として戻ってくるやつですよね……。
【橘】はい。厚労省から送られてくるはがき「ねんきん定期便」には、これまで納めた年金保険料として自己負担分しか記載されていません(図表2)。
それなのに政府は年金について「払った分以上のものが戻ってくる」と国民に説明しています(図表3)。
つまり、会社が負担している厚生年金の保険料は、まるごと国に没収されて、将来受け取る年金にはまったく反映されないのです。
■5000万円が高齢者のために強制徴収される
【大橋】え⁉ それって、僕らは「年金は会社が半分負担してくれてる」と思っていますが、将来もらえる予定の年金に、会社負担分は特に関係ないということですか?
【橘】そういうことです。税金を強制的に徴収される会社員はいかに分が悪いかわかると思います。
※毎年届く「ねんきん定期便」を見ると、個人が支払った保険料の約2倍が受け取れる計算になり、一見お得に思えます。しかし会社負担分も含めて考えると、20歳で納めた1万円が、45年後の65歳になっても「利回りゼロの1万円」として戻ってくるだけの、極めて投資効率の悪い金融商品といえます。
【大橋】そんなことになっているとは思いませんでした……。
【橘】続いて健康保険についてです。
健康保険料は、収入が高い人ほど多く徴収される仕組みになっています。
しかし、どれだけ多く健康保険料を支払ったとしても、病院で特別な手厚い医療を受けられるわけではありません。そのため、高収入であればあるほど、サラリーマンにとって負担が重くなっていくのが現実です。
このように、社会保険の制度は、一生懸命働いた人ほど報われにくい仕組みになっています。
■社会保険料の増額は、政治的に「簡単」
【大橋】改めて、給与明細を見ましたが、かなり社会保険料や税金が引かれてますね……。
【橘】これからも上がっていく可能性は高いと思います。
特に社会保険料は上がりやすいと思います。
【大橋】まだ、上がるんですか……。
【橘】所得税や住民税、消費税など税金を上げるときは国会で審議されることが、法律で義務付けられています。そのため消費税を2%上げるだけでも、政権が倒れるほどの猛反発が起きます。
「一強」と言われた安倍政権でも、消費税アップは5年半もかかりました。
【大橋】たしかに、消費税が上がるとき、国会で与党と野党がもみ合う映像をニュースで見た気がします。
【橘】一方、健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料は厚労省の一存で上げることができます。
【大橋】厚労省が勝手に上げられるんですか⁉
【橘】基本的にはそうです。社会保険料の増額は、政治的に「簡単」なうえに、給与から天引きされて実感しにくいので、サラリーマンが狙いうちされるのです。
その結果、社会保険料率はこの20年で約30%もアップし、現在は月給とボーナスを合わせた総年収の約3割が保険料として徴収されます。サラリーマンが支払う保険料は(会社負担分も含めて)年収500万円で年140万円、年収700万円で年200万円程度になります。
【大橋】そんなに増えてるんですか……。
【橘】はい。これからももっと増えることが予想されます。
だからこそ、社会保険料も含めて税金の仕組みをよく理解しないといけません。
■橘玲が勧める「フリーエージェント」とは
【大橋】でもですよ……。税金や社会保険料をたくさん取られているとしても、それを知ったところでどうするんですか?
できることなんて、「ふるさと納税」か「iDeCo」くらいしかないですよね。
ふるさと納税
寄付先の自治体を選び、返礼品をもらえるうえに、税控除が受けられる制度。
iDeCo
個人型確定拠出年金。毎月の掛金が所得から控除される制度。
【橘】そうです。
ただし「ふるさと納税」と「iDeCo」は所得税や住民税といった税金を減らすことには効果がありますが、肝心の社会保険料を減らせるわけではありません。それもサラリーマンがお金持ちになるのが難しい理由の一つです。
ですから、私は20年以上前から、税金や社会保険料を惜しみなく奪われているサラリーマンではなく、フリーエージェントとして働くことをすすめてきました。
【大橋】フリーエージェントですか……?
【橘】フリーエージェントとは会社など組織に縛られず、個人として自由に働くことを指します。
アル・ゴア米副大統領の首席スピーチライターから作家に転じたダニエル・ピンクが提唱したものです。
フリーエージェントは会社に所属せず、仕事の内容や一緒に働く相手、働く場所や時間も自分で決められます。逆に言うなら、嫌な仕事はしないし、嫌な相手とも仕事をしないということです。
また、自ら納税を行うため、税制上のメリットを受けやすい立場にあります。
フリーエージェント
会社などの組織に所属しない働き方。自分の仕事や一緒に働く相手、働く時間や場所を自分の責任で選ぶ。
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橘 玲(たちばな・あきら)
作家
1959年生まれ。早稲田大学卒業。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラーに。05年の『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補に。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。著書に『「読まなくてもいい本」の読書案内』(ちくま文庫)、『テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想』(文春新書)、『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』(幻冬舎文庫)、『DD(どっちもどっち)論 「解決できない問題」には理由がある』(集英社)など多数。
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大橋 弘祐(おおはし・こうすけ)
作家・編集者
立教大学理学部卒業後、大手通信会社の広報、マーケティング職を経て現職に転身。初小説『サバイバル・ウェディング』(文響社)が日本テレビの地上波ゴールデンタイムでテレビドラマ化。『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社、山崎元との共著)など「難しいことはわかりませんがシリーズ」が70万部を超えるベストセラーになる。『漫画 バビロン大富豪の教え』の企画・脚本も手掛ける。
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(作家 橘 玲、作家・編集者 大橋 弘祐)

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