※本稿は、奥田弘美『それ、すべて過緊張です。』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■「3月~4月」は要注意
あらゆる変化はストレスの原因になります。
このことを理解していないと、無意識のうちに過緊張が起こってしまうことがよくあります。
「過緊張とは、自律神経系の交感神経が、ストレスにより過度に緊張し続ける状態のこと。
過緊張になると、イライラや不安感が高まり、夜になってもリラックスできず気が休まらない、気になることが繰り返し浮かび寝付けないなど、不快な症状が発生し、長引くと心身の不調に発展することがあります。
特に注意したいのが、3月~4月にかけての時期です。
この時期は、入学・卒業、就職、異動、引っ越し、組織やグループの人員の入れ替えなどの社会的変化が非常に多発する時期です。
ほとんどの会社組織が、3月末で期末を迎え、4月から新期がスタートとなります。それに合わせてグループの再編や異動が行われます。
自分が異動になって新たな部署での仕事がスタートする場合は、仕事や人間関係に慣れるまで、当然ながらハイレベルの緊張状態が続きます。自分が異動にならなくても、周りの上司や部下が異動になって慣れ親しんだ人がいなくなったり、新たな同僚や上司との付き合いが始まったりします。自分の周りの人間関係の変化も、大きな緊張が伴います。
■春先~6月にかけてメンタル不調が発生しやすい
さらに加えて、日本は学校関係がすべて3月卒業&4月入学、4月から新学期スタートのシステムで動いています。子供を持つ人たちは、プライベートでも子供関係の行事が多発し、通常より多忙になり、気を張る時間が多くなってしまいます。
お子さんがいない人にとっても、地元コミュニティーや趣味関係のグループの役員交代が3月末に行われて抜擢(ばってき)されたりすると、新たな活動が加わることがあります。
職場での変化による緊張に加え、プライベートの生活リズムが変化すると、心と身体の休息時間が十分に取れなくなり、過緊張による疲れが知らず知らずのうちに蓄積していってしまいます。
こうした社会的変化に加えて、3月4月は、季節の変わり目で、日々の気温差が非常に激しい時期であり、ただでさえ自律神経系に負担がかかっている時期でもあります。
自律神経系は、血流や汗や筋肉の緊張を変化させて体温の調節を行っています。気温差が5度以上ある「季節の変わり目」の時期は、通常よりも自律神経系にとって仕事が増えるため、調子が乱れやすくなるのです。
日本の3月~4月は、社会的イベント、行事が目白押しで過緊張が発生しやすく、かつ、目まぐるしく気温や天気が不安定となるため、この時期から6月ごろにかけては、自律神経失調症やメンタル不調が発生しやすくなる代表的な時期といえるでしょう。
■子供の卒園・入学で忙しい状態が続いた
ここで、私が経験した具体的なケースを一例ご紹介しましょう。
N子さんは、食品メーカーの経理部に勤める3歳。私生活では今年6歳になる子供を育てるワーキングマザーです。
ふだんから育児時短制度を利用して午後4時に退社し、子供を保育園に迎えに行き、帰宅後は家事と育児に没頭するという忙しい生活をしています。経理部は3月が決算期で繁忙期なのですが、今年はあいにく同僚が2月から体調を崩して入院してしまったため、N子さんは上司にお願いされて、時短を返上して午後5時まで仕事をすることになりました。
保育園には延長保育をお願いして、駆け足で保育園に子供を迎えに行き、帰宅後も時間に追われながら家事をするというあわただしい3月となってしまったのです。
また子供が保育園を3月に卒園し地元小学校に入学するため、土日も卒園の準備や入学の説明会で保育園や小学校に行ったり、たくさんの就学準備物の買い物に出かけて持ち物を整えたりと、通常よりもプライベートも忙しい状態が続きました。
N子さんは、もともと几帳面な性格で、子供が小学校に持っていく道具袋や上履き入れは、自分の母がやってくれたように、手作りで持たせてあげたいと考え、苦手な裁縫にも励んだために、土日の睡眠時間が通常より2時間ほど短くなっていたといいます。
■小学校のPTA役員に選出されてしまう
ようやく3月の繁忙期が終わり、4月からは無事に子供が小学校に入学したものの、新たに始まった小学校のPTAや学童保育の説明会などの学校行事が続きます。
さらにN子さんは、PTAの役員にも選出されてしまったため、PTAの集まりにも何度か出席を余儀なくされ、見知らぬ人たちとの緊張した時間を過ごすことが増えました。
加えて職場では、直属の上司が異動でいなくなり、新しい上司が就任。今までの仕事のシステムが見直され、大きな変更が相次ぎ対応に追われることになり、仕事の密度が急激に増えたため、昼休みの休憩返上で時間に追われて仕事をこなす日々が続くようになりました。
■5月の連休明けから身体に異変
5月の連休が明けたころから、N子さんは朝起きても身体の疲れが取れなくなってきて、持病のアトピー性皮膚炎も悪化してきました。
37度前後の微熱も続くようになったため、内科を受診するも、血液検査には異常がないとのこと。
そうこうしているうちに、N子さんは会社に何度か遅刻してしまうことが増え、仕事中も頭が回らずミスをするようになって きたため、上司からの勧めで産業医面談を受けにきました。
■明らかに過労状態
「いつも時間に追われていて、あれもしなくちゃ、これもしなくちゃと気ばかり焦るんで すが、身体と頭が重だるくて、仕事や家事が一向に進まないんです。だからイライラしたり、できない自分が嫌になって落ち込んだりと、感情の浮き沈みも激しくて……。微熱もずっと続いています」
「新しい上司の下でシステムも大きく変わって、みなピリピリしていて。仕事中も気が全 く抜けなくなりました」
「PTAの役員なんかやりたくなかったのにクジで強制的に入れられてしまったんです。働いている人にお構いなく、平日の真昼間から平気で集会を開催されるので、そのたびに職場に有休のお願いをするのも気が重くて。PTAの連絡がくるたびに動悸がするようになってきました」
とN子さんは、疲れ切った表情で話してくれました。
N子さんは、3月の繁忙期でのイレギュラーな対応に加え、4月からのお子さんの小学校入学、新しい上司による仕事システムの改変といった、変化につぐ変化によって、過緊張状態が続き、明らかに過労状態となっていました。
■「完璧主義」で「真面目」だから頑張ってしまう
N子さんの性格は、「完璧主義」でかつ「真面目」。上司からの命令や、自分で決めたマイ・ルールをきちんと守るために、睡眠や休憩を犠牲にしても頑張ってしまいます。
3月の忙しい繁忙期に残業返上で頑張っているときにもかかわらず、さらにお子さんの就学準備を自分の望むレベルで仕上げたいと、夜なべして裁縫をしてしまいました。
かつ「NOと言えない自己犠牲タイプ」も入っていて、上司の残業返上のお願いを受け入れ、嫌々ながらもPTAの役員を引き受けてしまい、平日の集まりにも無理して参加しようと頑張ってしまったことで、さらに心身に疲れやストレスを溜めこんだようです。
■誰もが過緊張になりうる
過緊張症状が続き過労状態になると、N子さんのように持病が悪化したり、睡眠や食欲に影響が出てきたりします。これが悪循環になって、集中力が落ちてミスが増える、仕事や家事のスピードがどんどん落ちていってしまうなどの症状も加わっていったのでした。
私は、心療内科クリニックあてに紹介状を書き、N子さんには、過労状態を回復し体調を整えるために休職を勧めました。N子さんは心療内科クリニックを素直に受診され、「自律神経失調症」の診断のもと、そのまま3カ月ほど休職されました。
復職時には、N子さんはすっかり元気になり、「身体の疲れがとれて、頭もしっかり回るようになり、家事もテキパキできるようになりました。休み中に、PTAの役員は体調不良を理由に辞退することができました。これからは自分に無理をかけすぎずに、いたわりながら働きたいと思います」と笑顔を見せてくれました。
このN子さんのように、変化が次々と押し寄せてきた場合、誰もが過緊張になる可能性があります。「変化が多い時期は、要注意」を心に留めて、たとえ「お子さんの入学や卒業」「結婚や出産」「栄転」などの嬉しい変化であっても、決して無理をしないことが大切です。
休息や睡眠をできるだけ確保して、さらなる変化を重ねることはできるだけ避けることがポイントです。
手を抜けるところは潔く手を抜いたり、NOというべきときにはNOと断ったりして、「休息やリラックスの時間」を奪われないようにしましょう。
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奥田 弘美(おくだ・ひろみ)
精神科医 産業医
1967年生まれ。約20年前に中村恒子先生に出会ったことをきっかけに、内科医から精神科医に転向。現在は都内にて診療および産業医として日々働く人の心身のケアに取り組んでいる。執筆活動も精力的に行い『一分間どこでもマインドフルネス』(日本医療情報マネジメントセンター)など著書多数。今回、念願であった恩師・中村氏の金言と生きざまを『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(すばる舎)にまとめて出版した。
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(精神科医 産業医 奥田 弘美)

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