株式投資で利益を得るための方法は古くから多くの人が研究してきた。経済評論家の頼藤太希さんは「大きく3つの流派があるが、いずれも完璧な方法とはいえない。
しかし、お金を増やすことが主な目的なら、選ぶべき投資手法は一択といえる」という――。
■完璧な投資法は存在しない
投資とは、将来増える資産にお金を投ずることです。
ただ投資と一言でいっても、金融商品はさまざまなものがあります。それぞれに特徴があり、メリット・デメリットがあります。
完璧な金融商品があれば、それに投資するだけで良いので手っ取り早いのですが、残念ながらそんな金融商品は存在しません。完璧な投資方法があれば、それを真似すれば良いですが、そんな方法もありません。
株式投資を例に自分がどんな投資をすれば良いのかを考えてみましょう。
株式投資で利益を得るための方法は、古来多くの人が研究してきました。その研究結果は、大きく3つの「流派」に分類できます。テクニカル派、ファンダメンタルズ派、インデックス派です。それぞれ、一言でまとめると
テクニカル派……チャートや指標からタイミングをとらえて投資

ファンダメンタルズ派……業績や財務情報から投資先を選んで投資

インデックス派……当たり外れをなくした平均点を狙う投資
です。
各流派が重視するポイントは、それぞれ異なります。
世にあまたある投資本も、どの流派の人が書いたかによって、主張が異なります。
図表1のように、他の流派を否定するような内容になっていることもあります。投資本を何冊か読むと、同じ物事でも捉え方や要点がまったく違う場合があることに気づくでしょう。
特に投資初心者は何が正解なのかがわからなくなってしまうかもしれません。
ここで3つの流派それぞれの考え方やメリット・デメリットを確認しておきましょう。
■テクニカル派は株価上下の理由に興味なし
テクニカル派は、株価の動きを研究して値上がり益を狙います。テクニカル派の投資家は、過去の値動きを記した「ローソク足」などが並んだチャートを分析して、次に値上がりする銘柄を探し、タイミングを計って投資します。
株価は、基本的にはその企業に関する情報をもとにして動きます。売り上げや利益が上がり、今後も上昇していくことが見込まれる業績の良い銘柄の株価は上がる傾向にあります。反対に、赤字経営が続いて今後も改善が期待できない業績の悪い銘柄の株価は下がる傾向にあります。
ただテクニカル派はこうした話にほとんど興味がありません。
テクニカル派が知りたいのは、業績や今後の事業内容や世界情勢ではなく、「今日値上がりするか」。
なぜなら、短いスパンでの売買では、他の投資家の動向が値動きにより大きな影響を与えるからです。
イギリスの有名な経済学者、ケインズは株式投資を「美人投票」にたとえました。美人投票で誰が選ばれるかを当てたいのであれば、自分が一番美人だと思う人を選んでいてはだめ。「みんなが美人だと思う人」を選ぶ必要があるという考え方です。
株もそれと同じで、自分が一番欲しい株よりもみんなが欲しいと思う株を選ぶことが大切です。テクニカル派の人は、株価のチャートやさまざまなテクニカル指標を利用して他の投資家との間で心理戦を展開し、値上がりする銘柄を読み合うのです。
■チャートやテクニカル指標で未来は読めない
実際に株価のチャートやテクニカル指標で将来の株価を読むことができるのでしょうか。
株価のチャートには一定期間の値動きを示すローソク足が記載されています。このローソク足の高値のところを結んだ線(トレンドライン)をローソク足が下から上に突き抜けた場合、「トレンドブレイク」といって買いのシグナルだとされています。
確かに、これまでの高値の壁を突き破って上昇したのですから、その後さらに勢いよく上昇しそうな感じもします。図表2のとおり、うまくいく場合は確かにあります。
しかし、実際はそんなに簡単なものではなく、すぐに元に戻ってしまったり、いっそう値下がりしてしまったりすることもよくあります。

■テクニカル指標には限界がある
トレンドブレイクしたとして、その後どうなるかを的確に見分ける方法はありません。
テクニカル派の解説書には「ダマシ(予想どおりの値動きにならないこと)もあるので要注意」などとよく書かれています。おそらく、説明がつかないからでしょう。しかし要注意と言われても、注意しようがありません。テクニカル指標の限界を感じます。
テクニカル派が参照するテクニカル指標には、ほかにもいろいろあります。
株価上下のトレンドを追いかける「トレンド系」のテクニカル指標としては移動平均線・ボリンジャーバンド・一目均衡表、相場の過熱感(買われすぎ・売られすぎ)をはかる「オシレーター系」のテクニカル指標としてはRSI・ストキャスティクス・MACDなどが知られています。確かに、それらが「はまる」タイミングは存在するものの、ダマシもまた存在しますし、完全ではありません。
■成功するデイトレーダーは5%
こうお話しすると「株価のチャートやテクニカル指標を用いて、大きな利益を上げたデイトレーダーもいるじゃないか」と思われる人もいるかもしれません。
しかし、実際にやろうとするとうまくいかないことがほとんどです。株価のチャートやテクニカル指標の形は一見同じようでも、そのときそのときのより細かな状況は異なります。つまり、再現性がないことが多いのです。

メディアに出てくるデイトレーダーは、ほんの一握りだということを忘れてはいけません。あまたいるデイトレーダーのなかで、市場で生き残れるデイトレーダーは5%程度といわれます。その裏には、95%の退場者(敗者)がいます。
成功したデイトレーダーも、すべてのトレードで利益を出すことは不可能。市場から退場するほどの痛手をたまたま負わなかっただけで、損をすることもたくさんあります。
株価のチャートは、過去の値動きの動向を読み取るのには役立ちます。しかし、将来の動向を読み取るのには役立たないというのが、私の結論です。
■ファンダメンタルズ派は割安度を見る
ファンダメンタルズは、国や企業の経済状況を指す言葉。株式投資のファンダメンタルズとは、たとえば各社の業績や政治・経済・国際情勢などの情報を指します。
ファンダメンタルズ派は、各企業の本質的価値をもとに、適切な株価(理論株価)が算出できるという考えを持っています。そして、現在の株価が理論株価よりも割安になったときにその銘柄を買い、値上がりするまで保有することで、利益を得ようとします。
企業の本質的価値は、財務諸表の売り上げや利益はどうなっているか、EPS(1株当たり利益)やROE(自己資本利益率)はどうなっているか、他社にない独自の製品やサービスを生み出せそうか、参入障壁が高いかどうかなどを踏まえて算出します。

たとえば、理論株価が3000円のある銘柄が1000円で売られていたとします。この場合、いずれこの銘柄は3000円になるだろうと考えて投資をおこなうのです。こうした投資のことを「バリュー株投資」といいます。
■ファンダメンタルズにも弱点がある
企業の価値は世の中に「付加価値」を生み出しているならば、向上していくはずです。企業価値が高まり、収益が増えれば増配の期待も高まります。自ずとその企業に投資をしたい人が集まり、株価は上昇していくでしょう。
しかし、増収増益していれば必ず株価が上がるのかといえば、残念ながらそうとは限りません。一見順風満帆に見える銘柄でも、ひとたび何らかの問題が発生すれば、株価は大きく下落しますし、業績も悪化してしまいます。
たとえば小林製薬(4967)は、26期連続で配当金の金額を増やす「増配」を続けている企業です。2026年12月期では27期連続の増配も発表しています。しかし、2024年に同社の「紅麹」の成分を含むサプリメント製品を摂取した人が腎臓の病気を発症するという問題が発生し、商品の自主回収が行われたのです。発表直後、株価は6056円から5056円へと1000円下落しました。

のちに「意図しない成分の混入が原因でほぼ間違いない」という発表が行われましたが、同社のサプリメントを含む食品カテゴリーの売り上げが急減。2024年12月期の決算では売上高が4.5%減の1656億円、営業利益が3.6%減の248億円と、減収減益になりました。さらに、127億円あまりの特別損失を計上したことにより、当期純利益(最終的な利益)は50.5%減の100億円となっています。
■データの捉え方で解釈が変わる
テクニカル派はもちろん、ファンダメンタルズ派であっても、こうした事態を予測することは正直不可能でしょう。
小林製薬の株価は、本稿執筆時点の4月16日の終値では、5927円と以前の水準近くまで回復しています。紅麹の問題の発覚後に株価は急落しましたが、それによって株価が割安になったと判断されたら、「悪材料出尽くし」などと言われて買われることがあります。
データの捉え方ひとつで解釈が変わってしまうところも、ファンダメンタルズ投資の難しさです。
テクニカルとファンダメンタルズ、ベターな銘柄を選ぶときにどちらを重視するか(どちらが大事か)と聞かれたら、筆者は「ファンダメンタルズ」だと答えます。
個別株投資は面白いです。読者の皆様にはぜひチャレンジしてほしいと思います。
■インデックス投資は「平均点を狙う投資」
投資の目的は、お金を増やすこと。難しいことはせず、感情に左右されずに、平均点が取れる方法があれば、それで良いのではないでしょうか。
実は、結論はもう出ています。それは、株式市場全体に広く投資できるインデックスファンドに長期間投資をすることです。
市場全体への投資が正しい理由は、「ファイナンス理論」という研究が進むにつれて明らかになってきました。ファイナンス理論は、統計学や経済学、数学などを活用してベターな資産運用の方法を考える理論です。
ファイナンス理論の先駆者として名高い米国の経済学者、ハリー・マーコウィッツ氏が提唱した理論に「現代ポートフォリオ理論」があります。ポートフォリオとは、資産の組み合わせのことです。
■リスクを下げてリターンを狙う方法
投資家はリターンが同じであればなるべくリスクを下げたいと考えるはずです。また、リスクが同じであればなるべくリターンを高くしたいと考えるでしょう。それが投資家にとってもっとも有利だからです。
縦軸に各金融商品から今後得られるリターン(期待リターン)、横軸に各金融商品のリスクをとったグラフをつくります。リスクとリターンには比例の関係があるのですから、おおむね左下から右上に向かってプロットされたものができます。
また、各金融商品の値動きのタイミングは異なる傾向にあります。たとえば株と債券は逆の相関関係にあり、株が値上がり(値下がり)すれば債券が値下がり(値上がり)します。金融商品間の相関には1から-1の間で示される「相関係数」というものがあり、1に近いほど同じ値動き、-1に近いほど逆の値動きをすることを示します。
■最も効率のよい資産配分
期待リターン・リスク・相関係数の異なる資産を組み合わせたさまざまなポートフォリオをつくると、「同じリターンでリスクがもっとも小さい」資産配分や、「同じリスクでもっともリターンが高い」資産配分の組み合わせができることがわかりました。このポートフォリオをつないだ線を「効率的フロンティア」(有効フロンティア)といいます。
もしも投資家がみな現代ポートフォリオ理論に基づいて合理的に行動しているならば、マーケットポートフォリオは、すべての投資家が選択するリスク資産のポートフォリオのなかでもっとも効率的なポートフォリオとなります。
具体的には「株や債券など、世界中の市場にあるリスク資産に、それぞれの時価総額の比率で投資するポートフォリオ」。
つまり市場全体に投資することがもっとも効率的だと結論づけたのです。
現代ポートフォリオ理論は、今なお金融の世界で幅広く利用されています。1990年には、この功績が認められて、マーコウィッツ氏はノーベル経済学賞を受賞しました。
■株式市場全体への投資なら「オルカン」でOK
「株式市場全体に広く投資したい」というと一見大変そうですが、これは手軽に実現できます。世界の株式市場全体に投資するなら、全世界株式型インデックスファンドを利用すれば良いからです。
全世界株式型インデックスファンドは文字どおり、日本を含む全世界の株に低コストで手間なく分散投資ができる投資信託。「FTSE Global All Cap Index」(FTSE GACI)や「MSCI All Country World Index」(MSCI ACWI)といった全世界の株式市場をカバーする指数との連動を目指す商品です。世界市場のカバー率はFTSE GACIが約98%、MSCI ACWIが約85%となっているため、1本買うだけで誰もが簡単に全世界の株式市場の「平均点」を取ることができます。
全世界株式型インデックスファンドで人気があるのは、MSCI ACWIと連動を目指して運用される「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」。「オルカン」の愛称で投資家に知られていて、純資産総額も10兆9816億円と、本稿執筆時点の2026年4月16日では日本で最も大きいファンドとなっています。保有中にかかるコスト「信託報酬」も年0.05775%と、超低コストで投資ができます。
オルカンを買えば、個々の株価のチャートやテクニカル指標を見る必要もありませんし、ファンダメンタルズの細かな情報を確認する必要もありません。
■投資では「足るを知る」が重要
株ならば、銘柄によっては短期間で2倍、3倍と値上がりすることもありますが、インデックスファンドへの投資の成果は、市場平均と同様です。インデックスファンドの投資先は幅広く分散されています。当然そのなかには、値上がりする銘柄もあれば値下がりする銘柄もあります。そうやって上下を繰り返しながら、全体として値上がりを目指す方法です。長期的には市場が拡大して株価が上がり、利益が得られる可能性が高いとはいっても時間はかかるでしょう。
インデックス投資は正直、退屈です。コツコツ定期的に投資して、利益が積み上がるのを待つだけですから。その様子を見て、テクニカル派やファンダメンタルズ派が「平均点しか取れない」「パフォーマンスが低い」「時間がかかる」と指摘するのも、ある意味理解できます。
テクニカル派やファンダメンタルズ派を否定するものではありません。勝ちへのこだわりや、投資の面白さを考えるならば、両手法に分があるでしょう。
ただ、多くの人にとって投資の最重要目的はワクワクすることではなく、お金を増やすこと。
難しいことはせず、平均点が取れる方法は、株式市場全体に広く投資できるインデックスファンドに長期間投資をすること。これは誰もができる投資方法です。
感情に左右されずに投資を続けるには、「足るを知る」が重要です。
投資の成果で平均点が取れることは決して悪いことではありません。増えれば良いのですから、充分なのです。

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頼藤 太希(よりふじ・たいき)

経済評論家・マネーコンサルタント

Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など書籍110冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。X(@yorifujitaiki)

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(経済評論家・マネーコンサルタント 頼藤 太希)
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