ゴールデンウィークにじっくりと味わいたい感動作の一つ、綾瀬はるか主演、石井裕也監督の『人はなぜラブレターを書くのか』(公開中)。2000年3月8日に発生した地下鉄脱線事故で犠牲となった高校生・富久信介さんにまつわる実話に着想を得た物語だ。


 事故から20年後の2020年に遺族のもとへ届いた1通のラブレター。差出人は、かつて信介さんと同じ電車に乗り、密かに想いを寄せていたという女性だった。1通の手紙から浮かび上がるのは、青年が生きた証と、時を超えてつながる人々の想い。観る者それぞれの記憶や大切な人への気持ちを呼び起こす、静かな感動作となっている。

 ラブレターを書く主人公・寺田ナズナを綾瀬、17歳のナズナを當真あみ、高校生・富久信介を細田佳央太、ナズナの夫・良一を妻夫木聡、信介の父・隆治を佐藤浩市、信介が通うボクシングジムの先輩・川嶋勝重を菅田将暉が演じている。

 同作の公式サイトの感想投稿には2000件を超えるコメントが寄せられ、大切な人を思いながら鑑賞したという声や、「会いに行く勇気をもらった」といった体験談も多く、観客の心を強く揺さぶっている。

 観客の間で最も多く声が上がっているのが、ナズナと良一が涙を流すシーンだ。娘に心配をかけまいと、誰にも打ち明けられない秘密を抱えながらも葛藤し、前を向こうとするナズナ。その思いを受け止め、不器用ながらも妻とともに秘密を抱えながら子どもの成長を見守る良一――。2人の涙の場面では、劇場でも涙する観客が続出している。

 さらに、学生時代のナズナが信介の死を知り、自宅で涙する姿や、雨の中、遠くから葬儀を見つめるシーンも印象的。愛する息子を突然失い、絶望を隠しきれない両親の姿は、観る者の心に深い悲しみを刻みつける。


 一方で、ボクシングに打ち込む信介と川嶋の生き生きとした姿が描かれる中、信介の訃報を知り呆然とする川嶋が、やがて前を向き、仏壇の前で世界チャンピオンになる夢を誓うシーンも胸を打つ。思いの連鎖が静かに広がっていく展開に、涙なしでは見られないという声が相次いでいる。

 また、スタジオジブリの鈴木敏夫氏は、4月22日に代官山 蔦屋書店で行われたトークイベント「父と娘の映画談義」で本作に言及。すでに何度も鑑賞していることに加え、2回目はSEと音楽のみの制作段階の映像でも本編を観たことを明かし、「それもすごくよかった」と語った。風光明媚な映像とあわせ、作品の持つ力に驚かされたという。さらに鑑賞後には、「届く前から、もう恋は始まっている。」と、多くを語らずとも本作の核心を突くコメントを寄せている。
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