※本稿は、古田雄介『それ、死後もお宝ですか?』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
■明治神宮に5万体が集まる
魂抜きの需要は、ここ数十年ほど安定して上昇している感がある。東京都大田区大森にある天台宗系単立の寺・本寿院で人形供養が始まったのは2002年のことだ。
関東圏の人形供養でもっとも動員力のある「明治神宮人形感謝祭」も1989年(平成元年)からと、比較的新しいものだ。戦後どころか高度経済成長期にも存在していなかった。
第1回の人形感謝祭ではおよそ6000体の人形が納められたが、主催の「人形に感謝する会」によると、2024年に開催した第36回では約4万5000体に及んでいる。さらに2025年に開かれた第37回の会場テントに掲げられた解説文には「本日納められる人形の数5万体以上が見込まれています」と書かれていた。
コロナ禍等もあり、単純な右肩上がりを続けていたわけではないものの、催し物としてすっかり定着しているのは確かだ。
■アマゾンで買える「お焚き上げサービス」
そして、最近では通販サイト大手のアマゾンを通して利用できる供養サービスもある。草分けのひとつとして知られているのが、ベンチャー企業のクラウドテンが2018年から提供している「みんなのお焚き上げ」というサービスだ。
アマゾンや直販サイトで、お焚き上げしてほしいモノに合わせてサイズや形状を選んでサービスを購入すると、キットが届く仕組みだ。
■幅+高さ+奥行きの計100cmで6600円
メニューは送るモノの大きさごとに、レターサイズから段ボールサイズまで取り揃えている。たとえば、少し大きめのぬいぐるみを数体送るなら、「ボックス100」という6600円のパックを購入するのがちょうどいい。宅配便用の伝票等が入ったキットが届くので、幅+高さ+奥行きで合計100センチまでの段ボールにぬいぐるみと申込書を入れ、伝票を貼って送ればいい。後は所定のスケジュールに従って、提携先の神社で祈禱とお焚き上げを施してくれる。儀式の様子は動画で確認でき、すべて済んだ後はお焚き上げ証明書が発行されるという流れだ。
代表取締役の山盛潤さんによると、依頼は2025年12月までに注文ベースで4万5000件に上り、依頼ペースは緩やかに上昇傾向にあるという。利用者の約7割が女性で、年代別のボリュームゾーンは30~50代。このあたりの傾向はサービス開始時から大きく変化していないそうだ。この男女比と年代比は、先の明治神宮人形感謝祭を見物したときもだいたい同じくらいだと感じた。大切にしてきた持ち物を丁重に手放したいと考える中心層に届いているのだろう。
■人々が燃やしてほしいモノ
一方で、注文が多いタイプは徐々に大型化しており、レタータイプよりボックスタイプが支持を集めているとのことだ。
モノの来歴でみると、家族の遺品よりも、依頼者が所有していた思い出の品が多いという。具体的にはお守りや人形、写真アルバムや手紙、財布や鞄などが定番だが、近年はそこに亡くなったペットの着物やオモチャ、さらにはアクリルスタンドや装飾うちわといった〝推し活〟グッズも加わるようになってきたそうだ。
これはごく自然なトレンドだと思えた。ペットが使っていたモノを供養したり形見を大切にしたりする価値観は、終活ブームと時を同じくして市民権を得てきたところがある。それでも人間と同等の供養を求める人ばかりではなく、ちょうどいい具合の儀式性を有するサービスの需要が増えているのではないか。
また、“推し活”はまさしく愛着を楽しむ営みであり、多くは公共性を気にせずに自己完結できる。愛着に終止符を打つ儀式も自分のために行えばいい。となると、「みんなのお焚き上げ」のカジュアルさと、それでいて伝統的な儀式に結びついている具合が、現代人の心にちょうどフィットするように思える。
ウェットな感情にも、その度合いの深さや周囲への配慮の必要性などがいろいろあるわけで、それぞれの状況に合ったちょうどいい具合のお別れサービスが求められているのだろう。
■恋人からもらった手紙を捨てる儀式
おしなべて見ると、こうしたサービスは世間への体裁や信仰心からというよりも、一人ひとりの胸の内から湧いてくる感情を納得させてくれる何かが求められているように思える。モノとの関係性を終わらせる説得力のある手続きとして、伝統宗教の力を借りている感じだ。
実際、戦前生まれのある恩人は自分の持ち物に自分の名前を書き込む習慣を令和になっても続けているが、手放す際は名前をヤスリなどで削ることでモノとの関係性を終わらせていると話していた。
また40代になったばかりの友人は、破局した恋人からもらった手紙を捨てるときは、あえて上等な封筒を買ってきて、そこに入れたうえで蠟封し、燃えるゴミの日に出すという。いずれも周囲の伝統や宗教観と無関係なマイルールだが、決して手を抜かない。自分が納得するための厳粛な儀式だからだ。
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古田 雄介(ふるた・ゆうすけ)
ノンフィクションライター、デジタル遺品を考える会代表
ノンフィクションライター、デジタル遺品を考える会代表。1977年、愛知県生まれ。名古屋工業大学工学部社会開発工学科卒業後、ゼネコンと葬儀社勤務を経て雑誌記者に。2007年にフリーランスとなり、2010年から亡くなった人のサイトやデジタル遺品についての調査を始める。著書に『ネットで故人の声を聴け 死にゆく人々の本音』(光文社新書)、『故人サイト 亡くなった人が遺していったホームページたち』(鉄人文庫)、『バズる「死にたい」 ネットに溢れる自殺願望の考察』(小学館新書)、共著に『第2版 デジタル遺品の探しかた・しまいかた、残しかた+隠しかた』(日本加除出版)など。
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(ノンフィクションライター、デジタル遺品を考える会代表 古田 雄介)

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