※本稿は、『プレジデント』2026年3月20日号の記事を再編集したものです。
■ネイティブに2年習ってもTOEICは300点台
基本的な単語や英文法はわかっているはずなのに、TOEICなどのテストで思ったような点数が取れなかったり、英会話でうまく話すことができなかった、という経験がある人は少なくないでしょう。
TOEICで940点を獲得し、現在はTOEIC対策をメインにした英語コーチを仕事にしている私も、じつはまったく同じ悩みを持っていました。
私はもともと英語とはまったく縁がない生活をしており、英語を学び直したのは約20年前のサラリーマン時代でした。その理由も昇進の要件にTOEICの点数があったからという、かなり受動的なものでした。
当時はまだオンライン英会話のようなものはなく、英会話教室で2年ほどネイティブ講師に英語を習いましたが、TOEICは毎回300点台。学習の成果はまったく出ず、昇進もできませんでした。
ですが、あるとき中学レベルの参考書や、ニンテンドーDSの英語学習ソフトなどを購入し、英語を基礎から学び直したところ、あやふやになっていた部分が一気にクリアになり、どんどん英語への理解が深まっていきました。基礎が固まったことで、それまでネイティブ講師に習っていた部分が体系的に理解できるようになり、飛躍的に英語力が向上したのです。
簡単な英文が読めるようになり、海外拠点とのメールのやりとりも英語でできるようになりました。そしてTOEICも、460点、550点、700点とスコアが劇的に伸びていきました。
このことからわかるのは、必ずしもネイティブとの会話のようなハイレベルな学習がつねに正解とは限らないということです。
基礎をきちんと理解していない段階で、やみくもに上級者と会話をしても覚えたフレーズをそのまま使うことしかできず、話したいことを英語にするのは難しいでしょう。少なくとも私の場合は、先述したようにあまり効果がありませんでした。
それよりも、まずは基本の英語知識を身につけ、それを実用レベルで活用できるように広げていくという、一見地味に見えるアプローチのほうが有効だと考えています。
私はこのやりかたで、その後も英語を学び続けました。
700点を取得してからは、英語力を活かして海外出張や海外駐在のチャンスをつかみ、会社の海外進出プロジェクトに参加。その後、駐在先のタイでも英語の学習を続け、800点、900点と点数は伸び、最終的に940点(リスニング満点)まで英語力を伸ばすことができました。その後は英語コーチとして現在に至ります。
■ピクトなら読まなくても理解ができる!
そんな“英語難民”だった私が基礎を固めるために有効だと考えているのが、ピクトグラムを用いて英単語を学習する方法です。
たとえば、look、see、watchという単語はどれも日本語で「見る」という意味ですが、それぞれの違いとなると、意外と大人でも説明できないんですよね。もちろん、それぞれ細かなニュアンスや使い方が違います。
lookは「目を動かして見る」という意味で、seeは「視界に入ってきたものを見る」、watchは「テレビやスポーツをじっくり見る」という違いがあるんです。
こうした微妙なニュアンスの違いは、ただ文字情報だけを見ていてもなかなか頭に入ってこないものです。参考書によっては例文が載っているものもありますが、たとえば学生がビジネスシーンにおける商談の例文を読んでも、イメージがつきづらく、理解は進まないでしょう。
逆も然りで、ビジネスのために英語を勉強している人が、観光などで使う例文を読んでも、自分事としてとらえることができないため、学習意欲を持続させるのは簡単ではありません。
ですが、ピクトによる図解があれば、単語ごとのニュアンスの違いや、その単語を使うのにふさわしいシチュエーションがほとんど文字を読むことなく直観的に理解できます。
ニュアンスがわかるようになると、いつその単語が使われるのか、どういうときにその単語を使えばよいのかということが自ずと理解できるようになり、自然と英会話や作文などでその単語を使ってみたくなることでしょう。
■実践形式でないと英語力は伸びない
英語を学ぶ際は、この「実際に使ってみる」ということが非常に重要です。単に参考書の例文やフレーズを暗記するのではなく、自分の目的に合ったかたちで単語を使ってみることで、知識を実践形式にアップグレードすることができます。
そうして自分が覚えた単語を実際に使うことで、「自分は英語が話せる(使える)んだ」という実感につながってモチベーションも維持しやすくなりますし、サラリーマン時代の私のように業務で使えるようになれば、目に見えるリターンもあるかもしれません。
現在はChatGPTに代表されるチャット型AIが非常に進歩しており、自分の目的に合った例文をつくることもとても簡単にできます。
あらかじめ、自分の職業や何のために英語を学んでいるのかをAIに教えたうえで、「この単語を使って例文を10個つくって」とリクエストすれば、自分が実際に使いそうな例文がすぐに出力されます。自分とは縁遠い世界の例文を読み込むよりも、こちらのほうがずっと実践に役立つはずです。
英語に限らず、本来何かを学ぶことは楽しいことであるはずです。
つまらなくなれば自然に机からは遠ざかってしまい、せっかくできた学習の習慣も失われてしまいます。そうならないためにも、イメージによる直観的な理解を行うことが重要です。
もし、英語を学ぶ中で意味を理解しきれない単語が出てきた場合は、検索エンジンの画像検索を活用してみましょう。といっても難しいことは何もなく、わからない単語を入れて検索するだけでOKです。
すると、その単語に対応した写真素材や、英会話スクールの解説画像などが出てくるため、長々と文章の解説を読まずとも、一瞬で理解することができます。
たとえば、「afraid」という単語を検索すると、怖がっている人の写真やイラストがたくさん出てくるため、「これは『怖がる』とか『恐れる』という意味なんだな」と一目でわかります。
■挫折せずに英語力を積み上げるコツ
英語を身に付けることはとても長い道のりで、一説では英語学習者の8割以上が1年以内に挫折するともいわれています。だからこそ、「勉強をしないと」と肩肘を張らずに、自分が継続しやすいかたちで学習を続けることが重要だと私は考えています。
そのためには、先述したイメージによる理解だけでなく、挫折しないような仕組みづくりも大切です。
まず大切なのは、学習のハードルを高く設定しすぎないことです。何かを始めようとするときは、やる気が高い状態だと思いますが、ここで仮に「毎日2時間勉強する」とハードルの高い計画を立ててしまうと、それを守れなかった際に挫折しやすくなってしまいます。
最初はあまりハードな計画を立てず、忙しくても確実にこなせる程度のハードルを設定したほうがよいでしょう。
また、「何もしなかった」という日をつくらないことも重要です。学習の習慣をつくるためには、毎日学ぶことが大切です。「忙しい日は5分だけ単語を覚える」といったハードルの低いルールをつくって、英語に触れない日がないようにするといいでしょう。
■一番大切なのは“ムダな勉強をしないこと”
そして、私が何より大切だと思っているのは、ムダなことをしないことです。
先述したように、ビジネスシーンで英語を使いたい人にとっては、旅行で使うような例文を覚えても使う機会はほとんどないでしょう。こうしたムダな努力を避け、自分の目標にフォーカスした努力を行い、限りある時間を有効に活用しましょう。
そのためには、自分の目標を明確に設定することが大切です。
サラリーマン時代の私のように、昇進のためにTOEICの点数を上げることが必要なのであれば、TOEICの対策だけを徹底的に行う。英語で話せるようになりたいのであれば、アウトプットを重点的に行うといったように、正しい努力を行いましょう。
努力したにもかかわらず成果が出ないと、モチベーションが下がってしまい、せっかく身に付いた学習習慣も薄れてしまいます。目標達成にフォーカスすることを心がけましょう。
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マーク(村木幸司)(むらき・こうじ)
英語コーチング協会認定コーチ
大手自動車メーカー勤務時代に、英会話教室でネイティブ講師に英語を習うも、ろくに会話もできず、TOEICは毎回300点台。しかし、英語の基本文法を学び直したところ英語学習に目覚める。TOEICのスコアも劇的に伸び、その英語力を活かして海外出張や海外駐在を経験。現在は脱サラして、英語コーチング協会認定コーチとして、基本英文法やTOEIC対策をオンラインで教えている。X(旧Twitter)でのピクトグラムを使った英語解説が話題になり、フォロワーは6万人以上。
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(英語コーチング協会認定コーチ マーク(村木幸司) 構成=橘厚樹)

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