物価高騰の影響で不動産の価格が上昇し、家賃にも値上げが波及している。少しでもお得に住む方法はないのか。
東大卒ファイナンシャルプランナーの服部貞昭さんの書籍『届け出だけでもらえるお金大全』(自由国民社)より、公営住宅や行政による家賃支援制度について紹介する――。(第2回)
■家賃の負担が大きくなっている
ここ数年、物価高騰やインバウンドの影響で不動産の価格が大きく上昇しています。賃貸物件の家賃は、そこまで大きな値上がり幅ではないですが、少しずつ上昇しており、生活の負担が大きくなっています。
そこで、賃貸物件に住む方を支援する制度があります。
賃貸物件の支援としては、主に、「公営住宅」と「家賃補助」の2つがあります。
「公営住宅」は、市区町村などが運営している、相場より安い家賃で入居できる住宅ですが、所得条件がそれなりに厳しく抽選倍率が高いなど、入居するのにハードルが高いケースが多いです。
「家賃補助」は、自分で契約する民間の賃貸物件の家賃の一部を補助してくれる制度ですが、所得条件などが比較的ゆるく、公営住宅よりも対象者の幅が広がります。
■東京都千代田区は「最大500万円」
まずは、「家賃補助」の内容を解説します。
東京など都市部を中心に、いくつかの自治体で、家賃や引っ越し費用の支援制度があります。
特に、新婚・子育て向けが手厚いです。
家賃補助の金額が多い自治体の一部を掲載します(2025年7月時点)。
たとえば、東京都千代田区では、最大月8万円、8年間合計で最大約500万円の家賃支援を行います。

対象は、親が近くに住んでいる世帯と区内で転居する世帯です。
所得の条件はありますが、4人世帯の場合は年収約1300万円以下と、高所得者も該当します。
■最大8年間支給される
支給される金額は、世帯の人数ごとに異なりますが、1年目が一番多く徐々に減っていって8年目まで支給されます。
【制度名】

次世代育成住宅助成
【対象者】

①親が近くに住んでいる世帯(次のいずれにも該当する世帯)

・区内に5年以上住み続けている親がいる新婚世帯(婚姻届けの提出日から2年以内)、または子育て世帯(18歳以下の子どもがいる世帯)

・区外から区内へ、または、区内で住み替えをする

②区内で転居する世帯(次のいずれにも該当する世帯)

・区内に1年以上住み続けている子育て世帯

・区内で住み替えをする
【条件】

世帯の年間所得の合計が、以下の範囲内であること

2人世帯:189万6000円~1038万8000円

3人世帯:189万6000円~1076万8000円

4人世帯:189万6000円~1114万8000円

住み替え先の住宅の専有面積が、住み替えのものより広くなること

(その他の細かい条件は、自治体のホームページを参照)

■最大で「家賃5万円を5年間補助」
高齢者世帯・障害者世帯・ひとり親世帯に対しては、家賃や賃貸借契約にかかる費用、契約更新料、火災保険料などを支援します。
家賃は月額最大5万円で最長5年間、契約にかかる費用は礼金・仲介手数料が支給されます。
【制度名】

居住安定支援家賃助成
【対象者】

千代田区内に2年以上住み続けている高齢者世帯・障害者世帯・ひとり親世帯で、取り壊し等により転居を余儀なくされた場合や、やむを得ない事由により世帯の所得が著しく減少した場合など

■住んでいる自治体に確認すべき
【条件】

高齢者世帯:65歳以上の単身世帯、または65歳以上の方を含み60歳以上の方だけで構成されている世帯

障害者世帯:身体障害者手帳4級以上、愛の手帳4度以上、精神障害者保険福祉手帳3級以上のいずれかの手帳の交付を受けた人がいる世帯

ひとり親世帯:扶養している18歳以下の子どもと同居しているひとり親世帯、DV(家庭内暴力)被害者世帯(その他の細かい条件は、自治体のホームページを参照)
【助成額】

(1)家賃助成

家賃等を基準にした計算により算出した額(月額5万円まで)(最長5年間)

(2)転居一時金助成

礼金(権利金)および仲介手数料の合計額(家賃基準額または実際の家賃のうち、少ない方の3カ月分まで)

(3)契約更新助成

賃貸借契約の更新料(家賃基準額の1カ月分まで)

(4)火災保険料助成
加入した火災保険の保険料相当額(7500円まで)
ほかの自治体でも、それぞれ内容は違いますが、大まかには似ている制度があります。
家賃助成制度の募集は、年に1回か2回程度、決められた時期にしか行っていませんので、自治体に確認してください。
■小奇麗な公的住宅も増えている
入居条件がありますが、家賃が低い住宅として、「公的な住宅」があります。
公的な住宅には、主に、都道府県・市区町村などの自治体が運営する「公営住宅」と、独立行政法人都市再生機構(Urban Renaissance Agency:UR都市機構)が運営する「UR賃貸住宅」があります。
どちらも、礼金・仲介手数料・更新料が不要です。
公的な住宅というと、古い団地を思い浮かべるかもしれませんが、最近建築されたばかりのマンションや、リノベーションされた小綺麗な物件も増えています。
住宅のタイプも、1R、1DKといった単身者向けから、2LDK、3LDKなどのファミリー層向けまで幅広いです。

■「表参道のタワマン」に月6万円で住める
このうち、なんといっても家賃が安いのは「公営住宅」のほうです。
家賃は、世帯の収入・地域・住宅の広さ・建築年数によって異なりますが、たとえば、東京都の都営住宅の場合、2DK・3DKであれば最高でも6万円台くらいです。
東京都が2023年4月に、表参道のタワーマンションの部屋を、若者夫婦・子育て世帯向けに募集したところ、応募者が殺到したことで話題になりました。
表参道は人気の一等地であり、2DKなら、家賃は25万円以上(2025年7月時点)が相場ですから、約4分の1の家賃ということになります。
ただし、応募するためには、次のような条件があります。
・申込をする日に、東京都内に居住していること。

・同居親族がいること(パートナーシップ関係にある方も対象となります)。

・住宅に困っていること。

・申込世帯の所得の合計が所得基準の範囲内であること。
■厳しい所得基準がある
特に厳しいのが所得の基準であり、4人家族なら年収447万円以下となります。たとえば、さきほどの表参道のタワマンは東京都港区にありますが、港区に住む方の平均年収が約1976万円(2024年、給与換算)で、全国1位であることを考えると、相当に厳しい所得基準であるといえるでしょう。
さらに、人気の物件には応募者が殺到するため、抽選の倍率は20倍を上回り、ときには100倍を超えることもあります。

狭き門ではありますが、公営住宅は圧倒的に家賃が低いことが魅力ですので、あきらめずに応募してみると良いでしょう。
ただ、さきほどの表参道のタワマンのように、周囲の物価は高く、食費や教育費などが高くなって生活が苦しくなる可能性がありますので、応募する物件の場所については、総合的に考えて判断したほうが良いかもしれません。
【届け出先】 お住まいの自治体の住宅公社

(応募時期が決まっているので要確認)
【添付書類】

・世帯全員の住民票の写し

・収入を証明する書類など

(具体的な書類については、届け出先の指示に従ってください)

■UR賃貸住宅は家賃が高め
UR賃貸住宅は、独立行政法人都市再生機構(Urban Renaissance Agency:UR都市機構)が運営している公的な住宅です。テレビCMでその名前を知った人も多いでしょう。1955年に設立された日本住宅公団が前身であり、「公団住宅」と呼ばれていたこともありました。現在は、国土交通省が管轄する独立行政法人です。
UR賃貸住宅は、都市部郊外の広々とした敷地に建てられている大型の団地タイプが多いです。団地とはいっても、かつてのマンモス型団地のように古くて老朽化したものは少なく、築年数が浅いものや、リノベーションされて部屋の中はキレイなものが多いです。また、部屋の広さも大きめなところが多く、1Kでも30m2くらいからで、3LDKでは80m2を超える部屋もあります。
その分、家賃は安いわけではなく、一般的な賃貸住宅と同じくらいか、むしろ高めです。ただ、礼金・仲介手数料・更新料が不要であり、保証人または保証会社との契約も必要ありませんので、入居時の初期費用を抑えることができます(敷金のみ必要)。
仮に家賃12万円の場合、礼金1カ月分、仲介手数料1カ月分、保証料1カ月分で、合計36万円を浮かせることができます。

契約する際には、収入の下限の基準があります。過去1年間の年収(ボーナス含む)を12で割った金額が、「基準月収額」を超えていることです。
■年収が高い人でも申し込める
【世帯で申し込む場合の基準月収額】

・家賃8万2500円未満:家賃の4倍

・家賃8万2500円以上20万円未満:33万円(固定額)

・家賃20万円以上:40万円(固定額)

たとえば、ファミリーで家賃10~20万円くらいの2LDK/3LDKに住むのであれば、基準月収額は33万円、年額では396万円ですから、平均年収を超えている人であれば問題ないでしょう。
公営住宅のように年収の上限の基準はありませんので、年収が高い人でも申し込むことができます。
ただ、部屋の空きが少なく空いてもすぐに埋まってしまうため、入居するのが大変です。駅から離れていることが多いため、通勤・通学が不便になる可能性はあります。
そのあたりを考慮に入れて、検討すると良いでしょう。
【届け出先】UR都市機構
【添付書類】

・賃貸住宅入居申込書

・世帯全員の住民票の写し

・収入を証明する書類など
(具体的な書類については、届け出先の指示に従ってください)

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服部 貞昭(はっとり・さだあき)

ファイナンシャル・プランナー、新宿・はっとりFP 事務所代表

長野県須坂市生まれ。東京大学工学部卒業後、KDDIにてシステムエンジニアとして勤務。2014年に独立し、現在はファイナンシャル・プランナーとして、お金に困っている人の相談にのりながら、身近なお金に関する情報発信に携わる。ライフマネー・税金・相続関連のオウンドメディアを複数運営、総合月間150万PV超。これまでに2000本以上の記事を執筆・監修。
登録者10万人超のYouTubeチャンネル「お金のSOSチャンネル」をはじめ、「ZEIMO」など4つのマネー系チャンネルを運営し、累計再生回数2200万回を超える。著書に『東大卒のファイナンシャル・プランナーが教える 届け出だけでもらえる お金大全』(自由国民社)、『知れば知るほど得する年金の本』(知的生きかた文庫)。

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(ファイナンシャル・プランナー、新宿・はっとりFP 事務所代表 服部 貞昭)
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