旬のフルーツを食べると、そのスイーツ並みの甘さに驚きながら、つい食べ過ぎてしまうもの。ロカボ(糖質を適正にした食事)を推奨する北里大学糖尿病センター長の山田悟さんは「果糖の摂取量は1日5gまでが望ましい」という――。

※本稿は、山田悟『糖質老化』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■砂糖の摂取量は1食10gまで
私が声を大にしてその恐ろしさを訴えている「果糖」ですが、果糖は野菜にも含まれています。果物や果糖入りの甘味料として摂るのを控えても、野菜を食べないわけにはいかないので、果糖摂取はゼロにはできません。
では、1食どのくらいなら、果糖を摂ってもよいのでしょうか。
私は、1食10g以内なら、砂糖を摂っても脂肪肝などの悪い影響がおよぶことはなく、糖質老化には結びつかないと考えています。砂糖の半分が果糖ですから、果糖としては1食5g以内ということになります。
根拠となるのは、米国・コロラド大学のリチャード・J・ジョンソン教授らの著作です。ジョンソン教授らによると、1食8g以内であれば、果糖は小腸で安全に処理できると著作に記載しているのです[Nature Wants Us to Be Fat. 邦題「肥満の科学」](この著作の記述内容を支持する論文を探しているのですが、残念ながら私はまだ見いだせていません)。
小腸には「ケトヘキソキナーゼ」という酵素があり、果糖を分解して、小腸内側を覆う粘膜のエネルギー源として利用しているようです。
そうです、本来果糖とは、小腸粘膜で使われる栄養分だったのです[Cell Metab 2018; 27: 351-361.e3]。それを超えて過剰に果糖を摂取するから、肝臓に果糖が流れ、肝臓での果糖処理が起こると、飢餓感が生じ(あるいは、満腹感が消失し)、どんどんと食べ進み、脂肪肝、肥満が生じていきます[J Intern Med 2020; 287: 252-262]。
■果糖で「太る」スイッチが入る
このような状況を前述のジョンソン教授は、「果糖生存危機仮説(Fructose survival hypothesis)」と名付けました[Obesity(Silver Spring)2024; 32:12-22][Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 2023; 378: 20220230]。

現代では四季を問わず、多量の果糖摂取が簡単にできます。しかし、太古の昔は、果糖を口にできるのは、「実りの秋」だけだったはずです。
秋は冬に向けた準備の時期で、果糖を口にすると、生存本能が“いまのうちに太っておけ。冬になったら凍死しかねないぞ。餓死しかねないぞ”と命令を出す。だからどんどんと食べ続けることができる。これが「果糖生存危機仮説」です。
果糖は食べれば食べるほど、食欲がわき、さらに糖質過多になり、肥満を招き、肥満の状態がまた果糖を欲する。それは、冬における生存危機を回避するためだという考え方です。
一方、糖質(果物や穀類)を控え、たんぱく質や油脂をしっかりと食べているのは、太古の昔で言うと春から夏の季節になります。
この時期は、獲物を狩猟するために、あるいは、どう猛な肉食動物から逃げ切るために、私たちのからだは身動きのとりやすい体重である必要があります。
■「甘いものは別腹」は本能の暴走か
糖質制限で満腹になるまで食べていても、身動きのとりやすい体重(20歳頃の体重)におのずと収斂(しゅうれん)していくことも、この果糖生存危機仮説の亜型(反応が弱いタイプ):糖質生存危機仮説として考えれば理解しやすいかもしれません。

ということで、果糖がもたらす「甘いものは別腹」は、からだが生き延びようとする本能の暴走だったのです。
■野菜にもかなりの糖質が含まれる
最近では甘い野菜が増えています。野菜についても考えておきましょう。
厚生労働省では、1日350g以上の野菜摂取を推奨しています[健康日本21(第三次)]。1食あたりにすると約120gです。日本人の野菜摂取量は1日260gほどですから、1食30gほどの増量が求められます[令和6年国民健康・栄養調査]。
(糖質摂取を減らし適正な量だけ食べる)「ロカボ」の基準では、1食あたりの糖質量の目安は20~40g。上限の40gを食べるとすると、半分の20gをご飯などの主食、残りの20gを野菜などから摂ることになります。
野菜120gに含まれる糖質量は、どのような野菜を摂るかで大きな幅があります。
糖質量の多い根菜や甘いフルーツトマトなどを控えて野菜を1食120g摂ったとして、おそらく糖質量としては10~20g程度でしょう。果糖の割合はさらにその半分くらい(つまり5~10g前後)でしょうから、果糖8gまでというジョンソン教授の基準をギリギリ満たすくらいで済みます。
小腸でエネルギー源として消費されるため、野菜の果糖による脂肪肝、糖質老化の心配はいらないと考えてよいでしょう。

■推奨基準は「果物は1日に200g」
野菜と同じように、果物の摂取量についても、厚生労働省では基準を設けていて、目安は「1日200g」とされます[健康日本21(第三次)]。
日本人の1日の果物の摂取量は約80gと報告されているそうですから、厚生労働省の基準をクリアするには摂取量を現在の2倍以上に増やすことが求められます。
しかし私は、無理して摂取量を2.5倍に増やす必要はないと考えています。なぜなら、この「200g」という根拠はコホート研究、つまり観察研究だけに基づいたものだからです。
■研究対象者に誤差があった可能性
観察研究では「果物を食べたから健康になった」という因果関係までは証明できません。日本人を対象にした研究[Br J Nutr 2009; 102: 285-292]でも、果物をよく食べるグループのほうが健康だという結果は出ています。しかし、そのグループにはもともと女性が多く、糖尿病も少ない傾向がありました。
さらに興味深いことに、果物を多く食べるグループは1日のエネルギー摂取量が237kcalも多いにもかかわらず、体格(BMI)はほぼ変わりませんでした。
つまり、「たくさん食べても太りにくい体質」の人がそもそも多かった可能性があります。「果物のおかげで健康になった」のか、「もともと健康な人が果物をよく食べていた」だけなのか、この研究からは区別がつかないのです。
■熟した果物ほど糖度が上がる
また、果物に含まれる果糖の量には、品種、産地、旬、年度などで幅があります。さらに熟した果物ほど甘くなって糖度が上がり、果糖の含有量が増える傾向があります。

GIと同じように糖度には、品種や産地や季節によって大きな差があります。
参考までに、バナナ21.0%、キウイフルーツ(黄色)18.8%、ブドウ17.5%、リンゴ15%、みかん12.1%、グレープフルーツ10%となっています[農林水産省『果樹をめぐる情勢』]。
たとえば、一般的なリンゴ2分の1個(150g)には、およそ18gの糖質が含まれています。含まれる果糖はおよそ12g。同じくキウイフルーツ1個(黄色、100g)にはおよそ12gの糖質が含まれており、そのうち果糖は約6g。バナナ1本(皮なし、100g)には18g前後の糖質が含まれており、そのうち果糖は約7gです[文部科学省『食品成分データベース』]。
しかし、果物は同じ果物であっても、完熟度や完熟の方法によっても栄養素が変わることが知られています[PLoS One 2021; 16: e0253366][Food Funct 2024; 15: 3433-3445]。
さらに、最近では、品種改良などにより、果物の糖度は総じて上がり、含まれている果糖も多くなる傾向があります。私が子どもの頃のイチゴは酸っぱくて、砂糖や練乳をかけて食べていました。いまのイチゴは酸っぱさよりも甘さが際立ち、砂糖や練乳をかけなくてもおいしく味わえます。果糖の含有量は時代とともに(品種改良によって)大きな変化を起こしています。
■「甘い野菜+果物」で果糖オーバー
これを踏まえると、野菜に加えて果物の摂取を増やすと、1食あたりの10gという果糖摂取量の上限値を軽く超えてしまい、脂肪肝と糖質老化のリスクを高める恐れがあります。

果物に期待されている栄養素は、ビタミン、ミネラル、食物繊維などですが、これらの栄養素は、野菜からも十分摂取できます。旬の果物を味わうときには、嗜好品と思って、お菓子を食べるのと同じようにして楽しんでください。
なお、果物ジュースは、果汁100%の濃縮還元タイプでもストレートタイプでも多くの果糖を含みますし、より急峻に肝臓に流れ込んで負担をかけますから、果物はジュースとしてではなく、果実を咀嚼(そしゃく)しながら楽しんでいただきたいと考えています。

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山田 悟(やまだ・さとる)

医学博士/北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長

1994年、慶應義塾大学医学部卒業。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限中心の食事療法では、食べる喜びが損なわれている事実に直面。患者の生活の質を高められる糖質制限食に出会い、積極的に糖尿病治療へ取り入れている。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医・研修指導医、日本医師会認定産業医。『緩やかな糖質制限 ロカボで食べるとやせていく』(幻冬舎)、『糖質疲労』『脂質起動』(ともにサンマーク出版)、『適正糖質のトップドクターが教える ゆるやかな糖質制限 最強ランチレシピ』(プレジデント社)など著書多数。

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(医学博士/北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長 山田 悟)
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