数ある病院やクリニックから自分に最適なところをどう選べばいいのか。医師の和田秀樹さんは「いい病院は、待合室の患者さんたちの様子ですぐわかる。
またスタッフや院内の様子はトップの人となりを表す鏡だ」という――。
※本稿は、和田秀樹『健康診断の数値におびえず楽しく生きる50の心得』(オレンジページ)の一部を再編集したものです。
■待合室が社交場になっている病院は
元気な高齢者が病院にたむろしていると、「医療費の無駄使いだ!」なんて批判されますが、僕に言わせれば、待合室が元気な高齢者の社交場になっている病院は、とても「いい病院」である証拠だと思います。
その理由は2点あります。まずひとつは、医者の人柄がいいということ。
患者の話をよく聞くコミュニケーション能力に長けた医者がいて、「私の話をちゃんと聞いてくれる」という安心感を与えてくれる病院なら、人気が出て患者が増えるのは当然です。
家族構成や既往症など患者の背景を知ろうとし、「薬が飲み込みにくい」「最近ひざが痛くなってきた」といった疾患以外の不調についても、面倒がらず親身に対応してくれる医者がいたら、誰だってそんな病院をかかりつけ医に選びたくなるでしょう。
■個別最適な治療をする病院の特徴
ふたつめは、無駄な投薬はしないで、患者の生活の質(QOL)を重視した治療方針だということ。
高齢者が病院に通うのは、たいてい高血圧や糖尿病といった持病の薬を処方してもらうためでしょう。将来起こるかどうか分からない脳卒中などの予防に主眼を置いて強い薬を処方するのではなく、今現在の日常生活に不自由なく、明るく活動的に過ごせるように計らった個別最適な治療が行われているから、元気に病院通いができているのです。
こういった病院では、定期的に通いたくなるような明るい雰囲気づくりに努め、フレイル予防にも力を入れているでしょう。
■薬漬け治療をする病院の待合室
一方で、待合室に高齢者がいない、または待合室にいる高齢者の顔色が悪く元気がない様子なら、その病院はちょっと怪しいかもしれません。

体の老化がすすむと、薬の効き方が変わったり薬効成分が体内にとどまる時間が延びたりします。そういった事情を考慮せず、検査データだけでマニュアル通りの薬を処方し、副作用が強く出たり、症状を抑えるための薬を追加したり。また、全年齢向けの基準値にこだわるあまり、その患者にとってかなり低い数値まで下げて、フラフラになってしまったり。
今の生活を大切にしないで、少しでも寿命を先延ばししようという治療を続けていては、活力をなくしたヨボヨボの老人になってしまいます。
■バンバン薬を出さないアメリカの医師
日本の医者が薬の副作用に無頓着で、バンバン薬を出すのは嘆かわしい問題です。アメリカでは医者がやみくもに薬を出そうとしても、無駄なお金を払いたくない保険会社から待ったがかかり、「エビデンスを出せ」と迫られます。もし薬の副作用で害が出たとしても、日本では製薬会社が訴えられますが、アメリカでは医者も認識が甘いとして訴訟の対象にされます。だからアメリカの医者は、薬の副作用についてとても熱心に学んでいます。
高齢者は健康に関心が高く、長く病院とつき合うことになるため、病院についての口コミネットワークは相当なもの。病院選びに迷ったら、待合室に元気な高齢者が多くいるか、高齢者の様子はどうかを探ってみるといいでしょう。
■院内が清潔で、スタッフ間の関係が良好
ホームページの写真を見て、きれいで雰囲気のよさそうな病院だと思っても、実際に行ってみると壁の汚れや椅子の破れが放置されていたり、スタッフが無愛想だったり、医者が看護師を叱責する声が聞こえてきたり……そんな、眉をひそめるような経験をしたことはありませんか? どんな組織でも、トップの考え方や人となりが、部下の様子や職場の空気に表れやすいものです。
たとえば、大病院の理事長や院長が金儲け主義なら、現場の医者はワクチン接種や過剰な検査をすすめるようになるし、地域密着型ならスタッフに笑顔や親しみやすい対応を教育したり、敷地内に誰もが自由に出入りできる緑地帯を造成したりするかもしれません。

■小さなクリニックの雰囲気=医者の考え
ひとりの医者が開業し、院長として君臨しているクリニックになると、その傾向がより顕著です。
スタッフが患者にぞんざいな態度をとったり目も合わせなかったりするなら、院長がそれを許しているか、そもそも配慮する気がないということ。あるいは、院長が高圧的だったりお給料をケチっているために、スタッフがクリニックに愛着を持てていない可能性もあります。
待合室やトイレに清潔感がないなら、体調を悪くして来院している患者に少しでも気持ちよく過ごしてもらおうという発想がないのでしょう。
そんな医者は、患者に対して平気で横柄な態度をとってくるかもしれません。「やせなさい」「降圧剤を飲みなさい」などと命令口調だったり、「数値が上がっている。やる気があるのか」と怒ったり。
もちろん、椅子の破れひとつで医者の人柄が悪いと決めつけることはできません。けれど、いろいろな要素から怪しいと思えるなら、診察の際に「その薬のデメリットは何ですか」「ラーメンだけはやめられないのですが」などと聞いてみてください。その返答に誠意が感じられなければ、そのクリニックはやめたほうがいいでしょう。
■ベンツに乗る医師よりヤバい医師
医者の人となりが重要といっても、プライベートを批判するのはどうでしょう。あそこの医者がベンツに乗っていただの、ゴルフ三昧なのはけしからんだのと言う人がいますが、医者は聖人君子ではなく、ひとりの人間です。
自分で稼いだお金を好きなことに使い、活力がわいて仕事へのやる気につながるなら、おおいに結構ではありませんか。
しかし、製薬会社などと癒着して懐に入れたお金は別です。2025年7月に、75歳以上の高齢者の降圧目標が130/80に引き下げられました。つまり、高血圧患者が激増することを意味します。
その一方で、この血圧の基準を設定した日本高血圧学会の理事4人(大学医学部教授・医師など)が、降圧剤などを製造する製薬会社から、5年間で5000万円以上を「謝礼」として受け取っていたという事実が判明。うちひとりは1億円を超えます。そういう怪しいお金の臭いがする場合は、声を大にして糾弾するべきです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。
立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)
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