家計管理は「夫婦一緒の財布」と「夫婦別財布」どちらがいいのか。家計再生コンサルタントでFPの横山光昭さんとFPの関口博美さん夫婦は「民間の調査では、財布は『別々』と『一緒』の割合がほぼ半々となっている。
別々であっても、家賃は夫、生活費は妻など、支出のあり方に最低限のルールを決めているご夫婦が多い」という――。
※本稿は、横山光昭・関口博美『おふたりさまの老後資金は「これ」で増やす』(小学館)の一部を再編集したものです。
■「別々」と「一緒」の割合はほぼ半々
私たちがお金に関する相談業務を始めた30年ほど前、すでに”夫婦別財布”は珍しくありませんでした。収入はどのくらいか、お金はどう使っているのか、いくら貯金があるのかなど、相談の場で互いの懐事情を知るケースがかなりありました。
内閣府の調査では、日本の共働き世帯は7割を超えました。夫と妻それぞれが経済的に自立しているご家庭も多いでしょう。ちなみに民間の調査では、財布は「別々」と「一緒」の割合がほぼ半々となっています(図表1参照)。
たとえ別々であっても支出のあり方に最低限のルールを決めているご夫婦が多いようです。互いの収入から毎月いくら出し合うのか、家賃は夫、生活費は妻などの分け方です。こうしたざっくりした方針で何も起きなければよいのですが、大きな出費が必要になる状況を迎えると、たいてい問題が生じます。
■やがて生じる夫婦別財布のデメリット
夫婦が「別財布」の場合、子どもが大学に進学したり、マイホーム購入のために住宅ローンを組んだりなど、ふたりのお金を足して何かするときになって初めて、互いの収入や貯金額を知るケースが多々あります。「収入はそれなりにあるはずなのに、それだけしか貯めてないの?」といった口論になることも少なくありません。

ふたりとも現役バリバリで働いているなら、慌てて対応してもまだ何とかなります。収入が多ければ、軌道修正が間に合うからです。
しかし、定年後はそうはいきません。夫婦別財布のまま互いの懐事情を知らなければ、「きっと相手は貯めているはず」とアテにし、フタを開けると蓄えがほとんどなかった、という事態になりかねません。収入が増える余地も乏しく、老後の軌道修正はかなり難しくなります。
お金に関する“スレ違い”は、離婚理由のトップ10に入ります。裁判所が発表している「司法統計年報」(2024年)によると、離婚理由の上位に「生活費を渡さない」「浪費する」といった、お金に関するトラブルが入ります(図表2参照)。
■財布を一つにすることが第一歩
お金を貯めていないだけでは離婚を主張できる理由にならないでしょう。ですが、お金を貯めるべき必要性があるのに散財し、家計に深刻なダメージを与える、本来は金銭的に協力して暮らすべきなのに生活費を渡さない、自由に使わせないなどの行為は、離婚を主張する正当な理由になり得ます。管理は各自であっても、収入や支出、貯金額くらいはできるだけ情報共有しましょう。
年金もそれぞれの口座に振り込まれます。夫の年金は夫の口座、妻の年金は妻の口座です。
仮にひとりの受給額は少なくても、ふたり合わせれば何とかやっていけそうな金額に近づきます。
老後のマネープランは、互いの収入と支出、貯金を把握し、財布を一つにすることが大切な第一歩だと、私たちは考えます。
■〈関口の見方〉女性はお金の悩みを抱えがち
私たちは結婚当初から互いの収入を合わせていたので、夫婦別財布の暮らしを経験していません。ですが、相談者の方の「収入を聞けない」「貯金がいくらあるのか知らない」という声を聞くと、随分とお金の面で気を遣い合っていることに驚かされます。
とりわけ女性は、出産や産前産後、育児休業中の支出、子育てしながらの仕事や教育費のことなど、お金の悩みを抱えがちです。ひとりで抱え込まないためにも、早めにパートナーと計画を立てておくことが大切です。
相手に気を遣い、結婚後も長年、収入や貯蓄状況を聞かなかったけれど、初めて話してみたら、じつは借金で困っていた……というケースもありました。夫婦別財布だけが原因とは言い切れませんが、お金に関する情報や価値観を共有できていないと、夫婦仲が大きく悪化する要因を抱えたまま過ごすことになってしまいます。
■子どもたちも参加する「家族マネー会議」
ここで、わが家の「家族マネー会議」について紹介します。わが家では月1回、家族全員が参加して、お金の使い方などの議論を交わします。以前は夫婦のほか6人の子どもたち(5女1男)が参加していましたが、長女と四女が嫁いで以降は、私たちと子どもたち4人の計6人で催しています。内容は、その月の収入と支出はもちろん、貯金や資産運用の金額まで、お金に関わることは何でも話し合います。

議論の中心は、前月の支出の振り返りです。私が提唱する家計管理の方法として、「家計の三分法」というものがあります。支出の中身を「消費」「浪費」「投資」の三つのモノサシで区分けし、その価値を改めて検討していくものです。
まず、「消費」は生きるためや日々の暮らしに欠かせない支出です。住居費や過剰ではない食費、水道光熱費、スマートフォンの利用料金などがこれに当たります。
次に、「浪費」は生産性が乏しい、いわゆるムダ遣いに当たる支出です。ギャンブルや過剰な嗜好品代、借金の利息、不用意にかかる手数料や年会費などが該当します。使う人が「浪費」と意識して使うお金も含まれます。
最後に、「投資」は金融商品へのそれだけでなく、いわゆる自己投資も入ります。自分に何らかのリターンがある、もしくは将来、仕事の幅を広げると思われる通信教育代や書籍・参考書代、セミナー代などが入ります。
■お小遣いは「月額500円」からスタート
この指針に基づき、家族で支出の中身を振り返ります。「冷蔵庫の中で傷んでいた食材があった」「消費期限切れの食材が出てきた」「ポテトチップスを毎月のように買っているけど、食べすぎじゃない?」といった細かなチェックが次々と入ります。

光熱費や教育費、住居費など、家計のどのような項目にいくらかかっているのかも明らかにし、「消費」「浪費」「投資」の視点で振り返ります。
なお、わが家では、子どもたちのお小遣いは小学3年生から原則月額500円で始まります。もし毎月のように買いたいものが500円で収まらない、たとえば読みたい雑誌が500円で買えないなどの理由があれば、家族マネー会議で金額を再検討します。
その後は毎年100円ずつアップし、中学生から1000円になります。お年玉などのまとまったお金は、使わない分を子ども名義の銀行口座に自分たちで預けます。必要と予想される金額をお小遣いの補填用として取り分け、残りは貯金するルールです。
■「報酬制」より「月額制」
お小遣いは、働いたら渡す報酬制などもありますが、子どもたち自身でやりくりの重要性を考えるためには月額制が向いています。
使う、貯める、やりくりするなど、自分のお金を利用して、何かを体験する。そして体験したこと、考えたことを家族マネー会議で報告し、いろいろなアドバイスをもらう。こうしたやりとりが「金銭教育」の一環になると、私たちは考えます(図表3参照)。
■〈関口の見方〉なぜお金の隠し事をしないのか
私たち夫婦は昔から「お金の隠し事はしない」という方針で暮らしています。若い頃、夫の転職で収入が不安定になった時期があり、少ないお金を有効に使うためにはどの支出を優先するべきかを、ふたりで考え始めたことがきっかけです。

当時から夫は、家計相談のようなマネー関連の仕事が多かったのですが、私は看護師として多忙な日々を過ごし、さほど「家計管理がしっかりした家庭」というわけではありませんでした。
その後、子どもができ、「今月は食費が多かった」「日用品を買いだめしすぎ」「この飲み会は本当に必要だった?」などと、お金の使い方について話し合うようになります。長女が小学3年生になった頃、「家族マネー会議」を催すようになるのですが、長女が「保険って何? どうして何万円も払うの?」などと、お金に関心を持ち始めたことがきっかけでした。
日本の教育現場でも、子どもたちがお金や資産運用について学ぶ機会は増えました。ですが、欧米などに比べるとまだまだ物足りません。スマホの買い替えや旅行のプランを立てるとき、あるいは「ふるさと納税」の寄付先を決めるときなど、「お金を使うイベント」がある機会に、皆さんも「家族マネー会議」を催してみてはいかがでしょうか。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)

家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表

お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。

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関口 博美(せきぐち・ひろみ)

ファイナンシャルプランナー、DCアドバイザー

看護師を経て、夫・横山光昭の運営するマイエフピーに入社。確定拠出年金(iDeCo、DC)をはじめ、公的・私的年金制度、教育費などの分野を得意とする。
6児の母として、育児と仕事を両立してきた。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭、ファイナンシャルプランナー、DCアドバイザー 関口 博美)
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