試験前の緊張を解消するには何をするといいか。スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星友啓さんは「テスト不安が強い人は、本番になると練習通りの実力を発揮できず、点数が下がってしまう。
本来の実力を発揮するには、たった10分間でいいので白紙を用意して書き出しを行うといい」という――。
※本稿は、星友啓『スタンフォード大学オンライン高校の校長が教える 世界の研究に基づいた 勉強法大全』(KADOKAWA)を再編集したものです。
■脳は水でできている
勉強中に集中力が途切れた時、その原因が「水不足」だとは思いもしないでしょう。しかし、脳の約80%は水でできています。
わずか1~2%の水分が失われるだけで、集中力、短期記憶、計算能力が低下することがわかっています。
喉が渇いたと感じた時には、すでに脳のパフォーマンスは下がり始めているのです。
水分が不足すると、脳は萎縮し、情報を処理するために普段よりも多くのエネルギーを使わなければならなくなります。逆に言えば、適切に水分を補給することは、最も手軽で即効性のある脳のアップグレード方法です。
例えば、水を300ml飲んだだけで、その20分後には集中力が向上したという結果も出ています。また、学校で水を自由に飲める環境にある生徒の方が、そうでない生徒よりもテストの成績が良いというデータもあります。
■正しい水の飲み方
理想的な水分の取り方ですが、一度に大量に飲むのではなく、コップ1杯程度の水をこまめに摂取するのが理想的です。
特に、起床時や、集中力が必要な作業の20分前には意識して飲むようにしましょう。
カフェインを含む飲料は利尿作用があるため、純粋な水を選ぶことが重要です。
デスクに常にボトルを置き、喉が渇く前に飲む習慣をつけること。それが、脳のポテンシャルを最大限に引き出す最も簡単なコツなのです。
実践ステップ
① チビチビ飲みの習慣をつける:一度に大量に飲むのではなく、勉強の合間に一口ずつ飲むのが効果的。「1ページ終わったら一口」のように、自然な区切りをつける。
② 水かお茶を選ぶ:ジュースや甘いカフェオレは血糖値スパイクの原因になるので、メインの水分補給は水か無糖のお茶などに。
③ 起床時に1杯のむ:寝ている間にコップ1杯分以上の汗をかくので、朝起きたらまず水を飲み、脳と体を潤す。
アドバイス

まずはデスクに常温の水を置き、一口飲むことから始めましょう。「集中力が切れたら飲む」のではなく「タイマーをセットして定期的に飲む」のがコツです。小さな習慣が、あなたの脳を常に研ぎ澄まされた状態に保ちます。
■「やる気」は待っていても来ない
「勉強しなきゃ」と思っているのに、ソファーから動けない。TikTokを見続けてしまう。
「あと5分したらやろう」と考えて、気づけば1時間が過ぎている。この「動けない自分」を責める必要はありません。これは脳が「変化」を恐れ、ブレーキをかけているだけだからです。
このブレーキを強制解除する最強の技が、メル・ロビンズが提唱した「5秒ルール」。やり方は、行動しようと思った瞬間に「5、4、3、2、1、GO!」とカウントダウンして、物理的に動き出すだけです。
なぜカウントダウンなのでしょうか? 脳には、無意識に動く担当(大脳基底核)と、考えて決める担当(前頭前皮質)があります。私たちが「勉強しよう」と思った直後、脳は「面倒くさい」「失敗するかも」という言い訳を探し始めます。
その猶予はおよそ5秒以内。だから、言い訳が生まれる前に、カウントダウンで無意識の行動を止め、無理やり起動させるのです。
■動くからやる気が出る
やる気は、行動した後に脳の側坐核という場所から分泌されるドーパミンによって生まれます。つまり、やる気があるから動くのではなく、動くからやる気が出るのです。5秒ルールは、その最初の着火剤として、脳の構造をハックするテクニックです。

実践ステップ
① 「勉強しなきゃ」という考えが浮かんだ瞬間をキャッチする。
② すぐに心の中で(可能なら声に出して)「5、4、3、2、1」とカウントダウンする。
③ 「GO!」と言った瞬間に、ロケット発射のように立ち上がる。
④ そのまま机に向かい、テキストを開く。
アドバイス

朝、布団から出られない時にも効果絶大です。このルールは「知っている」だけでは意味がありません。「5秒数えたら絶対に動く」という自分との決め事を一度でも破ると効果が薄れるので、ゲーム感覚で必ず実行するようにしましょう。
■試験直前の10分間で点数を上げる魔法
期末テストの当日。「テストで失敗したらどうしよう」「良い点を取らなきゃ」などと、真面目な人ほど、そのプレッシャーは計り知れません。テスト不安が強い人は、本番になると練習通りの実力を発揮できず、点数が下がってしまいます。
テストの緊張から逃れるにはどうしたらいいか? シカゴ大学が以下のような実験を行いました。
テストが始まる直前の10分間、一方の学生グループには、「ただ静かに座ってテストを待つ」ように、もう一方のグループには、「エクスプレッシブ・ライティング」、つまり、不安や恐怖などの感情を、紙にすべて書き出すように指示しました。

すると、不安を書き出したグループでは、不安が強い生徒ほどテストの点数が向上し、普段から緊張しない成績優秀者と同レベルの結果を出したのです。たった10分間の書き出しが、数週間の勉強に匹敵する効果を生んだことになります。
■書き出して脳の外に記録する
ではなぜ、自分のネガティブな気持ちを書くだけで、パフォーマンスが上がるのか?
強い不安を感じると、脳内は「失敗したらどうしよう」「親に怒られるかも」「この問題わからない」という心配事で埋め尽くされてしまいます。すると、ワーキングメモリに負荷がかかり、肝心の問題を解くための余裕がなくなってしまうのです。
そこで、本番直前に不安を紙に書き出すと、脳内の心配事を外部(紙)に排出することができます。「紙に書いたから、もう脳に留めなくていい」とワーキングメモリの容量が解放され、フルに問題解決へと向けられるようになるのです。
実践ステップ
① テスト前に気持ちを包み隠さず書く:白紙を用意して、今の不安な気持ちをすべて書き殴る。「怖い」「落ちたら終わる」「心臓がうるさい」「逃げたい」など、どんなにネガティブで汚い言葉でも構わない。
② 物理的に捨てる:最近の研究によると、書いた紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てることで、「思考を捨てた」という感覚が強化され、さらに効果が高まる。
アドバイス

本番の10~15分前がベストです。あまり早すぎると、また不安が溜まってしまいます。

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星 友啓(ほし・ともひろ)

スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長

1977年生まれ。
2001年東京大学卒業。2008年Stanford大学修了後、同大学哲学部講師として論理学で教鞭をとり、 2016年よりスタンフォード・オンライン・ハイスクールの校長に就任。日本では慶應義塾大学特別招聘教授、横浜市立大学特任教授を務めている。著書に『スタンフォード式 生き抜く力』『脳科学が明かした!結果が出る最強の勉強法』などがある。

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(スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長 星 友啓)
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