脳を若返らせる習慣は何か。脳内科医の加藤俊徳さんは「映画や本を見る・読むだけでも脳番地を鍛えられるが、若返る脳をつくるのなら、『見る・読む』で終わらせず『書く』へとつなげていくといい。
そのときに書く道具にこだわることも大切だ」という――。
※本稿は、加藤俊徳『80代でも若返る脳』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
■脳力を高める「ノート、鉛筆、小刀」の使い方
脳力を高める三種の神器というと大げさですが、ぜひ「ノート、鉛筆、小刀」を揃えておきましょう。小刀で鉛筆を削り、削った鉛筆で日記を書くのです。
3点セットに「辞書」も加えれば完璧です。紙の辞書で漢字やことわざを調べると、手指の繊細な動きで先の記事でお伝えした脳番地の運動系を使い、文字を探すときには視覚系が働いて、得た情報は理解系を経て記憶系に収められます。
昔は小刀を使って鉛筆を削るのが当たり前でしたが、手軽さからシャープペンシルやボールペンに移り、気がつくとワープロ、いまやパソコン・スマートフォンを使うようになりました。
考えながら自分の手で文字を書く機会が減ってしまうのは、脳の若返りの機会を奪うのと同じです。
小刀での鉛筆削りは手指の繊細な動きが必要で、短時間ですが集中力が求められます。昔取った杵柄でササっとこなせるか、おっかなびっくりになるかは、記憶系と運動系の連携プレーにかかっています。
焦らず丁寧に鉛筆を削ってください。鋭く尖った鉛筆の芯の出来栄えに達成感を抱きながら、真っ白な紙に鉛筆を走らせて爽快感を味わいましょう。

こうした明るい気持ちが感情系を刺激します。
■日記に書くのは「感情」ではなく「情報」
脳の若返り方法として「日記」をおすすめすると、「なにを書けばいいかわからない」「書くことがない」というお声をよくいただきます。
書くことが見つからないのは「感情を文字にしようとする」からです。実は、感情を言語化するのは高度なことなのです。
日記に書くのは、その日の「感情」ではなく「情報」と考えてください。
先の記事で紹介した模様がえなどは全て「情報」。ウォーキングをしたら距離やタイムを、スーパーに行ったら時間や金額を日記に情報として残しておきましょう。その日の天気・気温と服装を記入するのも役立つ情報となります。
記憶系・理解系・思考系が情報を整理し、整理された情報を伝達系・運動系が文字化して日記になります。
一連の作業では感情系も一緒に働きますので、日記は脳力をおもいきり活動させるとてもいいトレーニングです。
続けるコツ・削った鉛筆の仕上がりに一喜一憂する

・日記には感情ではなく、その日の「情報」を記録する

■芸術家がいつまでも若々しい理由
文章で感情を表現することは難しいのですが、「川柳」なら気持ちを投影しやすくなります。「五七五」の制限のなかで削ぎ落とした表現が求められるからです。

町中で見かけた派手な車を五七五に詠んだだけでも、そのシーンを切り取ったことで、ある種の心情が投影されるのが川柳の面白いところです。
さて、毎年、敬老の日に向けて「有老協・シルバー川柳」(全国有料老人ホーム協会)の公募があります。2001年にスタートし、ユーモアあふれる句、哀愁漂う句など、入選作品はどれも味わい深いものです。
日々書きためた川柳を読み返すだけでも楽しいものですが、コンテストへの応募や自身の句集をつくるなど目標を立て、「表現者」として川柳に取り組んでみるのもいいでしょう。
川柳をはじめ、絵画、写真など全ての創作活動は思考系、感情系、伝達系、運動系、視覚系、理解系、記憶系といった脳番地全体の協力でおこなわれるものであり、だからこそ芸術家と呼ばれる人々はいつまでも若々しいのです。
作品をX(旧ツイッター)、インスタグラムで世界発信すると、仲間づくりのきっかけにもなるでしょう。
川柳の言葉の響きをみるために音読すれば聴覚系の刺激にもなります。
続けるコツ・1日の「記録」のつもりで詠む

・公募やSNSでの発信も視野に入れる

■映画や本の感想を「100文字」でまとめてみる
映画や本を見る・読むだけでも脳番地を鍛えられますが、若返る脳をつくるのなら、「見る・読む」で終わらせず「書く」へとつなげていきましょう。
映画1本は2時間前後、本1冊は200ページ前後。本を読み切る時間は本の内容や人によって開きがあると思いますが、映画も本も、堪能した後は内容を100文字でまとめてみましょう。
作品によっては、あっという間に100文字が埋まることもあれば、最初の1文字がなかなか書き出せないこともあります。50文字までは調子よく進んでも、後半が続かないこともあるでしょう。

こうした「うまくいかない」ときに「あーあ」とあきらめると脳番地も萎んでしまいます。うまくいかないときこそ「チャンスだ!」と喜んでください。そして、落ち着いて次の手順をなぞっていきましょう。
作品の内容を思い返しながら(記憶系、感情系)、込められたメッセージをたぐりよせ(理解系)、ポイントとなる部分をピックアップして(思考系)、まずは箇条書き(視覚系、運動系)。箇条書きというベースがあれば100文字にまとめやすくなります(伝達系)。
箇条書きでも内容は伝わりますが、あえて100文字の文章にするのは読み手を意識してほしいため。誰かに伝えたいという意欲が発生すると、脳番地全体がバックアップを惜しまないからです。
続けるコツ・一気に仕上げなくてもいい

・箇条書きから始めると書きやすい

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加藤 俊徳(かとう・としのり)

脳内科医、加藤プラチナクリニック院長

新潟県生まれ。医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。
脳番地トレーニング、助詞強調おんどく法の提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、強み弱みを診断し、これまでに1万人以上を治療。著書には、『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)などがある。
※「脳番地」(登録第5056139 /第5264859)は脳の学校(登録4979714)の登録商標です。

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(脳内科医、加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳)
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