高配当株は安定的な収益が期待できるが、銘柄選びを間違えると株価が下がって含み損を抱えかねない。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「1年前に書籍で紹介した高配当株厳選10銘柄は、すべて株価が上昇した。
そこで改めて現状と今後の見通しを検証してみた」という――。
■先行き不透明な中、注目される高配当株
混迷するイラン情勢、くすぶる貿易戦争、そして囁かれるAI・半導体バブルなど、今、先行きの読めない相場状況の中、高配当株への投資が注目されています。
短期的な値動きに一喜一憂せず、配当金を目的にどっしりと長期保有する投資スタンスは、ちょっとしたことで乱高下するストレスフルな相場において、多くの人に支持されています。私自身も、資金の一部では、そんな高配当株投資を心がけています。
そして昨年、『安心・安全の、一生もらえる『高配当株』投資』(ぱる出版)という本を出版しました。内容の一部はこちらの記事でも紹介しています。そして、最終章にて、実際に私が保有している、厳選した10銘柄の高配当株を紹介しました。
その出版からちょうど1年経ち、今、史上最高値を更新するなど絶好調の日経平均株価ですが、その実体は、一部のAI・半導体銘柄ばかりが注目され、値上がりする一方で、年初来安値を更新し続けるような銘柄も少なくないという、いびつな相場とも言われています。
そのような相場の中、それら厳選10銘柄はどうなったのか……その結果を確認してみたいと思います。
■すべて上昇、株価が2倍以上の銘柄も
まずは、書籍で紹介した10銘柄について、出版時の株価と現在の株価、そして、その上昇率を一覧(図表1)にしてみました。
紹介したすべての銘柄が上昇、しかも3銘柄は2倍以上に上昇しています。最近は相場の変動が激しく、本記事公開日の株価は、執筆時点から大きく変動している可能性もあるので、そこはご了承ください。

ただ、株価が上昇した分、その配当利回りは出版時に比べて下落していますが、それでもまだなお、十分な水準と言えるでしょう。
もっとも、この1年間は相場全体も非常に堅調だったわけですが(日経平均株価は62.66%、東証株価指数は41.00%の上昇)、比較的手堅い値動きをすると言われる高配当株において、(高い配当金を受け取っていることも踏まえ)これは十分に誇れる成果だと自負しています。
■今後も上がる銘柄は?
それでは、各銘柄をあらためて紹介、その株価の推移、そして現状と将来の動向についてみていきましょう。
●三菱HCキャピタル(8593)
株価 1426円(+40.91%)

配当利回り 3.16%

PER 12.80倍

PBR 1.07倍
三菱UFJグループのリース会社で、業界首位。
高い収益率を誇り、環境エネルギーや不動産事業なども手掛け、安定した利益(配当金)を出しています。国内屈指の連続増配銘柄としても有名で、2026年3月期で27期連続増配となっていて、2027年3月期も増配予定です。
そんな増配を背景に、この1年間で株価は約40%上昇したとはいえ、それでも配当利回りは3%を超える水準をキープしており、まだまだ投資妙味はあります。また、PER、PBRの水準も決して割高ではないと言えるでしょう。
●エスリード(8877)
株価 5170円(+17.63%)

配当利回り 4.64%

PER 6.94倍

PBR 0.98倍
関西を中心に分譲マンションを供給するデベロッパーで、近畿圏内での供給戸数はトップ級。
株価は今年2月末に7560円の高値を付けましたが(その時点での上昇率は約72%)、そこから下落基調となっていて、現在は17%程度の上昇にとどまっています。
現在、資材不足の不安等もあり、住宅関連銘柄には手を出しにくいかもしれませんが、1年前とさほど変わらない4%半ばと高水準の配当利回りと、割安なPER、PBRから、長期保有スタンスでは大いに狙い目かもしれません。
あと、カタログギフト3000円相当の株主優待があることも、長期保有スタンスにとっては、大きな後押しでしょう。

●みずほフィナンシャルグループ(8411)
株価 6912円(+87.32%)

配当利回り 2.10%

PER 15.24倍

PBR 1.53倍
三大メガバンクの一角で、日本を代表する銀行。
国内金利上昇の追い風もあり、株価はこの1年間で90%近く上昇、相場全体を大きく上回る上昇率をマークしましたが、その分、配当利回りは大きく下落し、1年前には約4%あった配当利回りは、現在、約2%となっています。
しかし、配当方針には「累進的な増配」を掲げており、実際、好調な業績を背景に、ここ数年は増配が続いていることから、今後の増配ペースによっては、配当利回りは上昇する可能性は十分あります。
そして現在、金利・物価上昇という大きな経済の転換点にあり、そのような長期的な視点から見れば、20年前につけた株価1万円も視野に入ってくることが期待できます。
■安心して長期保有できる
●TOKAIホールディングス(3167)
株価 1130円(+14.26%)

配当利回り 3.36%

PER 13.24倍

PBR 1.43倍
東海地方を地盤とする燃料・情報通信会社。
株価の上昇率は14.26%と控えめですが、その値動きは非常に落ち着いていて(大きなブレはなく)、安心して長期保有できる銘柄と言えるでしょう。
配当金については過去10年以上にわたって減配はなく、かつ、2021年3月期からはほぼ毎年増配をしており、その結果、高い配当利回りをキープし続けています。
また、アクア商品やクオカードなど、複数の中から選択できる株主優待も、選択する商品によっては高い利回りとなり、この銘柄の大きな魅力です。
●五洋建設(1893)
株価 1943円(+121.30%)

配当利回り 2.68%

PER 15.16倍

PBR 2.68倍
準大手ゼネコンですが、海洋土木(マリコン)では最大手。また、洋上風力発電に注力し、脱炭素関連銘柄(環境関連銘柄)としても有名です。
好調な業績のもと、株価はこの1年間で2倍以上に上昇するも、高市総理の主要政策の1つである「国土強靭化」という息の長いテーマもあり、これからも長期的に期待できるでしょう。
また、株主還元の基本方針として、積極的な株主還元を掲げている(配当性向35%を目標としている)ことは、配当金目的の投資スタンスとしては、非常に心強いでしょう。

●オートバックスセブン(9832)
株価 1520円(+3.54%)

配当利回り 3.95%

PER 13.26倍

PBR 0.88倍
オートバックスを全国展開する、自動車用品店最大手。
株価は(大きな値動きはなく)1年前とほぼ変わらない水準で、相場全体の上昇率と比べると物足りないですが、一方でこれは、株価は非常に安定していると捉えることもできます。
そして相場全体の上昇により、全体的に配当利回りの水準が下がっている中で、約4%の配当利回りは貴重な高配当銘柄と言えるでしょう。また、配当金額は長年にわたって年間60円(記念配当除く)を維持していることも、配当金目的の投資スタンスとして大きな安心材料です。
あと、年間2000円相当の株主優待も魅力です。
■配当利回り5%超は魅力的
●LIXIL(5938)
株価 1672円(+1.24%)

配当利回り 5.38%

PER 40.06倍

PBR 0.72倍
トステム、INAX等が統合して誕生した、建築材料・住宅設備機器業界の最大手企業。
オートバックスセブン同様、株価は1年前とほぼ変わらない水準で、相場全体の上昇率と比べると物足りないと感じるかもしれません。しかし長期的な視点で見れば、株価は約5年前の高値(3000円超)をピークにした下落基調からは、現在の水準で下げ止まっているとも捉えることができます。
また、2026年3月期の配当性向は300%超(配当金額は利益の3倍超)と異常な水準ですが、「長期にわたり安定した配当を実施することを株主還元の基本」とし、実際、(赤字や極めて低い利益のときにも)長年にわたって減配なく、安定して配当金は支払われています。今後もそのような配当重視のスタンスを信じるなら、現在、ゆうに5%を超える配当利回りは大いに魅力的でしょう。
●ENEOSホールディングス(5020)
株価 1386円(+103.37%)

配当利回り 2.45%

PER 8.98倍

PBR 1.11倍
国内シェア5割の石油元売り首位。
割安な株価や株主還元の姿勢から、数年前から概ね上昇傾向にあった株価ですが、ここ最近は、とくに原油価格上昇等による業績アップを追い風にさらに上昇率を高め、結果、この1年間で2倍以上に上昇しました。

「1株30円の配当を起点とする、業績に応じた累進配当」に加え、「当期利益の50%以上を配当・自社株買いで還元する」という積極的な株主還元の姿勢は、非常に心強いと言えます。
また、10倍を下回るPERは割安感があり、1.11倍のPBRも、決して割高とまでは言えないでしょう。
●シチズン時計(7762)
株価 2256円(+160.21%)

配当利回り 2.22%

PER 20.02倍

PBR 1.88倍
大手精密・電子機器製造会社で、腕時計と工作機械が2本柱。
株価は1年間で2.5倍以上にも上昇し、今回の10銘柄の中で上昇率はトップです。
株主還元方針は、安定的かつ継続的な配当を重視することを掲げ、DOE5%以上を目安としています。DOEとは、株主資本配当率(株主資本に対する配当金の割合)のことで、配当還元の目安として一般的な「配当性向(利益に対する配当金の割合)」と違って、業績に比較的影響されることなく、配当金が安定しやすいとされています。
ちなみに2020年3月期・2021年3月期は赤字・減配となりましたが、無配ではなく、配当金は(少額ながらも)支払われたことは、配当金目的の投資スタンスの視点からは、大いに評価しています。なお、2022年以降は業績は回復し、現在、増配を続けています。
■TOBでやむなく売却
●ビーアールホールディングス(1726)
株価 526円(+59.39%)

配当利回り -

PER -

PBR -
中国・関西地盤のPC橋梁大手。
横河ブリッジホールディングスによるTOB(株式公開買付)により、2026年6月1日に上場廃止となりました。
なお、上場廃止までに売却しないとTOB価格での買取となることから、TOB発表後には、市場での株価はTOB価格前後に収斂することがほとんどです。実際、ビーアールホールディングスにおいてもTOB発表後、株価は一気にTOB価格である530円程まで上昇し、大幅な上昇率となりました(私は市場で売却)。

株主還元に積極的な会社で業績も安定しており、せっかく見つけた優良銘柄だっただけに、今回のTOBで手放さざるを得なかったことは残念でした。
いずれの銘柄も、私は一生涯保有するつもりで厳選した銘柄です。
なので当然、今回紹介したすべての銘柄は(TOBで上場廃止となるビーアールホールディングスを除いて)今も持ち続けています。そして将来、どれだけ上昇しようが(もしくは下落しようが)売却するつもりはなく、配当金を楽しみながら、ずっと持ち続けるつもりです。
もっとも、配当方針がガラリと変わって、今後の配当金の支払いが絶望的となった場合は、あらためて考えることにはなりますが(もっとも、そのような事態になる可能性は極力低い銘柄を選びました)。
高配当株投資に興味はあれども、その銘柄選びに悩んでいる人にとって、少しでも参考になれば幸いです。

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藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)

ファイナンシャルプランナー

1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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(ファイナンシャルプランナー 藤原 久敏)
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