※本稿は、加藤俊徳『80代でも若返る脳』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
■医師が勧める、脳が喜ぶ「人為的な変化」
「いつもとちがう“変化”」を起こすと、先述した脳番地の多くはびっくりしながらも張り切って対処に動き出します。日常生活で脳が喜ぶような「人為的な変化」を起こしていくのは、80代を超えて50代並みの認知機能を保つ多くのスーパーエイジャーが得意とするところです。
私がおすすめする日常の変化は「音読」。
いつもであれば黙読するところを、声に出して、しかもスピードを変えてみるという「変化」をつけてみるのです。
音読は子供の頃に国語の授業以来という方も多いでしょう。実は、60代、70代、80代の脳にとって音読はとてもいいことです。「成長する脳」という点で、子供も高齢者も変わりはないからです。
音読をすると次のような脳番地リレーがおこなわれます。
①「視覚系」が1文字ずつ文字を拾ってひとつながりの文にする
②「記憶系」が蓄積されている言葉と結びつける
③「理解系」で意味を理解する
④「伝達系」で文章が伝えようとすることをイメージする
⑤「運動系」が肺、喉、舌、唇を使って発声する
⑥「聴覚系」で自分の声を聞く
⑦「思考系」が発音や言い間ちがいなどを確認する
⑧「感情系」が(一連の流れから)楽しさや達成感を得る
音読を始めると最初の変化として「声が出しやすくなる」「聞こえがよくなる」を実感するでしょう。
つづいて、日常会話での「あれよ、あれ」「あのー、そのー」など、言葉の出にくさも改善されていきます。
また、顔や舌の筋肉が鍛えられるので表情が豊かになるほか、嚥下能力も向上します。
■「音読」は準備運動から始める
いきなり声を出そうとすると、声がかすれたり、つっかえたりとスムーズ音にいきません。
音読は複数の筋肉を使いこなす点でスポーツと同じです。スポーツの前に準備運動をするように、音読の前にも次ページの方法で、肺、喉、舌、唇などをほぐして整えておきましょう。
①準備運動ための準備運動~腹式呼吸
声を出す前に、まず「腹式呼吸」をしておきましょう。背筋を伸ばしお腹に手のひらを添えて、鼻から吸って口からゆっくりと吐きます。吸ったときにお腹がふくらみ、吐いたときに凹む動きを手のひらで感じてください。
②準備運動~五十音を読む
1分ほど腹式呼吸をしたら、声を出していきましょう。「あー、いー、うー……」と、1字1字を伸ばしながら、大きく口を動かして五十音を声に出していきます。
あ行・か行は不安定でも、ま行に入る頃には「いい声」になってくるはずです。
■音読する対象は楽しい気持ちになるものを
準備運動が終わったら、さまざまな音読を試してみましょう。
音読をするときは、背筋を伸ばして姿勢をよくします。
手や腕は緊張せずにリラックスして本などをもちましょう。もちろん、机の上などに置いても構いません。
音読する対象は、前向きな気持ちになるものがおすすめです。
好きな小説でも、興味のある詩集や短歌、また昔懐かしい歌の歌詞でも構いません。楽しい気持ちになり、感情系が刺激されるものを選びましょう。
それでもいい対象が見つからないという方は、手前味噌で恐縮ですが、現代文のカリスマ講師である出口汪先生との共著の『大人の脳が元気になる! 音読1日1分』(新星出版社)を検討してみてください。
読者の皆さんが小学生や中学生時代に国語の授業で習った『枕草子』『徒然草』『どこかで春が』『虫けら』『ゆずり葉』『月夜の浜辺』などが収録されています。
子供の頃を思い出しながら、懐かしい気持ちで音読できるでしょう。
■「音読バリエーション」で変化をつける
◆「助詞を強調した音読」
文字を追って声を出していると、「読む・話す」に集中しすぎて、ついつい「聞く」が疎かになることがあります。はっきりした発音、大きな声を意識すると、自然と音が拾いやすくなって「聞く」ができます。
また、「脳に聞かせる気持ち」を持ちながら声を出すのもいい方法です。脳は名詞と助詞の差に敏感なので、助詞を大きな声にして音読すると、文章の理解度が上がります。
助詞に下線を引いた次の文を実際に音読して感覚をつかんでみましょう。
「人間の脳は死ぬまで成長を続ける」
◆「遅口ことば」と「早口ことば」
人に説明をするときは理解を促すためにゆっくりとした口調、急いでほしいときは早口でと、状況によって私たちは話すスピードを切り替えています。
コミュニケーション能力に関わる伝達系が発達している人は、状況に加え相手の様子も慮りながら、上手に口調に緩急をつけています。
「遅口ことば」「早口ことば」のトレーニングを重ねると、話すスピードの切り替えがスムーズになるので、相手に応じたスピードに自在に調整ができるようになってコミュニケーション能力(伝達系)が鍛えられていきます。
同じ文章を「遅口」と「早口」の二度音読して伝達系を鍛えていきましょう。
■同時にふたつ以上の「ながら動作」で鍛える
運動系から連鎖的に、複数の脳番地をトレーニングするコツは「同時にふたつ以上の動作をおこなう」ことです。
例えば、音楽に合わせながら足踏み。音楽を聞くことで聴覚系を刺激し、それにあわせての足踏みは思考系や運動系を刺激します。
私がよくおすすめするのは、その場で足踏みをしながら両手ジャンケンというトレーニングです。「足踏み」と「両手ジャンケン」を同時進行するには思考系、運動系、理解系の綿密な連携が必要です。
ちょっと今、足踏みをしながら両手ジャンケンをやってみましょうか。左右の手で同時に「グー・チョキ・パー」を出しますが、最初は左手が勝つように、次は右手が勝つように出してください。
どうでしょうか?
「あれ? 右手がパーなら左はチョキ?」
「ジャンケンに気を取られて足が止まる」
「足踏みがリズミカルにできない」
などなど、結構難しいですよね。
いろんな「あれ?」があって、思わず笑いそうになると思いますが、「あれ?」という声も笑い声も、閉じ込めずにどんどん出しましょう。声を出す、その声を聞くことで、愉快な気持ちになっていき、感情系が刺激されます。
■運動系の記録は未来の自分へのプレゼント
ぜひ、今日の「足踏みジャンケン」を1段階で評価して日記に記録しておいてください。
「全然できなかった」「できなさすぎて大笑いした」「1分やったら頭も疲れた」など、ひと言コメントを記入すると、上達具合もわかりやすくなります。
記録は思い出しながらおこなうので記憶系が働きます。
記録を始めると記録から伝わってくる自分の成長が「やりがい」となって、継続の後押しとなってくれます。「何時から何時まで」「1段階評価で何点」「終わった後の気分」などの記録を振り返ると「がんばってきたな~」と、誇らしい気持ちになり、感情系が刺激されます。
「記録」とは、成長の軌跡であり、未来の自分へのプレゼントなのです。
■あえて足と発声をズラすトレーニング
ここからは、ながら動作のバリエーションを紹介していきましょう。まずは「散歩しながら」のバリエーションです。
◆ぱぴぷぺぽ散歩
前述の全脳番地を刺激する「遅口ことば」「早口ことば」と散歩の合わせ技です。
まずは、いつものスピードで歩きましょう。このとき1歩ごとに「ぱ」「ぴ」「ぷ」「ぺ」「ぽ」と声に出します。例えば「右足=ぱ」「左足=ぴ」「右足=ぷ」……です。
軽くクリアしたと思います。次は歩くスピードをいつもの2倍にアップし、歩調に合わせ1歩ごとに「ぱっ」「ぴっ」「ぷっ」「ぺっ」「ぽっ」と声を出しましょう。
ちょっと息切れしてきたと思うので、歩く速さを通常の半分のスピードに落としましょう。もちろん、1歩ごとにゆっくりと「ぱー」「ぴー」「ぷー」「ぺー」「ぽー」と声も合わせてください。
さて、ここから難易度が上がります。
「早歩き」をしながら、「ぱー、ぴー、ぷー、ぺー、ぽー」と遅口で声を出しましょう。このとき足のリズムと発声のリズムは異なります。「1歩=1音」ではなくあえてズラしてください。
慣れたところで、足と口のスピードを入れ替えます。
「足」と「口」のスピードを正反対にすると、片方がもう片方に引きずられ、がんばって修正しなくてはいけません。この難しいことをおこなうのがとてもいいトレーニングなのです。
散歩の後は、体はもちろん、脳も心地いい疲れに包まれています。この「体と脳の両方が疲れる感覚」を積み上げていくことが脳の若返りにつながります。
■1分ほどで脳がクタクタになる感覚
◆「5秒ルールしりとり散歩」「つなげるしりとり散歩」
一緒に歩くお仲間がいるなら、挑戦してほしいのが「しりとり」です。私が息子と楽しんでいる「加藤流しりとり」をふたつ紹介しましょう。
「5秒ルールしりとり」は、5秒以内に単語を返すというもの。「しりとり」といえば子供の遊びのイメージがあると思いますが、座った状態のしりとりと、歩きながらのしりとりでは「5秒」の長さが全く異なるのです。
散歩に5秒ルールしりとりを加えると、散歩中の脳は膨大な情報を処理することになります。散歩で運動系に刺激を与えながら、思考系、伝達系、聴覚系、理解系、記憶系が鍛えられるのです。
さらにハードルが上がるのが「つなげるしりとり」です。次のように相手の単語に自分の単語をどんとんつなげていきます。
相手「まめ」
自分「まめ、めだか」
相手「まめ、めだか、かめ」
自分「まめ、めだか、かめ、めがね」
相手「まめ、めだか、かめ、めがね、ねこ」
「つなげるしりとり」も、「単語」だと頭のなかで「絵」と連想づけて記憶することもできますが、これが「数字」になるとさらに集中力が必要になります。
相手「3」
自分「3、5」
相手「3、5、1」
自分「3、5、1、9」
相手「3、5、1、9、1」
つなげる数字の桁数を増やすと、さらにハードルが上がり、1分ほどで脳がクタクタになる感覚が味わえるでしょう。
■安定したら、7から8に数を変えてみる
◆「7の引き算散歩」
歩きながら、100から7をどんどん引いてみましょう。
「100-7=9、9-7=8、8-7=7……」
平坦な道を歩いているときは、ゆっくりながらも計算を続けていけるのに、階段の昇降時になると計算が止まるなど、ただの引き算ですが簡単にはいかない面白さがあります。
7を引き続けた結果、最終的に出た数字は歩く距離や計算ミスなどで日によってちがうことがあります。「今日のラストナンバー」として覚えておき、日記に記録しておきましょう。
今日のラストナンバーが安定してきたら脳番地が「7」に飽きてきている頃なので、引く数字を8や11などに変えてみてください。
----------
加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医、加藤プラチナクリニック院長
新潟県生まれ。医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、助詞強調おんどく法の提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、強み弱みを診断し、これまでに1万人以上を治療。著書には、『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)などがある。
※「脳番地」(登録第5056139 /第5264859)は脳の学校(登録4979714)の登録商標です。
----------
(脳内科医、加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
