「上り」「下り」──それは往々にして“中心”と“周縁”の関係を示す価値観を体現したものになる。すなわち「どこを中心とみなすか」によって方向表示は変わる。
首都を頂点とするヒエラルキー?
東京から大阪行きは「下り」──関西圏に暮らす人々にとっては、なんとなく腑に落ちないと感じることもあるのではないだろうか。かつて明治以前は「京に上る」と言ったものだが、いまや日本の“中心”は東京であり、鉄道しかり道路交通しかり、そこを頂点とする交通ヒエラルキーがすでに確立されてしまっている。
例えばJRでは、「東京駅に近い方が起点」という原則が国鉄時代からの慣例だ。したがって、新大阪行きが「下り」となる。また1~4桁の数字で表される新幹線の列車番号は、「下り列車は奇数」「上り列車は偶数」というルールがある。車両番号も東京駅側(上り)が1号車となっている。
中国のバスは「起点→終点」が上行
路線バスでも「上り」「下り」の区別がある。こちらは定義が地域や運営会社によって異なる場合があるが、「上行」は路線の起点から終点へ向かう便、「下行」はその逆というのが通常だ。この原則は北京であっても広州であっても、全国共通だ。
国が違えば交通機関の方向についても呼び方が変わる。ただ、「内回り」「外回り」の定義が日本と中国で逆転していることと比べれば、「上行」「下行」はまだ理解しやすい分類なのかもしれない。(提供/邦人Navi)