2025年7月25日、中国メディアの環球時報は、日本の政治を取り巻く環境に3つの構造的な変化が生じたとする評論記事を掲載した。著者は内モンゴル師範大学歴史文化学院講師の張用清(ジャン・ヨンチン)氏。

張氏は、20日の参議院選挙で自民・公明両党による連立政権が議席の過半数を獲得できない結果となったことについて、日本の政治をめぐる環境で「素人化」「娯楽化」「断片化」という3つの状況が起きているとした。

「素人化」については、アイドルやお笑い芸人、漫画家、格闘技選手など文化・エンタメ界から転身し、政治経験に乏しい人が選挙によって続々と政界に進出したと紹介。多くの「素人議員」は政治的な素養が低く、しばしばその言動によって批判を浴びていると伝えた。

「娯楽化」では、日本の選挙形式がパフォーマンス化しており、政策の空洞化が進んでいることを指摘。政党の宣伝でSNSが多用されるようになり、従来の細かい政策説明や解説がショート動画やミームなど洗脳性のある低密度な情報に置き換わってしまっているとした。その例として「極右政党である参政党のX上でのショート動画やミームが数十万回再生されており、一般的な政策番組をはるかに超えるトラフィックを得ている」と紹介する一方、各党が掲げる減税政策や福利厚生政策はほぼ選挙期間中に民意を得るためのものにすぎず、実行可能な具体的な計画に欠けていると論じた。

さらに「断片化」では、与党の大敗、野党第一党である立憲民主党の不振に対し、国民民主党や参政党が大きく議席を増やしたことで国会における勢力が分化したことに言及。自民党の政治的統率力の衰退と同時に各政党間の勢力構図にも新たな変化が起きており、自民党が総選挙で大敗して連立政権が発足した1993年ごろの政局に似た混乱ぶりを呈していると伝えた。

その上で、この3つの傾向は比例代表制選挙という「選挙制度上の明らかな欠陥」に起因していると主張。比例代表制によって各党から目玉として選ばれた「素人」の有名人が政治に参入する着替えが増えたとした。また、テクノロジーの進歩も要因の一つであり、ソーシャルメディアの普及によって候補者が人気取りのための扇動な言論を積極的に行うようになったと論じた。

また、さらに深層的な要因として日本の経済や社会が直面する困難に言及。

不景気と高齢化の中で既存の政治への不信感が募り、「日本人ファースト」を掲げるポピュリズム勢力に票が流れ、特に若い有権者を中心として「外国人によって資源が侵食されている」という不安から排外主義的な主張に傾倒しつつあると分析した。

張氏は、日本の政治を取り巻く環境の変化が国内統治の機能不全の現れであると同時に、世界的な政治の俗化の縮図でもあると指摘。実務的で専門的かつ責任ある統治システムを再構築できなければ、日本は国力低下という運命から抜け出せず、さらには地域や世界の情勢をも不安定にさせることになると結論づけている。(編集・翻訳/川尻)

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