blink-182(ブリンク182)の新作『NINE』を紐解き、ポップパンクの系譜と未来を語り合うインタビューシリーズ。第二弾は、TOTALFAT・Shun(Vo, Ba)にご登場願い、彼がパンクに惹かれてきた原風景を語るとともにblink-182の音楽的魅力を紐解いた。


先日Kubotyが脱退し、3ピースバンドとして新たに生まれ変わったTOTALFAT。名フロントマン・トムが脱退してから新たなバンドストーリーを描き始めたblink-182の歩みと奇しくも重なるものを感じるが、だからこそ、バンドに対するロマンと夢を刷新し続けるために音楽的な変化とトライを恐れないブリンクの姿勢を的確に解析してくれた。パンクとひと言で言っても、その奥には、現行のポップミュージックを貪欲に消化してきた痕が見えるミクスチャーな音楽性。その点でも、blink-182とTOTALFAT、両バンドの間には日米の境界を超えた共通項を見つけることができる。

バンドストーリーを更新するために必要なもの。パンクロックを刷新し変化を遂げていくための「音楽的なインテリジェンス」――ヒップホップ隆盛以降のサウンドに明確なアプローチを見せる『NINE』の特徴と、パンクバンドそのものの歩みが明確に見えてくるインタビューとなった。


―blink-182の新譜『NINE』を通じて、メロディックパンクの系譜、もっと言えばパンクに魅せられてきたShunさんにとってのバンドロマンも伺えたら嬉しいなと思ってるんですけど。

Shun:任せてくださいよ! 俺にとって一番の得意分野ですからね(笑)。

―頼もしいです。とは言え、まず伺いたいのはTOTALFATのことで。つい先日のライブでKubotyさんが脱退されて、その直後に3ピースになったTOTALFATとして初のシングルを配信でリリースされました。ここまで20年やられてきたTOTALFATというバンドを、これからどう動かしていこうと思われているところなんですか。


Shun:TOTALFAT自体は、今すごく視界がクリアになっているんですよ。正直に言うと、Kubotyが脱退すると言い出した当時は、バンドの中で熱が100%通い切ってると思えない瞬間もあって。仲悪いとかじゃなくて、深いところで何かを言い合えないような……手加減と違和感があった。だからKubotyが辞めるって言い出した時にも「やっぱりな」っていう感覚があったんですよ。で、そこからしばらくはお先真っ暗だったんですね。この先どうしようって。


―20年間この4人でやってきたし、4人で作り上げてきたバンドが3人になるというのは、100が70になるっていう話じゃないですからね。

Shun:そうそう。一度ゼロになるっていうことだから。でも、当時JoseくんやBuntaは違うことを考えてたかもしれないけど――とにかく俺の中では「この4人じゃないとTOTALFATじゃないから、もうダメだね」っていう発想にはなれなかったんですよ。新しいTOTALFATをどうやって組み立てたらいいんだろうっていうことしか頭になかったんです。で、後々聞いたらJoseくんは「Kubotyがいないなら辞めようかな」って思ってたらしいんですけど……でも、俺は意を決して「何人になってもTOTALFATをやりたい」っていう話をしたんですよ。
そしたらBuntaは「そんなの当たり前じゃん」って言ってくれて。そこからJoseくんも、とにかくやってみようかっていう気持ちになってくれて。で、新しいギターは要らないよね、他にはいないよねっていう話になって。これまでのTOTALFATを3人でなぞって劣化版を作るのか、3人の新しいTOTALFATをゼロから作るのかって言ったら、僕らは後者を選びたいと思ったし。

―4人でやってきた今までも、作品ごとに音楽を変化させて、定型を突き破るようにしてきたバンドですし。

Shun:そうなんですよ。
それをやるのがTOTALFATだと俺も思ったし。そういう話になってすぐに曲を作り出して、そこからどんどん視界がクリアになっていったんですよ。それに、3人の形で一番オリジナルな音楽をどう作れるかって考えれば考えるほど、俺らにはパンクしか見当たらなくて。作品ごとにミクスチャーなことはやってきましたけど、その根底にあったパンクを、もう一度研ぎ澄ますような。そういうモードになってきてると思います。それこそ、3人でどういう作品を作ろうかって考えてる時に、ブリンクのアルバムはスゲえ聴いてましたし。
ブリンクも3ピースだし、吸収できるところが未だにたくさんあるバンドだなって思って。

パンクロックをどう刷新するか?

―ブリンクの『NINE』という作品は、ポップパンクをベースにヒップホップ以降をどう咀嚼するかをテーマにしたであろう音色、リズムに満ちている作品で。時代の流れの中でパンクロックをどう刷新するかという意味でも、TOTALFATがやってきたことと重ねられる部分は多かったと思うんですが。

Shun:そうかもしれないですね。いちファンとしては『California』が大好きすぎるんですけど(笑)。でも、音楽をやっている身としては、『NINE』はものすごくモダンなアルバムだと思ったし、チャートに入って然るべき作品だと思いました。トラッキングの部分で、言われたようにヒップホップ以降をうまく咀嚼していて。バンドサウンドなんだけどバンドじゃないサウンドデザインがされてるんですよ。メロディもリズムも、今までで一番ループが多くて。ポップパンク的なものとは別だけど、でもキャッチーなフレーズがリフレインで入ってきて、気づいたら歌っちゃう楽曲構造になってる。

―先行で出ていた「Blame It On My Youth」なんかは、まさにそういう構造の中でブリンク印のメロディを聴かせる曲ですよね。

Shun:そうそう。それってヒップホップで言う「フック」と一緒のものだし、何かをサンプリングしたトラックを同じBPMで回しながらノリを作っていく手法でもあるし。それを人力でやってるのが『NINE』だと思ったんですよ。トラヴィスがルーツのヒップホップから持ってきたものもあるだろうし、マークはAll Time LowのアレックスとSimple Creaturesを始めて、デジタルなポップパンクにトライしたことで吸収したものもあったと思う。そうやってオリジナルメンバーのふたりが持ってきたものに対して、マットは元々やってきたAlkaline Trioでめちゃくちゃメロウで素晴らしいアルバムを出したじゃないですか(『Is This Thing Cursed?』/2018年)。そこでマットがメロウな部分を昇華できたからこそ、ブリンクのオリジナルメンバーふたりが作ったモダンなものに乗っかることができたのかなって。そういう絶妙なバランスでできた作品のような気がしましたね。

―『California』は、ブリンクの名フロントマンであったトムが脱退してから一発目の作品だったからこそ、いわゆるブリンク節を自分たちで整理するようなところもあったと思うんですね。だからこそキッズにとってのブリンク名物になった「Whats My Age Again?」をセルフオマージュしたMVを作ったりしていたと思うんです。

Shun:そうですよね。

―今のお話で言うと、新しい3人になったブリンクでも変わらないブリンク節を提示したのが前作『California』なら、今作は新しい3人だからこそできることはなんなのか、この時代にロックバンドをやるにはどういうサウンドを鳴らすべきなのかを提示した、新たなブリンクの本当の意味での1作目のような質感がありますよね。

Shun:アメリカって、ストリーミングサービス時代のサウンドに対しても、俺らより仕上がってるところがあると思うんです。たとえばチャンス・ザ・ラッパーを聴いている時にアルゴリズムでブリンクの名前が上がってきても、違和感なくブリンクを聴けるようなサウンドに仕上がってるのが『NINE』だと思うんですよね。ギターは特に抑えられてると思うし、基本はヴォーカルとリズムトラックっていう感じの曲になってる。

Shunから見たブリンクの変化

―これだけパンクバンド、ロックバンドに夢を見てきたShunさんからすると、この変化はどう映るんですか。

Shun:僕は、この変化がすごく知的なものに感じて。一般的にはパンクバンドやパンクそのものに対して「荒くれ者」とか「アウトロー」っていうイメージがあるけど、僕はそう思ってなくて。実はパンクって知的なものだと思ってるんです。Bad Religionをやってるブレット・ガーヴィッツが博士の資格を持っていることもわかりやすいですけど、インテリジェンスのある人間が世の中に発信するものじゃないと、僕はカッコいいと思わない。そのサウンドメイキングにも、皮肉的なところにも、知的さって必ず宿ってくるものなんですよね。

だからblink-182が新しいことに着手していることに関しても、パブリックイメージがすでにあるバンドが敢えてそれを外すにはインテリジェンスが不可欠だったと思うし、ブリンクは知的なバンドであるっていうことを証明していると思ったんです。

―あえて杓子定規的に言うと、パンクはお馬鹿でいいし遊び場でいいっていうイメージがあって、しかもそのイメージは90年代前半にブリンク自身が作ったとも言えますよね。だけど一見真逆に思える「インテリジェンス」がパンクには必要だと。

Shun:パンクは馬鹿でいいっていう発想って、パンクロックのセカンドウェーブだと思うんですよ。そういうイメージを作った主犯格はまさにブリンクかもしれないんですけど(笑)。それに救われた人もたくさんいると思うんですよ? 学校行きたくなかったヤツが「俺でもクラスのヒーローになれるかも」って思えたりとか。ただ、その副作用もあったと思うんですよね。あまりに「パンク=馬鹿でいい」って思われすぎたことによって、ブームは去っちゃったのかなっていう気がしていて。

まあ、もしかしたら「お馬鹿の音楽」のまま盛り上がり続けた可能性もあるかもしれないんだけど……でも、2001年の9.11が一番大きかったと思っていて。あの大規模なテロを境にして、特にアメリカの人たちは馬鹿になれる音楽から離れたと思うんですよね。実際、9.11以降はわかりやすくエモが主流になったじゃないですか。

―キッズのファッションもゴス化して、90年代のエモとは違う形で、無力感や諦観を背景にした「エモ」が表出していきましたよね。My Chemical Romanceを筆頭に。

Shun:そうそう。で、今度は黒人の大統領(バラク・オバマ)が誕生したことで、ブラックミュージックが勢いを増した。世の中の流れに対してアメリカの人はすごく敏感で、人種間のことが経済にも生活にも影響を及ぼすから、それはそのまま音楽をはじめとしたカルチャー全般の流れに映りやすいんですよね。で、そういう早い流れの中で生き残ったパンクバンドたちって、やっぱり知的さを感じさせる音楽にシフトしていったんですよ。

―ブリンクが『blink-182』をリリースしたのも9.11を経てのことでしたね。シリアスな作風だったし、なによりサウンドがそれまでとは一線を画す実験的なものでした。

Shun:時代に向き合って、変化することを恐れなかったというか。その中で、最初から世間に対するメッセージ性を持ってインテリジェンスに満ちた歌を歌ってきたBad Religion、NOFX、DESCENDENTSみたいなバンドはずっと時代の真ん中にいて。やっぱりこの人たちは間違ってなかったんだと思える。なんなら、Bad Religionは今こそ動員の数がさらに伸びてるわけじゃないですか。それが証明してると思うんです。

―逆に言えば、ブリンクがパンクを青春の遊び場にして、お馬鹿をしてもいいっていうイメージを作ったのも、上の世代に対する皮肉だったと思うんですね。「ただ唾を吐くだけがカッコいい」というイメージで定着してしまったのはまさに副作用だったとは思うんですけど。ただ、そこから着実にブリンクは変化してきた。それを横目に見ながらやってきた日本のパンクシーンに目を向けてみると、どういう闘い方をしてきたと感じられていますか。

Shun:いやあ……日本のパンクバンドで言うと、今話したような「パンクのインテリジェンス」を汲めずにガワだけを作っていた人のほうが多かったと思うんですよ。やっぱり真似事だけじゃ、ああはなれないわけです。ファッションとかも含めてブリンクは圧倒的にカッコよかったから、真似したくなるのもわかるんですけどね。

Shunとブリンクとの出会い

―そういうShunさんご自身は、ブリンクとどういうふうに出会って、どういうふうに影響を受けてきたんですか。

Shun:出会ったのは高校2年生の頃かな。元々は、もっと男臭いパンクロックが好きだったんですよ。だから、ブリンクに関しては『Enema Of State』くらいまで「ブリンク聴いてる人はちょっとゴメン」とか言っちゃうくらい、聴かず嫌いだったんです(笑)。でも、友達のお姉ちゃんがコテコテのポップパンク好きで、ファッションもブリンクに影響を受けてロングソックスを履いてる感じだったんですよ。で、そのお姉ちゃんに「ブリンク最高だよ!」って何度も言われてるうちに、なんとなく聴くようになっていっちゃったんですよ。そしたら、『Enema Of State』の音の処理の面白さとか、普通の曲じゃないっていうことにどんどん気づいていって。

―具体的にいうと、そのサウンドのどこが面白かったですか。

Shun:たとえば「Anthem」を聴くとわかりやすいんですけど、ヴォーカルにずっと謎のショートリヴァーブがかかっていたり、声が遠かったり、演奏も浮遊感があったり。それに、これはたぶんですけど……あのアルバムはドラムを最後に録ってるんですよ。

―ああー! 一般的な録音とは真逆の順番なんじゃないかと。

Shun:そうそう! これは20年近くバンドをやっている自分の経験と重ね合わせた憶測なんですけどね。あの作品からトラヴィスが加入してるじゃないですか。だから、必然的にドラムを最後にせざるを得なかったところもあると思うんですね。ドラムを録音する前に、ドラムがどんなプレイをするのかがわかる前に、ギターとベースと歌だけで曲をFIXさせてたんじゃないかなって。そこが独特のサウンドメイクになってる気がするんですよ。

―そうなると、トムのギターの変さもわかってくるというか。トムのギターって、リズムに回っているように聴こえる場面も多々ありましたよね。

Shun:トムって、トラックメイカーでありラッパーだと思うんですよ。ギターでトラックメイクして、ラップに近い歌唱なんだけど、たまたまメロディが半端じゃなかったっていう。そう考えると、結構奇跡的なバランスで成り立ってたのが当時のブリンクだったと思うんです。それが一番表れてたのが『Enema Of State』だった気がしていて。

―『Enema~』を今聴くとわかりやすいですけど、曲の構成としても、予想外のところに飛び続けるじゃないですか。普通のポップミュージックとは違って、曲の中に一切の定型がない。

Shun:……まあ、こうしていろいろ語りはしましたけど、結局はトムの透明感のある声の中毒になって、気づいたら「ブリンク最高!」って言うようになってた気もするんですけど(笑)。で、そこにトドメを刺したのが『Take Off~』だったと思うんですけどね。ドラムも何も決まっていない時点で曲を完成させたアルバムを経て、そこにヒップホップのビートも叩けるトラヴィスが入ってきて、じゃあこれで何ができるかな?って考えて作ったのが『Take Off Your Pants and Jacket』だったと思うんですよ。

―「Stay Together For The Kids」のようなメッセージソングも増えて、トム、マーク、トラヴィスの3人でできること、やりたいことが明確になった作品でしたね。だからこそ曲の強度も半端じゃなかった。

Shun:そう考えると、『NINE』にしろ、前作『California』にしろ、今もずっと「ブリンク最高!」って言える作品を生み出し続けてるのがすごいと思うんです。それに、さっき言ったインテリジェンスの部分で考えると、マークが人格者であるっていうところにも俺は憧れてて。ドラムのトラヴィスはもちろんすごいけど、やっぱりブリンクの知的な部分はマークが担ってると思うんです。3年前アメリカまでブリンクを観に行ったんですけど、そこでもマークはすごく落ち着いていて、纏っている空気感からして紳士なんですよ。ロックスターという以上に、大御所のハリウッドスターみたいな。

パンクに惹かれる理由

―ブリンクという以上に、パンクそのものに対してインテリジェンスを大事にして聴かれてきたのは昔からずっとなんですか。

Shun:年齢を重ねるごとに、ですかね。もともと自分は洋楽が好きで、それきっかけで英語を勉強するようになったんですね。大学も英文科に入って。そこで、人が喋っている英語や洋楽の歌詞もパッとわかるようになってきて。「そういえば、あの頃聴いていたバンドたちは何を歌ってたんだろう」と思って聴き返してみると、やっぱりブリンクの歌詞がすごいってこともわかってきたんです。「俺が好きだったあの歌、こんなにスゲえこと歌ってたんだ」ってびっくりすることも多かったんですよ。

そういう意味でも、馬鹿で子供だった俺をパンクロックが大人に育ててくれたと思ってるんです。パンクに啓蒙されたというか……パンクが人生を教えてくれた。生きる道を教えてくれる先生的なものがパンクだったし、そこに必ずインテリジェンスがあったんですよ。で、やっぱりブリンクはそれを持ち合わせてるバンドなんですよね。

―今「啓蒙」「先生的」とおっしゃいましたけど、TOTALFATの音楽に目を向けると、パンク、メタル、ハードロック、ヒップホップ……とにかくヒロイズムを感じるものを吸収してきたバンドだと思うんですね。どのフレーズをとっても赤レンジャー的というか。まさに、人の手を取って導くものとしてパンクを捉えてきたバンドがTOTALFATだと思うんです。

Shun:そうですよね(笑)。それこそ昨日、この前の台風でダメージを食らった八王子に行ってきたんですけど――そこで土砂を掻き出して帰る時に、「今日の様子を撮影した写真を使っていいですか、今日の様子を書いてもいいですか、どんなふうに書いたらいいですか」って訊かれたんです。そこで俺は、「俺が一番カッコよく見えるように書いてください」って頼んだんです。

それがどういうことかって言うと、やっぱりボランティアって啓蒙の意味合いを持つものだと思ってるんですよ。啓蒙って、無知な人を賢くさせるっていう意味を持っていて。つまり、ボランティアとして自分が表に立つことの意味って、やる気がなかった人をやる気にさせることだと思うんです。で、パッと思いつく啓蒙の手段って、恐怖か憧れくらいのものなんですよね。「お前、明日大地震が起こった時にどうすべきかわからなくてもいいんだ?」って脅すように学ばせるのか、「カッコいいだろ? 素直に人のためになりたいと思ってこんなにいい汗流してるんだぜ!」って見せるのか。恐怖よりも憧れのほうがポジティヴなエネルギーを生むのはわかるじゃないですか。それが俺の思うヒロイズムなんです。で、それはTOTALFAT、もっと言えば俺の生き方としてずっと大事にしてきたところだと思うんですよね。

―だから、TOTALFATの音楽を解析していくと、どの要素もむちゃくちゃ極端に振り切れてるっていうことがわかってくるんですけど。

Shun:そうっすよね(笑)。

―でも、それが一本の束になっているところが素晴らしいと思うんです。そういう意味で、Shunさんのブリンクに対しての憧れはどういうところにあるんだと思いますか。

Shun:うーん………ブリンクに関して言えば、ヒロイズムっていう以上に、「天性の華」がある部分に憧れるのかもしれないですね。で、その「なんか華がある」っていう部分は全然解析できない(笑)。ただ、アメリカで彼らのライブを観てわかったのは、そこにいる2万人がAメロからサビまで全部歌えるんです。それで俺らは気づいたんですよ、「ブリンクって、THE BLUE HEARTSなんだ!」って。

―なるほど。

Shun:そこにはもちろん、あっちのユース世代の代弁的なものがあったとは思うんですけど。それがずっと染み付いていて、あっちでは誰もが歌えるものになってる。その時代時代でのリアルを体現し続けてきたバンドだから今があるっていうところは間違いないと思うんですよね。

―それに、大人になっていくことも拒まず歌にしていく潔さも、今は感じられますよね。

Shun:これは『California』の曲になっちゃいますけど、「Home Is Such A Lonely Place」の歌詞なんて泣いちゃいますもんね(笑)。いつもは心安らぐ家なのに、子供がサマースクールで出ていった家はこんなにも寂しい場所なのかって。幸せの裏側に、とてもロンリーな気持ちがあるんだねって。それもマークとトラヴィスの日常会話から生まれたもので。大人になったからこそ感じられる今のこともリアルな歌にしてる……そこがいいなって思うんですよね。

大人になっていくことと同時に、ノスタルジーも拒まなくなっていく

―一方で、今作『NINE』で言うと、「Blame It On My Youth」みたいにヒップホップを咀嚼した最新形ブリンクサウンドから、意図的に青春を引っ張り出そうとしている歌が聴こえてくるのも面白いですよね。音楽的にも瑞々しくいるために、やっぱり心の奥底にある蒼さも大事にしているんだなって。

Shun:「Blame It On My Youth」って、割と早い段階からビデオが公開されたじゃないですか。壁にどんどん歌詞が塗り重ねられていくビデオ。あれも、どんどん塗り替えながら若くいようっていう気持ちが表れたものだった気がしていて。古い自分を塗り替えて、それと同時に、一番最初にあった気持ちを探すような。

―大人になっていくことと同時に、ノスタルジーも拒まなくなっていくというか。

Shun:そうですね。それを歌うっていう意味での潔さはすごく大事だと思うんですよ。TOTALFATとしても、自分たちの人生をリアルに映すっていう意味での普遍性があるものをどう作っていくかが大事になってくると思っていて。

―その普遍性って、どういうポイントなんでしょうね。

Shun:うーん……それこそ、今日語ってきたパンクの理想像を追い求めることが、普遍性になるんだと思います。大人が聴いても納得できるもの。大人になりながら聴いても、憧れを抱けるもの。それをどう作っていくか、それがこれからのTOTALFATなんじゃないかな。そこにはもちろん、子供たちが純粋な憧れを抱けるものがパンクであるべきだっていう気持ちもあるんだけど。

―やっぱり、力のない人を救ったり肯定したりできるものがパンクバンドだっていう理想は大事にされていますよね。そこがTOTALFATの素敵なところだと思います。

Shun:ああ、それは特にBuntaが大事にしているところだと思うんですけど。「パンクって誰のためにあるんだよ?」って問い続けてるし、弱いヤツで結託して強いヤツを倒そうっていうのとは違うんですよ。弱いヤツでもいていい場所。弱いヤツでも自由になれる場所。それが俺らの大事にしている「パンク」だと思うんですよ。それを貫きたいですね。

―おそらく遠くないうちに聴けるであろう新しいTOTALFATのアルバムも楽しみにしてますから。

Shun:それこそ3人で作った新しい曲にも、「年齢とか性別とかを言い訳にすることをやめよう」っていう歌があるんです。「誰も排除しない」っていうマインドの中には、「何も諦める必要なんてない」っていう気持ちも入ってると思ったんですよ。おばちゃんだから、とか、おじさんだから、なんて言い訳は必要ない――そういうことを歌っていきたい。3人でリスタートを切るからこそ、俺らが惚れてきたパンクっていうものをどれだけ表現できるか、諦めずに生き切れるか。それを改めて歌いたいと思ってます。

<INFORAMATION>

TOTALFAT・Shunが語るblink-182「天性の華がある部分に憧れるのかもしれない」

『ナイン』
blink-182
ソニーミュージック・インターナショナル
発売中

各配信サイトにて配信中。
https://sonymusicjapan.lnk.to/BLINK182NINE

収録曲
1. The First Time | ザ・ファースト・タイム
2. Happy Days | ハッピー・デイズ
3. Heaven | ヘヴン
4. Darkside | ダークサイド
5. Blame It On My Youth | ブレイム・イット・オン・マイ・ユース
6. Generational Divide | ジェネレーショナル・ディヴァイド
7. Run Away | ラン・アウェイ
8. Black Rain | ブラック・レイン
9. I Really Wish I Hated You | アイ・リアリー・ウィッシュ・アイ・ヘイテッド・ユー
10. Pin the Grenade | ピン・ザ・グレネイド
11. No Heart To Speak Of | ノー・ハート・トゥ・スピーク・オブ
12. Ransom | ランサム
13. On Some Emo S**t | オン・サム・エモ・シット
14. Hungover You | ハングオーヴァー・ユー
15. Remember To Forget Me | リメンバー・トゥ・フォーゲット・ミー
16. Out Of My Head | アウト・オブ・マイ・ヘッド ※日本盤ボーナストラック

【関連サイト】
オフィシャルサイト(英語) https://www.blink182.com/
ソニー・ミュージック アーティストサイト(日本語) https://www.sonymusic.co.jp/artist/blink182/
オフィシャルFacebook @blink182 https://www.facebook.com/blink182/
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TOTALFAT・Shunが語るblink-182「天性の華がある部分に憧れるのかもしれない」

TOTALFAT「PUNISHERS NIGHT 2020」
2020年1月23日(木)東京・渋谷CLUB QUATTRO
2020年1月25日(土)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2020年1月26日(日)大阪・梅田CLUB QUATTRO
http://totalfat.net/