1962年10月5日にシングル「Love Me Do」でデビューを果たし、わずか8年足らずの活動期間にポップミュージックの歴史を塗り替えた英国はリヴァプール出身の4人組ザ・ビートルズ。彼らが極東の地・日本でどのように伝わり、どのような経緯で日本武道館公演を成し遂げたのか。その舞台裏で活躍した立役者や、当時の様子をリアルタイムで目撃してきた人たち、そしてビートルズ解散後に彼らの虜となった著名人らの証言により、「ザ・ビートルズ」という巨大な存在を改めて捉え直す、ユニークなドキュメンタリー映画『ミスタームーンライト~1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢~』 が9月6日にBlu-ray発売される。なお映像特典として漫画家・浦沢直樹と、本作の監修を務めたビートルズ研究家・藤本国彦による対談も収録されている。
ビートルズのドキュメンタリー作品は、これまでにも様々な切り口で製作されてきた。アップル・コア公式作品では、4人の誕生から解散までを追ったアルバム、ドキュメンタリービデオ、ドキュメンタリーブックの3部構成となる『ザ・ビートルズ・アンソロジー』プロジェクト(1995年)や、ライブバンドとして活躍していた時期のビートルズに焦点を当てたロン・ハワード監督による『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』(2016年)、そして曰く付きの「ゲット・バック・セッション」を再構成したピーター・ジャクソン監督による合計約8時間の長編ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ: Get Back』がある。これらは「公式作品」だけあり、ビートルズの楽曲や映像など、未発表の素材を含めてふんだんに使用されているのが特徴だ。
©「ミスタームーンライト」製作委員会
それに対し、いわゆる「非公式」のドキュメンタリーは、限られた素材を用いていかに「ザ・ビートルズ」の輪郭を浮かび上がらせるか? が腕の見せどころとなってくる。最近では、インド滞在中のビートルズに偶然遭遇したカナダ人の青年ポール・サルツマンが、4人とアシュラム(僧院)で過ごした8日間について、その半世紀後に振り返ったドキュメンタリー映画『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』(2020年)が記憶に新しい。オフィシャル作品のように、ビートルズの楽曲や映像を自由に使うことはできないが、サルツマン自身が撮影したファブフォーの貴重な写真、ビートルズ研究の第一人者マーク・ルーイスンをはじめとする関係者へのインタビューを交えながら、独自の切り口によって「新しいビートルズ像」を作り上げることに成功している。
本作『ミスタームーンライト~1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢~』も、まさにそうした手法によってビートルズの知られざる一面を紹介している。
デビューしてすぐ、本国イギリスではすでに熱狂的なファンを生み出していたビートルズも、日本ではまだ無名の存在だったという。「ビートルズに最も近いジャーナリスト」として知られる『ミュージック・ライフ』の元編集長・星加ルミ子でさえ、デビュー曲「Love Me Do」を聴いたときには「ピンと来なかった」と本作の中で証言している。そんな中、日本で最初にビートルズに夢中になったと自負するのは、東芝音楽工業(現ユニバーサルミュージック)の高嶋弘之。ビートルズの初代ディレクターに就任した高嶋は、あの手この手で4人をお茶の間に浸透させていく。
今となってはもう時効だろうが、自社の宣伝担当スタッフをマッシュルームヘアで揃え「今、日本の若者たちの間でビートルズの髪型が流行っている」と各メディアにアピールしたり、ラジオ局にビートルズの楽曲をリクエストさせる「サクラ」のバイトを雇ったり(そのバイトを、なんと松本隆もやっていたという証言には驚かされた)、いわゆる「ヤラセ」をも含めた草の根運動的なプロモーションを彼は行っていたという。
松本隆 ©「ミスタームーンライト」製作委員会
一方、1966年にビートルズが日本武道館公演を実現したとき、その放送権を獲得した日本テレビの佐藤孝吉 ディレクター(当時)は、彼らが何人組かさえ把握していないプロデューサーの指示により楽屋への直撃を試みる。ビートルズの広報担当トニー・バーロウと丁々発止の末、なんとか独占インタビューを取りつけた当時のエピソードを、本作の特典映像で佐藤ディレクターが臨場感たっぷりに語るくだりは必見だ。
今でこそビートルズは誰もが知る普遍的な存在であるが、当時はまだ(少なくとも日本では)何やら一部の若者たちが熱狂している「得体の知れない連中」であり、それでもその「得体の知れなさ」を、どうにか日本に伝えようと奮闘していた人々がいたのである。
そんな「得体の知れない」ビートルズが、実際に会うと非常にウィットに富んだチャーミングな若者たちであったことも、多くの人々が口々に証言している。例えば加山雄三は、ビートルズが滞在する東京ヒルトンを訪ね「すき焼き」を一緒に食べた、かの有名なエピソードをユーモアたっぷりに披露。そのときにジョン・レノンが、「俺は今、日本の文化を学んでいるんだ」と椅子から降りて床であぐらをかいて食事をした話などは、いかにもジョンらしくて思わず頬が緩む。
そんなリアルタイム世代の証言だけでなく、King Gnuの井口理や奥田民生、銀杏BOYZの 峯田和伸ら後追いの世代が、ビートルズの音楽と出会ったきっかけや彼らの魅力、影響を受けたところについて熱く語るセクションも見逃せない。
King Gnu 井口理 ©「ミスタームーンライト」製作委員会
奥田民生 ©「ミスタームーンライト」製作委員会
銀杏BOYZの峯田和伸 ©「ミスタームーンライト」製作委員会
エンドロールでは、100人近い老若男女がビートルズの好きな曲を1曲ずつ挙げていくショットが挿入されるのだが、彼らの表情を見ているだけでもこみ上げるものがある。人にはそれぞれの「ビートルズ観」があり、彼らが語るビートルズのエピソードはもちろん、ビートルズを通して垣間見えるその人たちの「生き方」や「考え方」そのものに、きっと僕は感銘を受けているのだろう。
『ミスタームーンライト~1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢~』
【キャスト】
語り:満島ひかり
出演者(敬称略・五十音順)
井口 理/浦沢 直樹/奥田 民生/加山 雄三/きたやま おさむ/黒柳 徹子/康 芳夫/財津 和夫
ジュリア・ベアード/髙嶋 弘之/高橋 克彦/野地 秩嘉/尾藤 イサオ/フリーダ・ケリー
星加 ルミ子/堀 威夫/松本 隆/ミッキー・カーチス/峯田 和伸/湯川れい子 他、総勢50名以上の関係者
【スタッフ】
監督:東 考育
監修:藤本 国彦
撮影:吉田 誠
編集:大川 義弘
製作:石垣 裕之 竹澤 浩 富田 朋子 島田 浩一
企画・プロデューサー:杉田 浩光
プロデューサー:加茂 義隆 金 山
メインアート・ドローイング:浦沢 直樹
制作プロダクション:テレビマンユニオン
製作:「ミスタームーンライト」製作委員会
https://mr-moonlight.jp/
商品情報 Blu-ray 9/6(水)発売
【発売日】
2023年9月6日(水)
【価格】
Blu-ray 5,720円(税込)
【映像特典】
・浦沢直樹×藤本国彦(ビートルズ研究家) 特別対談+未公開インタビュー
・予告編
【封入特典】
ポストカード
※商品の仕様は変更となる可能性がございます。
発売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©「ミスタームーンライト」製作委員会