今回、LiLiCo自身がインタビュアーとなり、スウェーデン・ツアー中のボーカル、クリス・アダムとギターのベンジャミンにリモートで取材を実施。コラボレーション実現の経緯、「First Time」の制作秘話、キャリアで最も暗い時期に生まれたという最新アルバム『ARMAHEAVEN』、そして再び踏む日本のステージへの思いまで、笑いを交えながらじっくり語り合った。
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出会いは、一通のメールから
―まずは、私たちの出会いを振り返らせて。スウェーデンのYouTuber/テレビパーソナリティのマウリ(Mauri Hermundsson)が、スウェーデン向け番組の撮影で来日したとき、私のJ-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』にゲスト出演してくれて。それが昨年春にスウェーデンで放送されたあと、SMASH INTO PIECESのマネージャーから「こういうグループがいるんですが、あなたのラジオ番組に出演できますか?」と連絡が来たのが最初でした。そこから3日くらい経って、同じマネージャーから「歌、歌えますか?」って。
ベンジャミン:1通のメールからここまで来るというのは、本当にすごいことだよ。
―私、ちょうど個人会社のホームページを作った2日後にそのメールが来たの。
クリス・アダム:運命的だね。最近すごくいい言葉に出会ったんだ。
―メロディが日本語にすごく合っていて、いい仕上がりになったよね。
ベンジャミン:本当にそうだね。
「First Time ft. LiLiCo」はどう生まれたのか? 日本語バージョンへの挑戦
―「First Time」のメロディは、どうやって生まれたの?
ベンジャミン:最初はメロディから書き始めた曲で、何年も引き出しの中に入れていたんだ。ピアノで弾いていたとき、父がやって来て「いい曲だな」と言ってくれてね。父は普段、俺の音楽にあまり感想を言わないんだけど、この曲には珍しく反応してくれた。
車内でハードロックを聴いていて、そのサビにインスパイアされたんだ。SMASH INTO PIECESにもインパクトのあるサビを作りたいと思った瞬間に浮かんだんだ。
クリス・アダム:すごく長いプロセスだったよね。少し進めては寝かせて、また少し進めて……の繰り返し。そこにLiLiCoが入ってきて、「あの曲があった!」という感じになった。
ベンジャミン:最初は曲に少し弱さを感じていて、サビを書き直したり、コードを変えたり、メロディラインも調整したりした。そういう細かい直しのおかげで、この曲の勢いと”生きた感覚”を取り戻せたんだ。ギターソロを入れて、LiLiCoの歌声を聴いた瞬間、この曲の旅が本当に始まったような感覚があった。
―私は最初に25曲もらって、その中から2曲を選んでと言われて選んだんだけど、結局それはユーロビジョン用に使うことになって。夢は夢のままかなと思っていた頃に「First Time」が来て、聴いた瞬間、自分が一番好きなタイプの音楽だと思った。
クリス・アダム:(少し自信なさげに笑いながら)大変だったのは、日本語の歌詞に集中して、発音や日本語のサウンドを覚える時間がなかなか取れなかったこと。ユーロビジョンもあって、ツアーの最中にもらったから本当に時間がなかった。レコーディング自体は意外と早く終わったけれど、忙しい時期に何を優先するかの判断が難しかった。
―私が仮歌で日本語バージョンのデモを送ったとき、最初に聴いてどう思った?
クリス・アダム:アニメーションの主題歌として想像できた。あとから考えると、思っていたより日本語で歌うのは難しくなかった印象もある。でも、日本語という言語は本当に難しい。LとRの間の発音とかね。LiLiCoが仮歌を入れてくれて、ゆっくり発音を強調したデモまで作ってくれたけど、歌詞を見ると音と文字がつながらない感覚があって、「ここに書いてあることをLiLiCoは本当に言ってるの?」って思ったよ(笑)。
―あなたの日本語が上手すぎて、最後は細かくダメ出ししちゃってごめんね。何人かに聴かせたら「ONE OK ROCK?」って言った人もいたよ。
ベンジャミン:好きなバンドだ! ヤバいなぁ。
クリス・アダム:最高の褒め言葉じゃん!
ベンジャミン:まだライブでは「First Time」を本格的に演奏していないから、早くライブでやりたい。本当にこの曲が好きなんだ。
SMASH INTO PIECESとLiLiCo(Photo by John Gyllhamn)
13年前の東京、その記憶
ーSMASH INTO PIECESは2008年に始動し、2013年にデビュー・アルバム『Unbreakable』をリリースしたわけですが、今のスタイルにたどり着いたのはいつ頃?
クリス・アダム:2015~2016年頃かな。「Boomerang」と「Let Me Be Your Superhero」を書いたとき。今もプロデュースしてくれているDinoに出会って、サウンドが完成した感覚があった。彼のおかげで、少しポップな方向にも広がったんだ。
―2013年に初来日しています。当時のスタイルは?
ベンジャミン:今よりもう少しグランジ寄りだったね。シンセがない、オーガニックなロックという感じ。
―渋谷でライブをしたよね。当時の東京の印象は?
ベンジャミン:すごく良かった。ある夜、一人でふらっとバーに入ったら、テレビでブリティッシュ・フットボールを放送していて、壁にはベッカムのユニフォームが飾られていた。日本の文化に触れたかったのに、結局イングランドの文化を味わってしまった(笑)。
あと、小柄な女性に道を聞いたら、「いいですよ、お手伝いします」と言ってくれて、20分近く一緒に歩いてくれたんだ。お互いほとんど言葉を交わさず、ただ歩いているだけ。俺が少し話しかけても、全然つれない様子で(笑)。そして目的の店に着いたら「ここです」と言って去っていった。本当に申し訳なかったし、心から「ありがとう」と日本語で伝えたよ。日本人の優しさに触れた瞬間だった。
クリス・アダム:俺の第一印象は、日本人は電車の中で立ったまま寝られる才能を持っているということ(笑)。あんなの初めて見たよ。かなり衝撃だった。あと、ある女性に惚れてしまったんだ。
ベンジャミン:あれはあのツアーで一番覚えているかもしれない(笑)。本当に美人で、一緒に出かけたんだよね。
クリス・アダム:でも、新幹線の中で俺のタトゥーを見て、彼女が「私の両親はあなたを受け入れてくれない」と。諦めるしかなかった。でも、お寺と任天堂が見られたから良しとしようって(笑)。ビタースウィートな恋だったね。今は彼女の幸せを願ってる。
ベンジャミン:日本は年配の方への接し方も素晴らしかった。エレベーターに先に乗ってもらうとか、人生の先輩へのリスペクトが文化として根づいている。総じて、日本には素敵な思い出しかないんだ。
日本の観客、そして再びのステージへ
―前回のライブでの観客の反応は覚えてる?
ベンジャミン:ヨーロッパやスウェーデンの観客とは正反対だった。日本のファンは、すごく丁寧にしっかり聴いてくれる。曲が完全に終わるのを待ってから声援を送ってくれた。
クリス・アダム:渋谷でライブしたときに印象に残っているのは、時間に厳しかったこと。チケットに19時開演と書いてあるなら、19時にはステージに立っていないといけない。あと、手拍子をお願いしたらずっとクラップしてくれて、「もういいよ」と言わなかったら永遠に続けたんじゃないかって(笑)。
ベンジャミン:曲の間は本当に静かだった。たぶん、俺たちが何か話すのを待ってくれていたんだと思う。喧嘩もなく、ドリンクを買うときもきれいに並んでいた。会場に引かれた線の間にちゃんと立っていたのも覚えてる。スウェーデンならカオスだよ(笑)。
―久しぶりの日本公演は、どんなものになりそう?
ベンジャミン:前回とはまったく違うものになる。音楽のスタイルも変わったし、ライブの内容も変わる。LEDの演出を含めて、作り上げてきたショーケースがあるんだ。日本のみなさんにも、ぜひ声を出して応援してほしい。「叫べ!」と言ったら、永遠に叫んでくれるかな?(笑)
―ウップサーラのライブを観たけれど、完全なるショーケースだった。日本ではMCも期待されると思う。
ベンジャミン:もちろん合わせるよ。MCも入れる。
クリス・アダム:気づいたらiTunesでトップ5に入っていて。SNSでの反応はあまり見えないから、世界が違うのかなと思っていたんだ。でもアルバムは日本でよく聴かれているし、「First Time」はJ-WAVEの『TOKIO HOT 100』で2カ月間ランクインしていた。あれは本当に嬉しくて、信じられなかった。LiLiCo、あなたの努力のおかげだよ。あなたはバンドの一員だ。
―(涙)。
ベンジャミン:ライブも一緒に出てくれるよね?
―もちろん。
『ARMAHEAVEN』──最も暗い時期に生まれたアルバム
―アルバムの制作過程について聞かせてください。
クリス・アダム:いろいろなことが同時に動いていて、記憶が薄れているところもあるけど……『ARMAHEAVEN』を作るのにはすごく時間がかかった。「Heroes are Calling」でユーロビジョン2度目の出場が決まったタイミングだったから、2024年はずっとツアー漬けだった。キャリアで初めて、200日ツアーをこなした年だったんだ。俺には妻と2人の子どもがいるが、ツアー続きで家族にもなかなか会えなかった。ベンジャミンとペールが交互にツアーに参加したり、サポートメンバーを迎えたりと、バンドもさまざまな調整を迫られた。
自分自身に問いかけたくなる時期だったよ。キャリアについてもね。ユーロビジョンはすごく大きな出来事だけど、そこからまた自分たちで動き出さなければいけない。タイトルの意味にも通じるけど、自分のフランケンシュタイン・モンスターを作らなければいけなかった。
ベンジャミン:空は地球の周りに広がっているのに、俺たち自身がそれを地獄にしてしまったのかもしれない。自分の頭の中だけで生きているような感覚だった。『ARMAHEAVEN』の「Broken Halo」の歌詞は、”完璧にはならない、完璧になることも認めない”という内容なんだ。ある日突然、完璧な人間になったら、それはそれでダメでしょう? 探し続ける旅にこそ意味がある。「Rage」もそういう曲。舌を何度も噛んで、最終的に口を開ける、という感覚。
クリス・アダム:ポケットの中でずっと拳を強く握りしめている感覚だね。『ARMAHEAVEN』の曲は、書かれた時期も場所もバラバラなんだ。LiLiCoとの曲も、結局は1通のメールから始まった。地球の反対側との縁だよね。まとめると、『ARMAHEAVEN』は俺のキャリアの中で最も暗いピリオドに作られたアルバム。あまり気分が良くなかった時期の記録なんだ。
―でも、ヒットしたよね。
ベンジャミン:そうなんだ。何度か「キタ!」と感じる瞬間を経験している。「Six Feet Under」のとき、「Heroes are Calling」がタイで大ヒットしたとき、今は「Somebody Like You」がオランダでヒットしていて、「First Time」が日本のチャートに入っている。『ARMAHEAVEN』がこれからもっと多くの人の心に届くと嬉しい。まだ炎は燃えている最中だから。
二人の作曲ケミストリー
―楽曲制作はどんなふうに進めている?
クリス・アダム:ベンジャミンとペールがメインで曲を書いている。バンドを始めた頃から、ずっとそんな感じだね。
ベンジャミン:俺は大声で何かを言うより、大声で歌ったほうがいい人間なんだ。物語の中に入って書くほうが、現実よりも楽しい。現実の世界では、俺は結構暗いし、内向的で、マイナス思考なところがある。だから物語を夢見て、絵を描くように曲を作っていく。ファンタジーの世界で生きるのが、俺には一番合っている。
―アレンジは?
ベンジャミン:それが俺の弱点。物語は作れるけど、アレンジは苦手なんだ。でもバンドを続けてきて、たくさん学んだ。信頼できるスタッフも周りにいるし、自分の物語に一番良い額縁を作ってくれる人が誰なのかもわかっている。アダムは、その額縁にスパイスを加えるのが得意なんだ。
クリス・アダム:自分の中では、プロデューサー的な動き方をしているかもしれない。ベンジャミンが新曲を持ってきたとき、俺は正直に感想を言える。聴いていると、ボーカルのハモリやコーラス、音そのものを少し変えるアイデアも浮かんでくる。最終的な判断にも関わっているし、ベンジャミンとはすごく良いケミストリーがあるんだ。
ベンジャミン:俺はまとまらないからね(笑)。
クリス・アダム:でも、ベンジャミンはスタートが本当に良い。勢いがあって、生み出す力が素晴らしい。そこからお互いを刺激し合いながら進めていく。ペールは俺に近くて、曲を形にするタイプ。タイプの違う人間がいるから、なんだかんだうまくいくんだ。
―ユーロビジョンに出場し始めてから、バンドにはどんな変化がありましたか?
クリス・アダム:もともとはヨーロッパ、アメリカ、ロシアをライブで回っていたバンドだった。ロック・アーティストとして、可能な限りツアーを回っていたんだ。それを13年くらいやっていたところに、突然チャンスが巡ってきた。最初は”ボーナス”のような感覚で、出場できてラッキーだと思っていた。でも実際に出てみたら、とんでもない反応があって、いろいろな記録を作ったり、APOCが一人歩きしてスーパーアイコンになったりした。それはまったく想像していなかった。
それまでは、自分たちでツアーバスを運転し、ステージを組み立て、グッズも自分たちで売っていた。今ではそれを支えるスタッフがいて、メンバーは歌とパフォーマンスに集中できるようになった。
クリス・アダム:ここまで来たという喜びが強い。本当に成功したのは、ここ4年くらいだね。ロック界では「SMASH INTO PIECESがユーロビジョンに出た」という事実だけでも反響があるんだ。
―3回目の出場はどうだった?
ベンジャミン:今回は”常連”扱いだったのが気持ち良かった。さらに「大穴は俺たちじゃないか」という噂まで立った。これまでは、出場はするけど勝てないだろうなと思っていたから。
クリス・アダム:だから大穴と言われて嬉しかった。
ベンジャミン:今回は取材もすごく多くて、本当に注目されているのを肌で感じた。これまではクリス・アダムとAPOCが中心だったけど、今回は俺とペールにもフォーカスが当たって嬉しかった。ただ、慣れていないから、有名な新聞や雑誌に俺のプライベートな行動が書かれていて、不思議な気持ちにもなった。ユーロビジョンの中で、俺はもしかして一番人気の独身だったかも(笑)。
音楽を通して伝えたいこと
―今の時代に、音楽を通して伝えたいことは?
クリス・アダム:俺自身の人生には、暗い時期がたくさんあった。だからSMASH INTO PIECESの音楽で、人にポジティブな力を与えられたら嬉しい。誰かが助けてくれるわけじゃない。自分自身で自分を奮い立たせなければいけない。人生は簡単じゃないし、厳しい時期は波のように押し寄せてくる。APOCは、その意味で最強のキャラクターになってくれている。
その感覚は、コロナ禍を経てさらに強くなってるよ。自分をまた見つけて、より良いバージョンの自分になれた。それが今の俺。文句より行動しろ。人生は厳しいけれど、その厳しさを自分に向けて努力し、良い人間になる。そこに自由がある。さっきの言葉と通じるけど、運は努力している人のところへ行く。本当にハードワークした人のところに運は来る。待っていても何も来ない。
―私も日本のメディアでよく話す。「待っていても何も来ないよ」って。
クリス・アダム:ベンジャミンが最初に話していたように、日本人は自分のためではなく、誰かのために動くことが多いのかもしれない。俺たちの音楽で、「もっと自分のために頑張っていい」というメッセージを広められたら嬉しい。ただ、やりすぎて自分を失ってしまったら意味がないけどね。
―SMASH INTO PIECESのエネルギーはどこから来ているの?
クリス・アダム:俺の場合は、昔の自分から脱出できたこと。今の俺は新しい人間なんだ。家族のことを考えるし、子どもたちのためにできるだけ長く生きなければいけない。妻のためにも、子どもたちのためにも、良いモデルでいたい。存在し続けることが大事なんだ。
クリス・アダム:ライブのチケットを買って来てくれることは、簡単なことじゃない。だから観客からエネルギーをもらっている。みんなが俺たちと一緒にいる時間を楽しんでくれている表情を見るのは、本当に特別なことなんだ。
―将来のことはどう考えている?
クリス・アダム:ボトックスかな~(笑)。
ベンジャミン:年金生活……。
―やめて!(笑)
ベンジャミン:キャリアの目的は成功じゃなくて、やっていることへの情熱や愛を失わないことだと思う。心の中に燃えている炎を常に感じていないとダメなんだ。だから俺にとっては、”俺たち”という言葉がいつも大事。なぜ俺たちがバンドを始めたのか、そのときの気持ちを忘れないこと。パッションと炎が一番大切なんだ。
クリス・アダム:いつもそこに戻る。物事がうまくいっているのは良いことだけど、作る喜びを失ってしまったら良くない。
ベンジャミン:将来何が起こるかわからないことも、また素敵なんだ。だからこそ、今度日本に行くのがすごく楽しみ。日本の文化が好きだから、ライブだけでなく長く滞在したい。
ー今は5月中旬までほぼ毎日ライブを行い、その後はヨーロッパの夏ツアー、フェス出演、日本公演へと続いていくんですよね。
ベンジャミン:日本の夏フェスも、来年は狙いたい。今年はまず土台を作って。
―それに向けて、私も頑張る。
ベンジャミン:LiLiCoとは、もう1曲やりたい。
―え? マジで?
クリス・アダム:「Second Time」だね(笑)。
ベンジャミン:「First Time」からの「Second Time」!
―……13年ぶりの来日公演、最高のステージにしましょう!
『First Time』
Smash Into Pieces & LiLiCo
配信中
https://orcd.co/smashintopieceslilicofirsttime
1. First Time (Japan Edition)
2. First Time (feat.LiLiCo)
3. First Time (Instrumental)
SMASH INTO PIECES JAPAN 2026
7月9日(木)東京・duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 18:00 START 19:00
スタンディング 前売り:¥8,200(ドリンク代別)
お問い合わせ SMASH 03-3444-6751
https://smash-jpn.com/live/?id=4675


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