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―メジャー第1弾のEP『螺旋の街』はメロディが際立ったポップな作品ですが、どんなことを意識して作ったのでしょう?
がらり:これまでの作品も表題曲だから頑張るとかではなく、どの曲もメロディ面の手を抜かずに制作してきたんですよね。その中でもある程度は「この曲はわかりやすいな」とか「この曲は人によってはちょっと敷居が高いな」というグラデーションはどうしてもできてしまっていて。ただ『螺旋の街』はメジャー1stEPであることに恥じないよう、どの曲もシングル曲でいけるよう雁首を揃えたつもりですね。その上でコンセプチュアルにまとめてみました。
―どういうコンセプトがあったのでしょう?
がらり:コンセプトに向けて制作するというよりは、自然と渦が巻くようにコンセプトができていきました。都会の生活の中で人々が当然のように感じる心の動き、孤独や悲しみ、疎外感などが蓄積されて一定のゲージになると防衛本能が働いて、開き直りタイムが始まる。さらに、いずれ悟りが開かれてひとつの哲学にたどり着くような心の流れがあると思っています。僕はサラリーマンをやりながら大阪、名古屋、東京と暮らす中でそういうことを実感してきたんですよね。
―5曲収録されていますが、その中で古い曲というと?
がらり:「シャイなボーイ」と「単純ないきもの」ですね。「レンズ」も割と古いです。「春を盗んで」と「箱庭ダンス」は新しめですね。
―「レンズ」で描かれている都会で暮らす現代人が抱える感情と「シャイなボーイ」での東京の描写はかなりリンクしてますよね。
がらり:その通りだと思います。都会には人がたくさんいるので、「レンズ」で描かれているように、例えばインフルエンサーと自分、独り身の自分と結婚したあの子など、いろんな軸で自分と他者を比較してしまったりします。「シャイなボーイ」は学校や会社といったコミュニティに属した時に、結果的にこういう気持ちを抱くんじゃないかっていうイメージで作った曲ですね。
―「シャイなボーイ」は主人公の形容詞がたくさん出てきますが、具体的なモデルはいるんですか?
がらり:自分の内面も入れつつ、知ったかぶりをしてしまう人、自分を大きく見せたい人をイメージしました。この曲の主人公は、都会に来たばかりなので何も知らない人間のはずなんですが、「自分をこう見せたい」っていう気持ちがあるんでしょうね。
―強がってますよね。
がらり:そうですね。「天邪鬼でセンチメンタルな 批評家のふりで」という歌詞がありますが、安全圏から周りを冷笑しているようなタイプというか。でも彼はしっかり傷ついているわけです。「なるべく愛してたいのに 繋がらないんだ点と点」って歌詞もありますから。「孤独を愛すロンリーボーイ」って、一人ぼっちが好きやねんって気持ちだけど、どうやらロンリーではある。「綺麗好きで耐え難いのだ」って言ってるけど、本当は愛が欲しいんでしょうね。「食わず嫌いのグルメボーイ」っていう歌詞もありますが、あらゆるワードがそういう方向に向かっていってますよね。
―ご自身のパーソナリティも入っているんですか?
がらり:大いに入っていると思います。他の曲も自分の魂から削った部分がいっぱい入ってはいて。それプラス、例えばXとかを見たときの今のムードや、4月から5月くらいの人のムードを踏まえて作っていきました。
―「シャイなボーイ」の歌詞で一番ご自身が出ているところというと?
がらり:前半部分ですね。「独りきりこそ僕を 暖める子守唄」とか。
―サウンドとしてはウォームでポップな歌ものです。
がらり:結果的にくるりやアジカンっぽい雰囲気の曲になりましたね。同じメロディを繰り返す系のサビで、スネアとかも「ここで来てほしい」って思った時に来るような構成の曲なので、全体的にノリを良くしました。ワードもメロディもコードも、なんならBPMや主たるリズムの構造も全部同じ方向を向いてほしいと思っていて。意図している感情に向かって裏切らない方向に全部ベクトルを揃えていきたいと思っているんですが、この曲は自然とそういう風になりました。
―ポップでカラフルな音色が目立ちますが、5曲の中で「レンズ」は唯一ベッドルームミュージックのテイストが強いのかなと。
がらり:チルめな感じですよね。この曲はサウンドのイメージは特になかったんですが、最初から言いたいことははっきりとあって。「シャイなボーイ」にも通じると思うのですが、「会いたいとか一人になりたいとか 誰かより愛されていたいとか」という歌詞があるように、この人はきっといろいろあったんでしょうね。夢を追ったけど、うまくいってなかったってことを自覚してしまっていて、自分の本当の気持ちがわからなくなってしまっている。
―トラックができてからそういった主人公像が浮かんでいったのでしょうか?
がらり:この曲は歌詞もメロディもトラックも全部が同時に出ていきました。そもそもコードもリズムもずっとループしているトラックなので全部が混然一体となって出ていった感じです。
―サビ前に別の声色が入ってきます。
がらり:あれは主人公の心の声ですね。自分の声を女性の声っぽく聞こえるようにエフェクトをかけています。「山手線が未来まで 繋がっていてくれたなら」とか「ぶつかって ぶつかって 一人ぼっち」って心の中から言われちゃってる状態ですね。
―そして強がって終わるという。
がらり:そうですね。
―確かに。次いつご一緒するかわからないですしね(笑)。あと、今は別れても、SNSで繋がっていて別れの線引きが曖昧な時代であることも盛り込まれているのかなと。
がらり:そうですよね。他人のSNSが気になってしまったり。「あの知り合いの知り合いの誰かが 最近なんか調子いいらしい 「すごいね」とかは言えなくて 一言目に出てきた「そうなんだ」」っていう歌詞もそういうことに近いですよね。
―今の時代のリアルですよね。
がらり:良かった。リアルなものとして書きました。
―都会人の承認欲求が描かれている曲ですが、「見られてることに気づいて泣いた」という歌詞にはどんな思いが込められてるんでしょう?
がらり:まだ泣いてなかったけど、今見られてるから泣くべきだって思って泣いちゃうっていう。これも人の目を気にしていて、見られる涙にしか価値がなくなっちゃってるっていう歪みですね。
―つい取り繕ってしまうわけですね。
がらり:そうですね。泣くって本来はプライベートな行為のはずなんですけどね。オーディション番組とかでは泣くシーンが使われることが多いので意図して泣いてる人もいるかもしれないですね(笑)。
―オーディション番組が曲のインスピレーションになることはありますか?
がらり:ありますね。元々オーディション番組がめっちゃ好きなんです。「PRODUCE 101」シリーズは「PRODUCE 48」から今やってる「新世界」まで大体観てますね。最近は『WORLD SCOUT: THE FINAL PIECE』を観ました。オーディション番組プラス、ネットで見る人々の受け取り方は曲のモチーフになりますね。朝井リョウの『イン・ザ・メガチャーチ』は少し意地悪な目線で現代の推し活を昇華した小説で、ちょっと極端なんじゃないかと思いましたけど。オーディションはいろんな角度でエンタメを楽しめますよね。さっき承認欲求って言っていただきましたが、肥大した自我が最終的にどういう風に心を蝕んでいくのか、乗り越えることができるのか、もしくはできないのか。いろんなものが混然一体となっている様をリアルに描こうとしたのが「レンズ」です。
Photo by Mitsuru Nishimura
箱庭の世界で、それでも踊るということ
―「箱庭ダンス」では多くの情報が溢れては消えていく現代の空虚さが描かれています。
がらり:そうですね。「レンズ」は割と救いがないですが、「箱庭ダンス」は開き直ることができるようになってるっていう心の動きがありますね。
―「踊る」という行為がネガティブにもポジティブにも捉えられているように聞こえました。
がらり:まさしくそうなんです。この曲の主人公は踊らされているのか踊っているのかわからないですよね。でも全部納得した上で踊ることを選んだというイメージです。
―イントロをはじめ、中華っぽい旋律が何度か入ってくるのも印象的です。
がらり:僕のイメージではAメロやBメロは90年代から2000年代の槇原敬之の曲でした。でもサビはミスチルっぽいなと、作った後に思いました。あの年代のシティポップ味が少しあるJ-POPっていう。最近だとサカナクションやLucky Kilimanjaroが脈々と受け継いでいる、ダンサブルに行き過ぎてない方向性っていう感じですかね。クラブっていうよりはテレビやラジオから流れてきそうなダンステイストのあるJ-POP。
―所詮世界は箱庭なんだから踊るだけさっていうメッセージを感じましたが、まさしく開き直っているなと。
がらり:ここで描かれてる箱の中というのは、世界として捉えることもできるしスマートフォンにも捉えることができると思ってて。「渦巻いた感情は 鋭く指先から飛び出して そうさこの世界は つまるところ四角い箱の中」っていう歌詞がありますが、この人はもしかしたらスマートフォンを使ってSNSに日々の愚痴を書いてるかもしれないって思いながら書きました。頭の中にぐるぐると渦巻いている螺旋を落とし込んだ結果の感情の発露として、ネガティブなものすらも受け止める四角い箱みたいなイメージがありました。
―EPの4曲目に置いたということは、「レンズ」までの閉塞感を前向きなものに変えていこうという意図があったのでしょうか?
がらり:そうですね。閉塞感とは別の方向に持っていきました。2曲目の「春を盗んで」はもしかしたらめっちゃ明るく聞こえるかもしれませんが、問題を抱えたまま進んでいる主人公なので。1~3曲目はどんどん深みにはまっていってしまってますよね。
―「春を盗んで」の主人公は闇を抱えてますよね。
がらり:僕の中では主人公は同性愛者で、振り向いてくれない相手に対して、極端なことを言うと、彼を連れ去ることができるかもしれないっていう一瞬の気持ちの高まりを描いたつもりです。Netflixの「ボーイフレンド」シーズン2の序盤を観たタイミングで書いた曲ですね。「ボーイフレンド」は同性愛をちょっと美化しすぎてるんじゃないかと思って、もっと葛藤や悩みがあるんじゃないかという想いで歌詞を書いていきました。
―サウンドとしては、キャッチーな鍵盤が入っていたり、かなり音数が多いですよね。
がらり:ふんわり星野源を意識しました。メロディがキャッチーなので、それをいかに阻害せずドーンと伝えるために必要なサウンドデザインを目指して。基本的に足す方向で仕上げていった曲ですね。
―がらりさんの楽曲の中でも特にポップでカラフルですよね。
がらり:そうかもしれないです。これまではメロディがポップな曲はセンチメンタルな方向に進みがちだったんですが、この曲はそうではなくど真ん中なポップスっていう意識がありました。
―どんどん音を足してポップにしていくことに躊躇はありませんか?
がらり:全くないですね。ただ、この方向を極めようとすると、僕の声ではどうしようもないところまでいっちゃうのでどこかで線引きをしなきゃいけない。僕がもっとぱきっとした女々しい声が出るタイプだったらもっとポップに振り切れるんですが、そういうタイプの声ではないので、今のところはこれぐらいのアンサンブルの厚みに収めています。
―提供曲だと、もっと行き切れるわけですか?
がらり:そうですね。パキッとした声の方への提供曲やったら、もっとキラキラした音とか入れたいですね。もっと派手なシンセとか。僕の声でそれをやるとちょっと真面目な感じになっちゃう。僕の声はキーは高めではあるんですが、必死感とか切実さが出ちゃう。そこは意識してバランスを取ってます。
Photo by Mitsuru Nishimura
複雑な時代に見つけた、単純な哲学
―ラスト、5曲目の「単純ないきもの」はドラマ「100日後に別れる僕と彼」のオープニング主題歌です。
がらり:書き下ろしではなく、デモの中からこの曲のサウンド感を気に入ってもらって採用していただきました。自分の思想が結構入っている曲ですね。人間って複雑で、自分が今この瞬間何を思っているのかすらあやふやではあるけれど、目の前の人を嬉しくすることで気持ち良くなるから社会が形成されたのかなと思ってるんですよね。目の前の人が喜んだ時にイライラするようだったら人って集まらないですよね。
―人との付き合いを絶ちますよね。
がらり:そうですよね。「君が笑えば嬉しくなるんだ」という歌詞がありますが、それはひとつのルールとしてあるのかなと。結果的にめちゃくちゃJ-POP的な一行になった歌詞ですね。それこそ、人間である僕の正体であってほしい。「がらりって、曲ごとにがらりと変わるんです」って言ってますけど、すごく相対的なコンセプトだなって(笑)。
―最近そう思うようになったんですか?
がらり:いつか言いたかったんです(笑)。何て無責任な話をしているんだろうなって。僕の曲を俯瞰してみると、全部似たような曲だと思うんですよね。僕の曲を熱心に聴いてくださっている方はおそらく違いを感じてくれていると思うんですけど。それにめちゃ甘えている状態ではありますね(笑)。ただ結果として、曲ごとにがらりと変わるっていう無責任なメッセージを発信している私の中にも、ひとつの哲学として「単純ないきもの」で書いているようなものがあるっていう。
―がらりとしての活動を重ねていく中で、曲の聴き方や聴くアーティストに変化はありますか?
がらり:「バズってる曲ってどういう要素があるんだろう?」っていうことを意識して聴くようになりましたね。歌詞の面でも「今ウケるメッセージってこっちなんや」とか「こういう光景が相変わらずもてはやされるんだな」とか「なんでこれがウケてるんだろう」っていうことも含めて、いろんなことを考えるようになりました。
―今シンパシーを感じるアーティストはいますか?
がらり:悩ましい質問ですね。最近だとエルスウェア紀行と、これは昔からですが、showmoreさん。リアルな心情を描きつつ、メロディもアレンジも良いのでシンパシーを感じます。
―今日のインタビューでも何度もリアルという言葉が出てきましたが、リアルな曲を作るためにSNSをチェックしたりして、人間の行動原理や心理状態と向き合っているわけですね。
がらり:そうですね。意図的に色眼鏡で見ることもします。あえて偏見を持って「こういう人はこういうことを言いそうだな」とか「こういう考えが極限まで達した時にこういう事件が起こるんだろうな」とか「こういう家庭ではこういう子どもが育つんだろうな」とか。めっちゃ嫌なヤツみたいですけど(笑)。
―(笑)。以前からライブ活動に意欲を見せていましたが、ついに12月に渋谷WWWでの初ライブが決まりました。
がらり:もっと早くやりたかったんですが、がらりってこれまで14曲入りのアルバムを2枚出していて、あまり間を空けずに今回の5曲入りのEPを出しているので、ライブの準備にあまり時間を割けなかったんですよね。ようやく開催できることになりました。がらりって本当に知ってもらっているのか怪しんでいるんですけど(笑)。
―ついにがらりのリスナーを目の前にするという。
がらり:びっくりですよね。10人くらい来てくれたらいいですけど(笑)。
―もっと来ると思います(笑)。
がらり:何人くらい来てくれるんですかね(笑)。いっぱい来てくれたら嬉しいですね。
―曲ごとにアプローチが異なるので、どういう見せ方をするのかが気になります。
がらり:ライブのために器用系のミュージシャンの方たちに集まってもらっていて、身に余るスーパーバックバンドになっちゃいそうです。僕も楽しみですね。『螺旋の街』っていうEPを出しているので、がらりから発信する螺旋で日本中を埋め尽くしたい所存でございますね。
Photo by Mitsuru Nishimura
『螺旋の街』
がらり
ワーナーミュージック・ジャパン
配信中
https://galali.lnk.to/SpiralCity
1. シャイなボーイ
2. 春を盗んで
3. レンズ
4. 箱庭ダンス
5. 単純ないきもの
「がらり 1st ONEMAN LIVE "SPIRAL"」
日時:2026年12月11日(金)
時間:OPEN 18:30/START 19:00
会場:渋谷WWW
チケット:スタンディング 4,500円(税込/別途ドリンク代必要)※未就学児入場不可
オフィシャル最速先行受付期間: 6月5日(金)20:00~6月15日(月)23:59
チケット購入URL:https://l-tike.com/galali/
バンドメンバー:Gt 宇井拓海、Ba 森夏彦、Key 大樋祐大(SANABAGUN.)、Dr 澤村一平(SANABAGUN.)
がらり
大阪府出身のシンガーソングライター/クリエイター。元システムエンジニアで、2022年12月より音楽活動を開始。全楽曲の作詞作曲を担当し、ジャケットアートワーク、Music Video、SNSコンテンツなどもほぼすべて自身で手がける。2023年11月に「さよならは真夜中に」で初リリース。2024年11月に1stアルバム『手のひら望遠鏡』、2026年1月に2ndアルバム『コントラスト』を発表し、同作収録曲は日本テレビドラマ『AKIBA LOST』の主題歌、コンセプトソングに起用された。テレビ朝日『EIGHT-JAM』の企画「2024年のマイベスト10曲」で川谷絵音が「午後二時の通り雨」を選出したことも話題に。2026年5月にワーナーミュージック・ジャパンからのメジャーデビューを発表し、6月にメジャー第1弾EP『螺旋の街』をリリース。曲ごとに”がらり”と作風を変えながら、文学的な歌詞と生々しい歌声で現代の心象風景を描き出す。


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