中国のニュースサイト「環球網」は26日、台湾のマジシャン、劉謙さんが日本のテレビ番組中で、日本の天皇に“平伏してお辞儀した”と非難されている件で、「これまでの報道に誤解があった」とする記事を配信した。

 問題になった番組は1月7日放送のフジテレビ「志村けんのバカ殿様 初笑い!時代劇スペシャル」。
志村けんさんが演じる「白塗りのバカ殿」を、多くの中国人が「天皇に扮したもの」と思い込んだ。

 環球網は、劉さんのマネージャーに取材。その説明を紹介した。マネージャーは、中国で番組が完全に誤解されていると主張。まず、中国では多くの人が、「劉さんが志村さん扮する殿様を殿下と呼び、お辞儀をした。つまり、天皇に扮した役者にお辞儀をした」と考えたが、「日本で天皇は『陛下』と呼ばれるが、『殿下』と呼ばれることはない」と指摘。「中国大陸の方はあまりご存知ないが、志村けんさんは、日本や台湾で知らぬ人がいないほど有名。芸歴30年のコメディアンで、至高・無二の存在。中国大陸の趙本山さんに相当する」と紹介した。

 同番組は「バカ殿様」を中心にしたお笑い番組で、出身国に関係なく楽しく交流している場面を演出しただけだと紹介。舞台設定は昔の日本で「床に座ってお辞儀をするのは普通のこと。劉が一方的にお辞儀をしたのではなく、志村けんさんも、同様にお辞儀して挨拶した」と述べ、「日本人に対して屈辱的な態度をとった」との非難はまとはずれと説明した。


 中国で、劉謙さんに非難が殺到したのは、そもそも、環球網の記事がきっかけだった。同メディアではこれまでも、「愛国的論調」が多かった。政治的理由ではなく、読者獲得の「商売上の目的」とされる。

 26日の記事ではマネージャーの言い分を紹介し、誤解にもとづく騒ぎを沈静化しようとしたとみられる。ただし、読者から寄せられたコメントは、記事内容とはうらはらに、劉さんを一方的に罵倒(ばとう)するものがほとんど。かなり長文の記事なので、よく読まずに書き込んだ可能性が高い。

 ただし、少数ではあるが「娯楽番組で大騒ぎ。日本人の基本的礼儀をあらわした場面。しかも天皇に平伏したわけでもない。環球時報はどうして、こんなにレベルが低いのか」との、同サイトの姿勢や、事態をよく知らず日本批判をする人々に対する批判もある。

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◆解説◆
 同番組で、劉さんは日本語で話した。中国人は字幕で理解した。
劉さんは実際には「殿下」とは発声していない。また、劉さんは、志村けんさんに対して「子どもの時から大ファンでした」と話した。中国では「天皇のファンだったと発言」と誤解された。番組中では志村さんが「台湾でも、放送されているからな」などと発言しているが、全体の流れを理解せずに非難し、環球網も確認しないまま報じた。(編集担当:如月隼人)

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