新しいデザインの紙幣が発行される。実際に新札が回ってくる。
しげしげと眺める。なんだか違和感があるが、新鮮さも感じる。こんな人が一般的なのは日本も中国も同じだろう。違うのはそこからだ、中国では「真札」が「偽札」と誤認される騒ぎが発生している。重慶晩報が伝えた。

 新しい100元紙幣の流通が始まったのは12日だった。デザインを一新したわけではなく、偽札防止などを目的にしたデザインの一部変更だ。重慶市に住む女性のWさんは22日午前9時すぎごろ食材市場にある野菜店で、新しいデザインの100元札を使って買い物をしようとした。野菜を商っていたのは年配の女性だ。その女性が「アンタ、これ、偽札じゃないか」と言い出した。

 Wさんは、「新しい100元札よ!」と主張。しかし相手は全く納得しない。
周囲に向って「こんな昼間から、年寄りをコケにするのかい。みなさん、助けておくれ! この女はニセ札で私をだまそうするんだ!」と大声で怒鳴りはじめた。Wさんも黙ってはいない「なによ! 私を馬鹿にするのかい。銀行で受け取ったばかりのお札だよ!」と言い返す。2人は完全に“戦闘モード”だ。
新?
 大勢の人が2人を取り囲む。「別の紙幣でて払えばいいんじゃないかい。それが本物にしろ偽物にしろ、大騒ぎをする必要はないだろ」との声が飛んだ。

 “戦闘モード”のWさんは受け付けない「それじゃ私が、偽札を使おうとしたことになっちゃうじゃないの。ダメよ! どうしてもこの札を受け取ってもらうよ」と怒鳴る。

 周囲から別の声が飛んだ。「まず、本物かどうか調べればいいじゃないか。
偽物だったら警察に行ってもらうことになるけどね」との言い分だ。Wさんも、この提案には同意した。近くに紙幣鑑別機を置いてある店があるというので、一同がその店に向った。

 「ビー! ビー! ビー!」――。幣鑑別機が神経を逆なでする「警報音」を出した。赤ランプがついた。Wさんは驚いた。あわててもう1度試した。流行り警報音と赤ランプ。何度試しても同じだった。

 しばらくして、様子を見続けていた若い男性が思いついたように、「この鑑別機は新札に対応していないかもよ」と言った。そうかもしれない。
Wさんは仕方なく、「じゃあ、銀行に行ってみましょう」と提案した。とたんに周囲で議論が始まった。「警察に行った方がよい」と主張する人が出たためだ。

 Wさんは結局、「自分の身の潔白を示すことができるなら」と、警察に行くことに同意した。一同で、歩いて行った。野菜を売っていた女性はずっとWさんの腕をつかんで離さなかったという。

 警察署についた。警察官に事情を話した。警察官は新札の特徴と照合して「これは本物ですね」と言った。野菜を売っていた女性はそれでも、半信半疑だ。「やはり古い札で払ってほしい」と言い張った。Wさんは引き下がらない。
流通が認められた紙幣である以上、受け取るべきだと主張した。

 警察官はやむをえず、一同を銀行に連れて行った。銀行員は「これは最近になり流通するようになった新札です」と断言。受け取りを頑なに拒んでいた女性も、自分の非を認めた。「お恥ずかしいことをしました」などと反省の弁を述べ、Wさんが購入しようとした野菜の代金は要りませんと申し出た。

 Wさんは「代金はお支払します。ただし、食材市場に戻ったら周囲の人に、偽札というのはあなたの誤解だったと、ちゃんと伝えてください」と念を押したという。

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◆解説◆
 日本では、新しいデザインの紙幣の流通が始まる前に、当局側が自動販売機やATMメーカーの担当者を対象として、デザインの紹介を伝えた上で、機械が正しく作動するかチェックする機会を設けるという。

 もちろん、不正が発生しないよう厳格に管理する。ただし、「不正が発生する確率が完全にゼロ」とは言い切れないだろう。つまり、社会の混乱を防止するために、ごくわずかなリスクの発生はやむをえないとの判断と理解できる。

 一方、重慶晩報によると、中国では新しいデザインの紙幣が正式に流通するまでに、紙幣鑑別機やATMのメーカーにも、詳細な情報は全く与えられない。
完全に「密封状態」という。「警戒を少しでも緩めれば、不正が行われる可能性がある」との“安全最優先”の発想と言える。

 パソコンのOSなどでは、新たなバージョンについてのソフトウェアの作動を確認するため「開発者向け事前公開版」が発表される。開発者に対する「信頼」で成立する慣例のはずだが、中国ではその結果、OSの正規発売日前に海賊版が流通しはじめるという。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:CNSPHOTO)


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